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ベンチャーディールズ(37) Asset DealとStock Dealの違い/ Venture Deals - Asset Deals vc Stock Deals

以下、米国VC・Foundry GroupのBrad FeldやJason Medelsonが毎年2回提供しているオンラインコース(無料)、Venture Dealsの講義内容が素晴らしかったのでまとめてみました。
今回はスタートアップのM&Aにおける「Asset Deal vs Stock Deals」のセッションを和訳しました。なお、和訳することについてはBrad Feld氏と直接コンタクトし、許可を得ております。他のセッションも順次アップしていく予定です。是非ご一読下さい。なお、Venture Dealsはベンチャーキャピタルを理解する上でとても勉強になるシリコンバレーVCのバイブルのような本なので、是非ご一読ください。

(以下、講義和訳)

(クリント)まず、株式取引(Stock Deal)とは何ですか?

(ブラッド)弁護士や会計士は、2種類の買収ストラクチャーを株式取引と資産取引(Asset Deal)と定義したけれど、自分はこれを「バナナディール」か「パパイヤディール」とって定義すべきだと思っていました。なぜなら「株式取引」と「資産取引」という言葉は、それぞれの取引の内容を適切に表現していないからです。

株式取引とは、買い手企業があなたの会社をそっくりそのまま買うです。買い手はあなたの会社の株式を全額購入し、その結果、あなたの会社は買い手の会社の一部となります。基本的に、買い手企業はは株式取引であなたの会社に関連するすべてを購入することになります。

(クリント)では、資産取引とは何でしょう?

(ブラッド)資産取引は、一般的にバナナディールと自分は思っていますが、あなたの会社全体をまるごと買うのではなく、ある資産だけを買う取引です。したがってあなたの会社自体は買収されておらず独立した事業体として存続します。ただし、買い手はあなたの会社の資産全てを実質的に買うことができるので、残ったあなたの会社は清算する必要のある空っぽの箱だけ、ということになります。

資産取引の場合、あなたの会社全体が買収者に吸収されるわけではないので、取引の法的構造も、あなたの会社の負債の配分や責任も変わってきます。

(クリント)株式取引ではなく、資産取引を選好する理由があるとすればそれは何でしょう?

(ブラッド)多くの買い手は、様々な理由から資産取引を好みますが、その典型的な理由は2つです。「負債の切り離し」と「取引の容易さ」です。買い手は好きな資産を選ぶことで、負債を負うことを避けることができます。あなたの会社の特定の資産で不要なものがあれば、それは買い取らずにしておけば、それはまだあなたの会社の一部になります。資産取引の場合、買い手はどのような負債を引き受けるのか、あるいは引き受けないのかについて、より的確に判断した上で、買取を行うことができます。

もう一つの理由「取引の容易さ」についてですが、これは株式取引より資産取引の方が簡単だ、という認識からくるものです。これは確かに過去のある時点ではそうだったのでしょう。

特に、売り手企業の負債のうち、これは背負いたくないな、という負債が見つかった場合、買い手は資産取引を利用してその負債を負うことを回避しようとするでしょう。もちろん、売り手はその負債もあなたに押し付けようとしてくるでしょうが。

歴史的には、ほとんどの売り手は株式取引を好み、ほとんどの買い手は資産取引を好んできました。

ただし、現在では、スタートアップを買収する企業の大半が株式取引を行なっています。ベンチャー・キャピタルにも、株式取引を強く勧めるところもあります。それは、資産取引後、投資先の会社を清算するという形にしたくないからです。

(クリント)株式取引が好まれる業界と資産取引が好まれる業界はありますか?

(ブラッド)歴史的に見ると、実態的な資産を多く保有する企業、特に環境負債やその他の種類の負債を抱える企業では、資産取引が多く見られます。一方で保有する資産が顧客や知的財産などである場合、買い手はとにかくそれらのすべてを欲しがるため、株式取引が多いです。一般にテクノロジー企業の買収は(持っている資産は顧客とソフトウェアなので)株式取引のケースが大半ですね。

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