『ひとことひとし』いしいしんじー読書メモ#8

『ひとことひとし』いしいしんじ 新潮2024年6月号
純文学度:60
キャラ:2
テーマ:5
コンセプト:4
展開:3
文体:1

パラレルワールドがモチーフのお話。
主人公ひとしは、小さい頃に双子の姉であるひとこを亡くしている。
しかし、ひとしは自分の部屋のPCでのみ、亡くなったはずのひとこと対話することができる。
モニター越しのひとこは、自分と同じ造りの部屋にいて、ひとこの世界では、ひとしが小さい頃に亡くなっている。
つまり、ひとこ目線では、小さい頃に亡くなったはずの双子の弟と対話していることになる。
当然、読者目線では、ひとしが亡くなっている世界とひとこが亡くなっている世界、二つのパラレルワールド間での交信を眺めているということになる。

小説全体的にはガラス細工のような雰囲気。
すごくきれいで美しいんだけど、同時に扱いを間違ったらすぐに壊れてしまいそうな脆さも持ち合わせている。
桜の持つ、運命づけられた儚さが醸し出す美しさとは、またちょっと違う感じ。

後は、パラレルワールドの話なので、物理の勉強したら、なおおもしろく読めそう。
長良はド文系なので詳しくは知らないのですが、物理ってパラレルワールドとか多世界解釈みたいな領域も扱うらしいですね。
実は、純文学ってこの作品に限らず、パラレルワールドというか、今の世界ではない、あり得た世界、みたいなものに言及してる作品が結構多いんですね。
『1R1分34秒』とか『百年泥』とか。
なんでね、純文学読む人はぜひ量子力学を勉強してみてください。
そして長良に教えてください笑

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