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d news agui物語.20 「あぐいの黒壁」

上の写真は最近(2024.8)に壁の前で撮ったもの。この壁を大人になって思い出させてもらい「あぐいの美塾」を企画、開催しました。そして1年が経ち、この記念撮影となりました。今回はその話を書きたいと思います。

後半に僕の勝手な保存、活用プランのメモスケッチを載せています。壁の持ち主の方にはここを維持する資金がなく、普通に進むと壁の撤去と同時に敷地は更地となり、住宅地として販売されると予想します。
僕のスケッチ通りにはいかないとは思いますが、仮にこのプランを実行するには3億くらいはかかると、専門の方から教えて頂きました。
ほぼ、全文を無料で読んで頂けますが、後半、この資金のためのエリアを作りました。ぜひ、ご理解、ご参加ください。
この「d news agui物語」の収益も、ここに使わせて頂きます。合わせて定期購読ご支援、よろしくお願いします。



僕は小学生の6年間、この壁の横を通学路として雨の日も、凍えるような冬の日も通っていました。それは自然と自分の記憶に残り、当たり前のように意識することもなくありました。

阿久比町商工会青年部から講演の依頼を受け、そこで改めてふるさとの阿久比町を思い出し、考えた時、真っ先にこの黒壁が思い出されました。

おそらくみなさんもこんな「記憶の底」にあることってあると思います。特別に何か事あるごとに話題に出たりもせず、ただ、じっと町の一部になっている風景や風情。
それからこの黒壁について調べてもらうと「上の方の黒漆喰が剥がれ落ちてきて危険」な壁となって少し話題になっていました。これをまっさらにして何もなかったことになった場合、一体どうなるのか・・・・。仮に「これは大切な町の風情です」「残しましょう」と言ったとしても、その価値がわかってもらえないと具体的な提案に対する共感も得られません。

危険なので置かれたコーンですが、一刻も早く動き出さないとという印でもあり、町の人たちがみんなでこの風情の保存に関心を持ってもらえると嬉しい。


ということで「あぐいの美塾」を考え、「何気ない町の風情を残すことは、この町で暮らすことの居心地でもある」ことをみんなで専門家ゲストなどを町に呼んでトークショーをしたり町歩きしたりワークショップしたりしました。d(店)としては全く売上にはなりませんでしたが、d news の役割とはこういうことだとより実感しました。「町の風情を残す活動」をするために「物販や飲食」で活動を下支えする。日頃通ってくださるカフェのお客様一人一人の来店が、私たちのこうした活動の原子になっていく。(とはいえ、店はなかなか赤字ですが・・・)

阿久比町宮津地区の三河知多木綿の問屋さんのお屋敷。茶室や蔵などが広い敷地に。それを囲う大壁。栄え賑わっていた頃を想像できます。狭い路地も魅力ですが、セントレア空港に30分以内という利便性の良さに最近はベッドタウンとして開発も進み、このお屋敷の周りはピカピカの住宅が建っています。ただ利便性だけで開発してしまっては元あった歴史的な風情がなくなり、ただの土地になってしまいます。昔ながらの風情が少しでも残る事で漂う文化的な趣きがそばにあるって、結果、心の状態に関わってくると思うのです。


さて、店を開業して4年目。最初はいくら呼びかけてもなかなか反応がなかった町も、ここにきてなんとなく反応を頂くことができるようになってきました。そのきっかけをくれたのは美塾のゲストで京都から講師で来てくれた建築士(建築家と言うと、僕は建築家じゃないよ、と、怒られるので)の黒木さん。「時間はかかりますが、しっかり役場などと対話しながらやっていきましょう」と。そもそも黒木さんが僕が「いいな」と思ったのは、依頼されてもいない、でも、自分を必要だと思ってくれた場所にどうしたら通うことができるかから考える。というスタンス。このプロジェクトも建物の持ち主には共感は頂けていても資金がない。そして、町にとって大切な場所にしていくにしても、町役場にはそんな予算はない。

阿久比町に今もこうして40棟近く残る機屋の名残り。敷地の大きさ、相続の問題、活用方法がわからない、私有地の中にある、お金に困っていないなどの様子から多くは自宅の物置に使われているケースをたくさん確認しました。写真の工場主と連絡が取れて先日内見させて頂き「有効に活用できるのでしたら」と。親が亡くなられるなどをきっかけに、「どうするか」となるケースも多く、資金的、世間的、家族的、継続的な検討が必要となる。その結果、大手の住宅メーカーがアパートとして売り込むのですが、最近は借り手の保証もなく、アパート経営も言うほどはうまく言っていないとも聞きました。町のためになり、できたら家賃収益も欲しい。しかし、ご近所の迷惑にはなってはいけない・・・・。
家業を大切にされてきたからこそ無くしたくない気持ちと、時期がきたらなんとかしなくてはならない気持ちをお聞きしました。
4年が経過したd news aguiも分かりづらいですが横から見ると見事なノコギリ屋根。40年間使っていなかった工場跡を矢高地区の鈴木さんのご理解のもと、将来、購入を前提にお借りしています。
d news aguiでのトークイベントの様子(あぐいの美塾)。
建物の一角には時間貸しのゲストルームも。県外からゲストを招いた際の滞在スペースとして活用しています。
話は変わりますが、最近d news aguiに相談に来られた隣町の方。所有している戸建ての借家が「古い」からどうしようかということで「私はこれを古いしか見えないけれど、ナガオカさんならどう見る?」ということで内見に。少し手をかければ今の若い人たちは特にこうした「なくなってしまうある時代のスタイル」の価値が見えるので、常滑の建築家と一緒にリフォームすることに。
現代の快適はないけれど、風情はあります。現代生活の快適さはどうやっても簡単に手に入りますが、こうした風情は大人の私たちがある程度の価値観で再提案してあげられます。借りたい方はご連絡ください。場所は愛知県知多市つつじヶ丘です。住宅地で商売はできませんが、事務所兼自宅などには使えます。


ここで普通は「じゃダメだね」となりますが、役場にも例えば黒木さんに通ってもらい、何かを調査するみたいな財源はないことはない。そこのやりくりから入れる建築家など、なかなかいないのです。

「町の文化度を2度あげよう」という私たちdのスローガンですが、1度は私たちが。もう1度は誰か町の人が、という意味で呼びかけています。
なので、この動きこそ、その1度。その0.1度が上がったような日でした。

僕の勝手なプラン。崩れそうな壁は一旦撤去し、敷地内に賃貸ゾーンを作り、その建屋の外壁と兼ねて外壁を再現します。現在のものは厚い土壁で中に木製の芯が入って中から支えているようです。壁は敷地内の建物とつながっていて、倒れる心配はなさそう。とはいえこのまま保存することは難しいので、内部構造は変えなくてはなりませんが、景観は元に戻せるのではと。問題はこの工事費。勝手なプランの中に「売る」と書いたのは、この土地はとても高く売れそうなので、建設費にあて、おそらくそれでも足りないので、町民の皆さんに呼びかけてクラファンをしながら、一人でも多くの方に「こうした風情を残す意識」を共有できたらと思っています。持ち主の方、勝手にプランしてすみません。(持ち主の方や建築家の方達とは、このプランは共有しています)  今後、こういう町内の物件を同じように残しながら活用できたらと思う時、例えば「まちづくり会社」を設立するなど、もっと公的にも進めやすい方法はないかということも、相談中です。


このnoteの収入も、全額このプロジェクトに使わせていただきます。

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