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第17回 自筆証書遺言とは| 学校では教えてくれない相続の話

行政書士の長岡です。相続の話、17回目となる今回は、手軽に作れるけれども注意点も多い「自筆証書遺言」について解説していきます。

はじめに(自筆証書遺言とは)

名前のとおり、手書きで作った遺言書のことです。民法では、自筆証書遺言について次のように定められています。

民法 第968条(自筆証書遺言)
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

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つまり、自分で書いて日付と名前を入れてハンコを押すだけです。筆記用具はコピー用紙にボールペンでも構いませんし、ハンコもいわゆる認め印で通用します。封筒に入れて封をする必要もないんですね。

このように、ルールとしてはわりとシンプルなのですが、実際に作ってみるとなかなか大変なのではないでしょうか。

自筆証書遺言の注意点

自筆証書遺言の注意点について、形式的なものと内容的なものに分けて説明してみます。

形式面の注意点 

まず、全文を手書きしなければならないのが厄介です。途中で間違えてしまった場合の訂正方法も法律でしっかりと定められていますので、そこも外すわけにはいきません。

民法 第968条(自筆証書遺言)
3 自筆証書(略)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

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鉛筆で書いた自筆証書遺言も、一応、有効ではあります。でも、消しゴムで消して簡単に書き直せてしまいますので、後からいろいろ問題になりそうですよね。

ちなみに、5年ほど前に民法の改正があって、預貯金や不動産の情報を記載した「財産目録」だけは、パソコン等で作った別紙に載せられることになりました。でも、財産目録以外は今でも手書きでないと通用しないのです。

もちろん、「自筆」が要件ですので、たとえ家族であっても代筆は認められません。

内容面の注意点

形式面では要件を満たしていたとしても、内容面で問題になることも多いようです。例えば、「○○銀行」と「○○信託銀行」を間違えて書いてしまったり、土地と建物があるのに「自宅」としか書いていなくて特定できなかったりと、そういったミスがあると手続きがうまく進みません。けっきょく、残された相続人が困ってしまうわけですね。

その他注意点

さらに、形式的にも内容的にも問題がなかったとしても、自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での「検認」が必要になります。このとき、相続人全員へ通知する必要がありますので、遺言書なしでの相続手続と同じように、亡くなった人の出生までさかのぼって戸籍等を集めなければならないのですね。

他にも、「せっかく作ったのに見つからない」とか、「先に見つけた相続人が(自分に都合の悪いことが書いてあったので)破り捨ててしまった」とか、そんな問題が生じることもあるようです。

おわりに(自筆証書遺言を薦めるパターン)

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