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パートナーとの関係修繕について:本当に「相手が変われば何もかもうまくいく」のか?


パートナー(夫婦、恋人)と衝突する際、「私は正しく、間違っているのはそっちだ」と思うことはないだろうか。多くの場合、険悪な関係性に向かっている時には大抵この価値観が悪さをしている。この価値観は、我々の自尊心を満たし、パートナーとの競争を煽り、パートナーとの論争に勝たせることはできるかもしれないが、パートナーとの温かい関係性を育むという視点においては長期的にみて全く役に立たない。

どんな関係であっても、苦痛を感じることは避けられない。それ故に、苦痛の原因となる感情をどう処理し、関係を改善させるための行動をいかにとるかことができるかが関係継続のためには重要となる。

パートナーがなにをしようとも、我々は自分の感情を処理し、関係改善のための行動を取ることは可能である。そしてそれが関係改善のための近道だ。つまり、関係を保つために重要なのは、あなたがあなたの感情をコントロールし、行動を変えるということになる。「なぜこちらが妥協しなくてはいけないのか?」と思うかもしれない。こういった状況はパートナーとのパワーゲームに勝利することが目的となってしまいがちだが、勝つことが本当にあなたが一番望んでいることなのだろうか。難しい状況になった時に思い出したいのは、自分は二人の関係性をより良いものにすることを最も望んでいるのだという事と、我々は自分の行動を選択できるし対処できる力をもっているという事だ。

カップルカウンセリングを行っているラス・ハリスは、カウンセリングの始めに以下のことを聞くことを重要視している。
・最初にどのように出会ったか
・パートナーのどこが魅力的だったか
・性格のどこを最も尊敬しているか、
・一番楽しかった思い出は
・過ごした中で最も楽しかった日々を話してほしい
・関係の最初にあったもので取り戻したいものは何か
これは、対立関係に陥っているカップルに、暖かい感情や記憶を思い出してもらう事から始めるための戦略だ。ハリスによれば、互いが繋がる感覚を取り戻せることは関係の回復に重要なことだそうだ。

関係に問題を感じている時、なぜパートナーは自分の思い通りにしてくれないのか?と感じることが多いだろう。相手が自分の思い通りに優しさを示し、器用に行動し、自分を思いやり、言わなくても何もかもしてくれるとしたらどんなに素晴らしいかを考える。これは捨てる事が難しい理想だ。人は誰しも他者をコントロールしたいという欲求を持っているし、そのためなら相手を批判することも厭わず、相手をやり込めることに力を使ってしまう。子どもでさえ、泣き叫び癇癪を起して母親を困らせる事で自分の言うことを聞かせようとする。大人同士でも、嫌味を言い、批判し、罵り、大きな音を立てたり泣いたりすることでパートナーを自分の思い通りにコントロールしようとする。

しかし、本当の意味で相手をコントロールすることは絶対にできない。相手をコントロールできると考え、相手を期待通りに動かすことに労力を使ってしまうからこそ、関係が悪化することを防ぐのは難しいともいえる。
実際にコントロールできることは自分の行動だけなのである。

パートナーの行動に不満がある時、私たちがどう振る舞っているかを見直すことは役に立ちそうだ。
例えば、以下の内容を考えてみてはどうだろうか。
①パートナーが言った事で行動したことで気に食わなかったことは何か?
②パートナーの行動を変えるためにあなたは取った言動はなにか?
③それは長期的にパートナーの行動を変えたのか?
④あなたの行動はパートナーとの関係を深め、豊かなものにしたか?
⑤反対に、それによって何を犠牲にしたのか?

どうだろうか。自分の行動は、一時的には不満な行動を減らすことに役に立つかもしれないが、長期的にはあまり意味がないように感じるかもしれない。二人の温かい関係性にとって、自分の行動に良い効果はなかったことに気が付くかもしれない。

パートナーの行動で「良いな」と感じたことを褒める事が、良い結果を生む事も多い。
家庭の清潔さに重きをおくAさんは、パートナーのだらしなさが許せないかもしれない。その時、パートナーが食器を10回に8回はすぐに洗っていたとしても、残りの2回を目ざとく見つけ「いつもすぐ洗えって言っているよね」と小言を言うことは、パートナーの行動を変えるのに役に立つだろうか。関係を悪化させずに行動を変化させたいと考えるならば、できている8回の時に声をかけるほうが、長期的に見て望ましい行動をしてくれることが期待できる。

この時、自分の行動を変える上で問題になるのは自分の「感情」だろう。どのように自分の感情に対処すればいいのは難しい問題であり様々な方法があるが、例えば自分の感情を、以下のように捉えてみる事も役に立つかもしれない。

相手が自分にとって優しくなかったとき、①相手はあまりにも優しさがない、と思うことが一般的だか、それを、②私は「相手があまりにも優しさがないと思っている」という思考に変え、さらに、③私は「相手があまりにも優しさがないと思っている」ことに気が付いている、というように変える。

③のように考えると、多少なりともその思いから距離を取れるようになる(一度試してみてはどうか)。人は、強い気持ちを感じると、その時の気持ちが自分という存在の全てであると思ってしまうが、そうではない。上記のように、「自分がこう思っていることに気が付いている」ことに気づくことができれば、自分の感情を客観的に見つめることができ、行動を選択する余裕が生まれる。少し客観的に自分の状態を眺めることで、目の前のパートナーと誠実に向き合う時間を作れるという利点もある。

パートナーとの関係性に悩む人は多い。「相手が変わってくれればいいのに。そうすればもっとうまくいくのに」と普通はそう思う。しかし、そういった時、「自分は相手にとってどんなパートナーでありたいだろうか。それに比べ、今の自分はどうだろうか?」と考えてみてもいいかもしれない。相手に変化を求めるならば、まずは自分の行動を見直してみるのも必要だろう。

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