夕暮れ時のスーパーで。

肩が重い。肩こりが続いている。
週の折り返しだ。スーパーに寄る。決めているわけではないけれど、スーパーに寄る頻度はだいたい週2回くらいに落ちついている。


自動扉を入って、冷気に包まれる。カゴを手に取る。

足の裏でペダルを踏むと出るようになっているアルコール消毒を手のひらに吹きかける。店内に入る動きの流れの中に、一瞬片足立ちになってペダルに意識を定める動きが加わっている。


桃を買おうと決めていた。2玉で498円。今シーズンで3回目だ。桃色を見比べて選ぶ。茶色くなりかけている玉と、桃色の鮮やかな玉の組み合わせを選んだ。2つとも熟れているものを選ぶと、急いで食べなければならない。

店内は野菜が安かった。予定していなかったけれど、アボカドとゴーヤを手に取る。それぞれ97円。今年初めてのゴーヤチャンプルーを作ろうと思ったけれど、平日は料理をする余力がないので、お肉と豆腐を買うのは週末にしようと決める。

2リットルの飲料水と、小さいパックの牛乳。発泡酒を2本。かごがズシリと重くなる。疲れていたので有り物を買おうと思い、お惣菜コーナーに向かう。マグロが載った小さめの丼を手に取る。


レジに向かう。18時過ぎなのでそれなりに混んでいる。

比較的空いている列の最後尾に並ぶ。「こちらでお待ちください」という言葉とともに等間隔に並んだ線は、このスーパーでは少し広めに感じる。レジ待ちは何センチ開けてください、というような目安が示されているのだろうか? それとも店員さんの感覚なのだろうか。

前に並んでいた母娘が線より少し前に立っていたので、私も次の線より少し前に立つ。お会計をしている人以外に待っているのは2人。母娘はかごを使わない程度の商品しか手にしていなかったので、順番は早く回ってくるだろうと思った。

レジで会計をしている人が手間取っているのか、短い列がなかなか動かない。もう帰るだけだし、イライラしても疲れるので時間をつぶそうとスマホを取り出す。


ふと前に人の気配がする。顔を上げると、私と母娘のあいだにおじいさんが立っている。少し後ろに立っている私に気づかなかったようだ。

「並んでます」と、声をかけようか迷ってやめた。人と喋るのが億劫だったし、悪気はないのだろうと思ったから。

ソーシャルディスタンスという概念をすんなり飲み込めず、習慣となるまでに時間のかかる人はいる。身についていないうちに非を鳴らされれば、人は落ち込む。

お母さんと話していた娘さんが、先ほどまでいなかったおじいさんの存在に気がついて私に視線を送った。


レジはなかなか進まなかった。

私はスマホに視線を戻し、重いカゴを足元に置いた。昼間のニュースをチェックする。暇をつぶすための材料はいくらでもあった。

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