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昔参加したBank of Americaのカンファレンスの記録

2018年、おそらく日本人の参加者は自分一人であったであろうバンク・オブアメリカのカンファレンス「Technology Innovation Summit 2018」に参加した際の記録を見つけたので、以下概要を残しておきたい(上記リンク先は2022年のものとなります。2018年のカンファレンスはすでにURLが存在しませんでした)。

今振り返ると、特にチャットボットツールで当時見えていた進化の道筋は、Chat GPTの出現によって既に大きく変化した印象を受ける。また、中国系企業のIPOにも力を入れている投資銀行部門の講演を見ると、今や中国のテクノロジー企業はアリババを筆頭に国から力を大きく奪われてしまったことを思うと当時から世界は大きく変わったということを思い知らされる。

(メンローパーク、カリフォルニアの会場入り口)

1.カンファレンス概要

  • 日時・場所:2018年10月17日/Menlo Park カリフォルニア州

  • 主催:BofA投資銀行部門・TMTセクターカバレッジが主催。

  • 目的:ベンチャーキャピタル、スタートアップ、地元IT企業とのリレーションシップ強化。

  • BofAは2009年に本カンファレンスを開始して以降、参加した累計スタートアップのうち17%とベンダー契約を締結、約130社とPoCを実施。BofAからはIB部門だけでなく、IT部門・PB部門・人事部門など多岐にわたる部署がイベントに参加。

  • 主な参加者:ベンチャーキャピタル、IT大手企業(Zoomなど)、スタートアップ、BofA社員。BofAからはIB部門だけでなく、IT部門・PB部門・人事部門など多岐にわたる部署が参加。

2.オープンニングスピーチ/ Gary Kirkham, Global Head of Technology, Investment Banking

  • テックセクターのIPO、M&AはBofAの投資銀行ビジネスで最大かつ最も成長しているビジネス領域。

  • 過去10年で360の企業が売却、24の企業がIPO。

  •  VCは我々に良質な売り案件を紹介してくれる。一方で我々は彼らに銀行としての見解を提供することで良好な関係を築いている。我々のビジネスにはVCのサポートが不可欠。

  •  VCマネーの入った企業のIPOに注力している。Survey Money, Docusignのような大型案件を今後も獲得したい(いずれも18年にIPO)。

  • M&A案件ではSalesforceによるMulesoft買収を手がけた。

  • 中国市場について:注力すべき市場。我々はTencent Music, XiomiのIPOのブックランナーを獲得。

  • 10年後の次のSalesforceを発掘するため、引き続きVCコミュニティとの良好な関係を築いていきたい。

3.  CTO基調講演:テクノロジー&パートナーシップ / Howard Bovile, CTO

  • まずBofAのリテールビジネスの概観について説明したい。現在のリテール顧客基盤およびネットワークとして、顧客数:67百万人・店舗数4,000店、ATM6,000台、35百万人のアクティブオンラインユーザーを有している。

  • また、月間では4,900億件/ 月の顧客との接点ログを蓄積している。この膨大なデータの経常的なモニタリング&トラッキング手法を考案中している。

  • 新たなデジタルチャネル・新市場の開拓も行なっている。自前のチャットボットである「Erica」を2018年4月にローンチしたが、ローンチ後わずか2ヶ月でユーザー数は1百万人を突破した。主な機能はクレジットスコア(FICO)の照会対応、預金残高の照会対応などである。

  • また、Zelle(銀行間P2P送金ネットワーク。日本でいうことら)にも加盟しており、3.5百万人が利用している。 送金などのトランザクションビジネスは365日・週7日・24時間の常時対応が当たり前となりつつある。

  • 中小企業向けビジネスとしては、資金管理、外国為替、トレードファイナンス、ローン、アドバイザリーなどあらゆるサービスを提供。ビジネス取扱高は年率20%で成長している。

  •  機関投資家向けビジネスとしては、主にヘッジファンド、資産運用会社向けにヘッジ戦略、流動性供給ソリューションを提供

  • 最後に、我々のソフトウェア開発手法について説明したい。「リーン&アジャイル」を基本コンセプトとして、過去10年間にわたり、当該カンファレンスで接点を持ったスタートアップと約130のPoCを実施してきた。

