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渋谷と武蔵小杉と新丸子 / 東京帰省日記③

前回の続き

 渋谷に着いた。駅の地下道には、人間の湿気が充満している。

 今日は一日用事がない。長らくTOKYUカードに溜まっていたポイントを、券売機でPASMOにチャージする。数万円分ある。これで、古くなっている靴とリュックを買い替えよう。

 渋谷は相変わらず人が多い。スクランブル交差点を抜け、LOFTに着く。色々と物色してみるものの、ピンとくるものに出会えない。近くに良さげな鞄屋さんもなさそうだった。来て早々だが渋谷を出ることにする。滞在時間、一時間くらいだろうか。

 渋谷という街に、ピンとくるものがなかった。靴や鞄だけの話ではない。どうやら、今の自分が欲しているものは、ここには無いみたいだ。

 再び、暑く湿っぽい地下道を歩く。東横線で横浜方面の急行電車に乗る。電車に揺られること十数分。到着したのは、武蔵小杉。かつて住んでいた新丸子の隣駅で、新丸子は急行が止まらないのでこちらで降りた。

 タワーマンションが多数建設され、大型の商業施設が立ち並ぶ武蔵小杉。都心へのアクセスも抜群で、「住みたい街ランキング」上位にも顔を出すらしい。久しぶりに訪れてみると、街並みが随分変わっていた。お店が入れ替わっていたり、タワマンが増えていたり、新しいビルの建設も進んでいる。

 正直、便利だとは思うが、自分はあまり武蔵小杉に魅力を感じない。人工的に作られた街に、人工的に作られた店が並んでいる雰囲気が、あまり好みではない。土地の風土や文脈から切り離された都市。こういう場所に、私は惹かれない。

 内心、魅力を感じないとか言っておきながら、この便利な街でちゃっかりと靴と鞄の買い物を済ませる。ありがとう武蔵小杉。そして、歩いて新丸子へ。武蔵小杉と新丸子の間は、歩いて五分ほどなのだ。

 少しずつ、まちの雰囲気が変わってくる。武蔵小杉と打って変わって、新丸子は、人の営みを感じられるまちだ。昔ながらの商店や、個人経営のお店が残っている。新卒一年目、初めて一人で暮らした新丸子。自分は、このまちが大好きである。今晩は、かつての行きつけの飲み屋で飲む。

次回へ続く


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