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電車に乗る。
座れないことも少なくないので、心して座席を探す。
1つだけ空いていたその席の周りで、人々が目で会話をしていた。
何かあったのだろうかと思いつつも、座れる幸運に胸を撫でて腰を下ろす。

なんだこの違和感は。
座れたのに。
何か周りの人の視線感じるし。


違和感の正体が分かってホッとした。

正面に座っていたサラリーマンのスマホのライトがバッチバチに点いている。
これが夜であれば窓の反射とかで本人も気付くんだろうけど、陽の差す昼間ではそうもいかない。


となると、周りの人々がごちゃついていたのは如何様にして彼に「スマホのライト点灯中コール」をかけるかを議案していたからに他ならない。
んー困った。
いやまぁ対して困ってないんだけど。


このシチュエーションは、火事が起きて人だかりができるほどの騒ぎになっているのに、その場にいる人全員が「誰かが消防車を呼んでいるだろう」と思いこんでしまって、後に誰も呼んでいなかったことが判明するあれによく似ている。

このままだと埒が明かないのでそっと教えてあげよう。
そう思って立ち上がると、ちょうど目的の駅に着いたところだった。



サラリーマンさん。
大変申し訳ないのですが、僕は往きます。
どなたか優しい方に埒を明かしてもらってくださいまし。

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