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寒さがストレスになる理由

夏になれば、必ず熱中症に対する注意喚起がなされますが、もれなく付随してくるのが「地球の温暖化」ですよね。

ところが「記録的な寒波」と言いつつも、凍死に対する注意喚起は聞こえてきません。もちろん「地球の寒冷化」という声もあがらないです。

それどころか「温暖化の影響による厳しい寒波」などと報道される事さえあります。どういう理屈なのでしょうね。

色々と突っ込みたくなりますが、うちのテーマからは外れます。ここは、庵忠さんにお任せするのが最善でしょう。頼りにしておりますよ。

1)生存可能な体温

さて、壮大なスケールの問題はお任せして、僕はもう少しミクロなお話を。

ヒトは恒温動物ですが、深部体温を35度から41度までの範囲で維持している限り死亡しません。

※ 基礎疾患がある場合、この限りではありません

言い換えれば、この範囲を逸脱すると自力で体温を戻すことができず、死に近づきます。

ちなみに、深部体温とは内臓温度の事で皮膚温とはズレがあります。若干イメージの修正は必要ですが、35度は案外身近ではありませんか?

体温計で35度と表示されても「平熱は低いほうだから問題なし」と判断してしまう方も少なくないでしょう。

それに対して、41度ともなれば緊急事態ですよね。それはもう大騒ぎ間違いなしです。

2)生存可能な気温

それでは、深部体温を維持できなくなる環境に目を向けてみましょう。

ヒトは5度から50度までの範囲なら、自力で体温を維持できます。

これは、他の種族と比較して圧倒的に範囲が広いのです。主な理由としては発汗により体温を下げる機能が備わっている点でしょう。

ただし、5度から50度までなら、問題なく過ごせるという意味ではありません。

高温になれば発汗するために、水分と塩分を消費します。一方、低温では栄養を元に体温を維持するわけですね。

どちらも、エネルギーに変換するための備蓄が尽きれば、窮地に追いやられます。ここでも、上限の50度は想像しにくいですが、下限の5度は案外身近でしょう?

お住まいの地域によっては「暖かい日」と認識しても不思議ではありません。

3)交感神経が優位になる理由

ところで、冬になると自律神経は交感神経が優位になります。

交感神経が望まれる状況を突き詰めていくと「闘争、もしくは逃走」するためです。

穏やかではありませんが、仕事に勉強、あるいは家事も程度の差はありますが、いずれもストレスであり、どちらかに属します。

それでは、なぜ冬になると交感神経が優位になってしまうのか?その答えは気温にあります。

まず、寒い暑いと感じるために備わったセンサー、冷覚や温覚が働くのは、おおよそ10度から45度の温度帯です。

下限は15度(冷覚と重複)、上限は45度を超えると、それぞれ冷痛、熱痛と名称が変わります。

10度や45度になれば、読んで字の如し、冷温ではなく痛覚が反応し「痛い」と感じるわけですね。

氷や熱いヤカンに触れてしまうと、考える前に思わず手を引っ込めますよね? それは冷たい熱いではなく痛みとして認識し、脊髄反射が起こっているためです。

つまり、夏でも気温が45度を越えるようなら、熱痛刺激によって交感神経が優位になります。

4)寒さがストレスになる理由

さて、ヒトは順応する生き物ですから、いずれ冷覚や温覚には適応可能です(温覚の方が早く順応する)。

ところが、痛みには順応しません(もしくは限りなく遅い)。なぜなら、痛み刺激に慣れてしまうと、生命を維持する上で圧倒的に不利となるためです。

「北国で暮らしているけど慣れましたよ」とお考えになった方もいらっしゃるかと思います。ですが、それは痛みに慣れたわけではなく、耐える事に慣れたのです。

前者はストレスゼロを意味しますが、後者はストレスが存在し蓄積しますのでまったく違います。

いちおう断っておきますが、詭弁ではありませんよ?

15度以下の環境で過ごすという事は、断続的に痛み刺激に晒されている事を意味します。そして、当たり前ですが、気温が低くなるほど痛みは先鋭化していくのです。

寒い地域で暮らすと、連日連夜、脳は痛み刺激を受信し続けます。

それなら、時には、何もかもが嫌になってしまう日もあるでしょう。容赦ない理不尽な仕打ちに泣きたくなる日も、怒りたくなる日だってあると思います。寒冷地での生活はそれほど過酷なのです。

ただ、それはあなただけではなく、ご家族やご近所さん、職場の同僚にも当てはまります。

古今東西、陽気な民族は、南の島に住んでいるというのが相場でしょう?

寒さに対するヒトの特性を把握したところで、痛み刺激を軽減させることなど出来はしません。

ですが、ひとたび共通認識となれば、あなたの周囲が少しだけ優しい世界になるのではないか、そう思うのです。



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