  • 現在の注力領域はクラウド、情報セキュリティ(サイバーリスクの増大に伴い注力)、 キャピタルマーケット関連テクノロジー、  HRテックサービス、財務・経理サービスである。

  • 最後に、スタートアップに対し、大企業とのビジネスデベロップメントの観点からのアドバイスを送りたい。まず提携候補先をよく知り、ライトパーソンにコンタクトし、質の高い面談を心がけることが重要。最も重要なのは、提携候補先とカルチャーがフィットするかどうか、この会社と付き合いたいかどうか、という点である。

4.CIOパネルディスカッション

(登壇者)
・Aditya Bhasin, Head of Consumer, Small Business and Wealth
・Laurie Readhead, Chief Data officer
・David Reilly, Global Banking and Markets Technology, Chief Information Officer

( Aditya / リテール部門)

  • ハイテック&ハイタッチ戦略をハイブリッドで推進している。

  • 銀行の店舗は死んだという極論に惑わされてはいけない。実店舗は引き続き重要だ。

  • ミレニアルの80%は店舗で銀行口座を開設している。全てデジタルチャネルが良いというわけではない。

  • 顧客の声を真剣に聞いていればモバイルオンリー、デジタルオンリーの時代が来るとは思えない。

  • BofAでは20百万人のユーザーがオンラインチャネルを利用。その背景は、顧客がハイテックなリレーションシップを求めたから。銀行がハイテックチャネルに顧客を誘導したからではない。

  • (送金などの)トランザクションビジネスはデジタルチャネルに移行するだろう。

(David / グローバルバンキング&マーケッツ部門CIO)

  • 市場門ではデータ活用ビジネスを開始している。50百万のデータタッチポイントから、どの企業がIPOに興味を持っているかを推測するモデルを構築した。

(Laurie /チーフデータオフィサー)

  • 現在、グループ内各所に散らばったデータ統合に注力。分析に移行する前の基盤(データ統合→モデリング)を構築中。

  • データビジネスの主な目的はコスト削減。

5.BofAのHRテック活用事例

  • BofAでは2年前からHRテック、HireVueの利用を開始。

  • 導入の目的は、テクノロジーを活用した採用プロセス高度化・効率化。

  • 米国の全世帯のうち半数はBofA顧客。採用面接後も良い関係を継続していきたい。面接者にいかに満足して帰ってもらうか、その手法を模索していた。

  • HireVue発掘方法:セコイアキャピタル(シリコンバレーの大手名門VC)からHireVueの紹介を受け、導入を決めた。

  • HireVueはビデオ面接ツール。これまでBofA内で5,000回の面接に利用

  • 効果測定手法:NPS(Net Promoter Score:顧客ロイヤルティ計測指標)を利用。それまでBofA内でNPSの概念・考えは全くなかったが、HireVueの導入に伴い、社内で当該指標の利用を開始。

6.テックIPO、M&A市場展望

(講演者)
・Gary Kirkham, Global Head of Technology Investment Banking
・Jack MacDonald, Global Head of Technology, Media and Telecom Investment Banking & Chairman of Global M&A
・Neil Kell, Chairman of Global Capital Markets and Head of Technology, Media and Telecom Equity Capital Markets 

  • 過去3年でプライベートエクイティを通じた企業の資金調達額が一気に拡大。多くの企業が未上場のまま留まっている。

  • 2019年のIPOは(Uberを始めとする大型案件要因もあり)活性化。2015年−2017年の3年間でのパブリック:プライベートのエクイティ調達比率は4:1であったが、パブリック:プライベートの資金調達比率は1:1の均衡に近づくだろう。2018年IPO累計件数は45-50となる見通し。2019年は50-55件程度と見込む。

  • 次にテクノロジー企業のM&Aについて述べたい。

  • 2018年は直近10年で2番目にM&A取引金額が大きな年であった。

  • 2017年はSaasビジネスのM&Aが活況であり、クラウド、モビリティ、AI、サイバーセキュリティは引き続きM&Aが活発な領域。

  • また、 近年テック- 非テック企業間のクロスインダストリーM&Aが増加している点も特筆すべき点として挙げておきたい。

  • 2018年には$105Bnの非テック企業によるテック企業の買収があった。

  • 近年の非テックーテック企業間の主なM&A案件は以下の通りである。Walmart – Flipkart
    Target – Shipt
     IKEA – Taskrabbit
    Mastercard – Brighterion
    Amazon – Wholefoods (*このディールだけはテック企業が買い、非テック企業が売りの案件)

