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目の前の人(正確には、自分が生殺与奪権を握られている人)を喜ばせたいという気持ちは起業家も個人事業主もサラリーマンも同じ

起業家も個人事業主も中小企業の経営者もサラリーマンにも共通していることがある。それは「目の前の人を喜ばせたい」という気持ちである。ここではエモい話をしようとしているわけではなく、サラリーマンをしていて、またスタートアップや中小企業の方々と接していてつくづく感じる点である。

では、ここでいう「目の前の人」とは誰か?それは自分の生殺与奪権を握っている人、つまり金銭をくれる人のことである。起業家や個人事業主、中小企業の経営者であればそれはお客さんが該当する。お客さんを喜ばせ、満足してもらい、その対価としての報酬をいただけなければ食い扶持をすぐに失う。

一方サラリーマンはどうか。「お客様第一主義」というスローガンを掲げる会社はよく目にするし、毎年の人事評価の指標の一つに「顧客第一主義」を入れる会社は多数ある。会社という法人にとっては顧客第一主義を貫かなければ売り上げも立たず、生存することができない。

が、これはサラリーマン個人には当てはまらない(除く、完全歩合給の世界で生きる方々)。サラリーマンは会社の業績如何にかかわらず毎月給与がもらえる守られた存在である(もちろん、業績が悪くなればボーナスが減り、中には基本給が減給にはなるが)。極論を言ってしまえば、お客さんを喜ばせて満足させなくとも、会社が潰れない限りは給与がもらえる。そして昇格をすれば当然給与も上昇していく。その昇格や給与の支払いについて決定権限があるのは誰か。もちろんお客さんではなく、上司および会社である。サラリーマンがどんなにお客さんを喜ばせてその対価をもらい優れた実績を上げても、上司や会社がそれを評価しなければそこで終わりである。端的に言えばサラリーマンの生殺与奪権を握っているのは上司であり会社なのである。

したがってサラリーマンはまず第一に上司を喜ばせることが最重要課題となる。サラリーマンにとって、「目の前にいる、喜ばせるべき人」とは社外のお客さんではない。上司なのである。

私が以前勤めていた会社の上司で、常務執行役員まで昇格した方がいた(ここではAさんとする)。Aさんはもちろん仕事もできたのだが、何よりもAさんの上司に対する気配りには細心の注意を払った。

Aさんと私とで、自分たちの会社の専務と、海外からやってきたお客さんとの面談をアレンジしたことがあった。面談の事前準備として、専務には「ご発言いただきたい事項」という英文ペーパーを渡し、またAさんと私は会議室の席順やご発言いただきたい内容について事前ブリーフィングを行った。そして面談当日。専務とお客さんは談笑をしてあっという間の時間が過ぎた。

Aさんは面談中はとてもにこやかな表情で対応していたが、お客さんを会議室からエレベーターホールまで見送った後、急に顔が真顔になり不安そうな顔になった。お客さんをお辞儀して見送った後のエレベーターホールで、Aさんふと漏らした言葉は「専務は今日の面談に満足したかな」というものであった。「お客さんは今日の面談で自分達に満足したかな」という発言は微塵もなかった。

その後も終始不安そうな顔であったが、執務室に戻った後に専務から「今日の面談はよかったよ!ありがとう、お疲れ様」と言われると、Aさんは途端に明るい表情になった。私に対しても「お疲れ様、専務も喜んでいたよ!やっぱり海外から来たお客さんに対して英語で対応できるよう準備しておくこと重要だね」といったお褒めの言葉をいただいた。

長くなってしまったが、Aさんも起業家も、個人事業主も、中小企業経営者も、行っていることは皆本質的には同じである。自分の生殺与奪権を握る人をいかに気遣い、いかに喜ばせるか、という点である。それが社内にいるか、社外にいるかという違いだけである。

したがって、優秀なサラリーマンというのは「誰が自分の生殺与奪権を持っていて、どう喜ばせるべきか」という嗅覚が優れているはずであるので、会社の外に出てもその嗅覚を活かしてうまくやれるのではないか、と考えている。本質的には皆、同じことをやっているのだから。

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