7.リテール部門のデジタル化:ハイテックとハイタッチ

(講演者)
・Hari Gopalkrishnan, Client Facing Platform
・Michelle Moore, Head of Advanced Solutions & Digital Banking

  • ハイテック(デジタルチャネル)&ハイタッチ(実店舗チャネル)双方を組み合わせたチャネル戦略をとっている。

  • 支店へのアポ入れはモバイル、ATMでの引き出しはモバイル、各種照会はチャットボットのERICAで実施。ERICAで対応できない案件はすぐにコールセンター(有人チャネル)が対応。ハイテック・ハイタッチでシームレスに顧客に対応している。

  • また、デジタルチャネルの拡大に伴いサイバーセキュティリスクも増大している。したがって本人確認詐欺、データ流出、個人情報保護などのセキュリティツールも関心のある分野である。

  • AIの利用はそのロジックが説明できることが大前提。我々にはステークホルダーへの説明責任を全うする義務がある。ブラックボックスではなく、ホワイトボックスの利用が前提。

  • 現在の注力分野はチャットボットツールのErica。データが蓄積していけば、パーソナライズドされたサービス、次の行動を予測した上でのレコメンデーション機能が提供出来るようになっていく。

  • 課題は、莫大なコンピューティングパワーを確保すること。予測エンジンには巨大なコンピューティングリソースが必要

  • Ericaはまだ開発途上。Whatの質問には答えられるがWhyの質問にはうまく答えられない。

  • 言語対応は英語のみ。海外展開はまだ考える余裕がなく、検討していない。

  • EricaのROI計測手法について:詳細は伝えられないが一つ言えるのはこうした新サービスのROI計測は難しい、ということ。顧客満足度を踏まえた総合的なROI指標を設計している。

8.Selling to Wall Street:金融機関への売り込み方(スタートアップに対するアドバイス)

(講演者)
・Anand Ahuja, Head of Transformation and Operational Excellence for Business Banking
・Rick Knafelz, Global Transaction Services Technology Executive
・Neil Zane, Technology Partnership Development (Moderator)

  • Technology Partnership Development部門は外部テクノロジー企業との提携・ユーザー契約を担当。合計14名おりVCやIT企業と毎日面談している。

  • 各ビジネスユニットから吸い上げたニーズに基づきソリューションを発掘している。それ以外の領域はリサーチの対象外(自分達独自の関心分野は追わない)。

  • スタートアップとの関係で留意しているのは無理なカスタマイズ要求を行わないこと。スタートアップのリソースは限られてということを念頭に交渉を行うことが重要。

  • 顧客体験の向上、コスト削減、フリクション削減に興味がある。

  • システムの内製化・外注区分について:一般的に、コモディティ化して競争力のない、付加価値の低い部分は外注したい。逆に競争力のある分野は内製化したい。 もちろんケースバイケースで判断するが。

  • バックオフィス事務の削減・自動化は関心の高い分野である。

  • ユーザーとしての関係にとどまる外部ベンダーも多いが、中には大切なパートナーとして戦略出資を行っているベンダーもいる。

  • パートナー候補先に求めているのはビジネスアイデアよりはむしろ実行能力。ビジネスアイデアは誰でも語れるし、アイデア自体を批判する人はそうそういない。重要なのは本当にそれを実行できるのかどうか、というエグセキューション能力。

  • 既存ITベンダーのサービスを置き換えるのは非常にハードルが高いことをスタートアップには理解してほしい。銀行と既存ベンダーは深く長い付き合いがあることに留意。したがってBofAとしては、スタートアップとの協働は既存ベンダーとコンフリクトのないスペースからスモールスタートしたい。

  • もしスタートアップが既存ITベンダーとバッティングするプロダクトを扱っている場合、利用にあたっては差別化要因・競合優位性の明確な説明が必要になることを理解してほしい。

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