チームをつくり、プロダクトをつくる
こんにちは。
クックパッドの長野(@naganyo)です。
今回は、今年の始めに公開した↓noteのその後の話です。
前回は、プロダクトマネージャーの立場から、レシピアプリの買い物機能のリリースまでの道のりについて書きました。この時点では一つのプロジェクトとして開発を進めていましたが、今年の頭から正式にそのための新しい部署ができました。私は副部長という立場になり、プロダクトのマネジメント+組織のマネジメントの役割も担うようになりました。
そこで今回は、新たに組織マネジメントに片足を突っ込んでみた人として、「プロダクトをつくるためのチームづくり」という観点で、最近の取り組みについて書いてみようと思います。
チームづくりでやってよかった5つの取り組み
正直、年始の時点では「部署ができてもやることは特に変わらないかな?」くらいの気持ちでいました。しかし、実際に半年以上経って振り返ってみると、自分の動き方が プロダクトづくり < チームづくり のバランスに確実に変化したことを感じています。
徐々にメンバーが増えていく中で、それぞれが自律的に動けるチームにするために、様々な試行錯誤をしてきました。ここでは、その中でも特にやってよかったと感じている5つの取り組みを紹介します。
【1】 メンバーの目線を揃える全員参加勉強会
部署ができたタイミングで、部長を含む新規メンバーが数名増えました。
そこで、昨年から継続の既存メンバーと新規メンバーの間での情報格差を無くし、「さぁみんなで走り出すぞ!」となるために、最初の1ヶ月間は、週1・1時間の全員参加勉強会を開催しました。
テーマはプロダクトの現状理解。Miroを使ったワークショップ形式で、なるべく情報密度の濃い会になるよう準備をしました。
▲各回テーマの例
準備コストはそれなりにかかりましたが、チームのスタート時にこの時間を割いたことで、メンバーの目線が揃い、オンボーディングがスムーズに進んだ実感があります。その後は新規メンバーが中心となって施策を進めることもでき、既存メンバーも一度立ち止まって課題を見直す良い機会になりました。
【2】 畑の野菜づくりのような施策カレンダー
私たちの部署では、タスク管理にもMiroのボードを使っています。
進行中の施策のタスクを付箋に書いて、週単位で管理するカンバンのようなものですが、いくつか独自の工夫があります。
ひとつは、各施策について、開発フェーズだけでなく企画から運用・継続判断までの前後フェーズの期間を必ず書くようにしていること。これは、「自分が開発しているものの最終的な着地点がイメージしづらい時がある」という、チームのエンジニアから出てきた課題を元に生まれたアイデアで、イメージは畑の野菜づくりのカレンダーです。
▲施策フェーズの定義と
Miroのボードでの運用イメージ
手を動かす開発者あるあるだと思うのですが、目の前のタスクに集中していると、ふと「これってそもそもなんのためだっけ?結果はいつわかるんだっけ?」と思うことがあります。そんな状況が続くとモチベーションを維持しづらくなったり、チームが停滞してしまう事態にもなりかねません。
この野菜づくりのような施策カレンダーがあると、「いまは施策のための土づくりの期間」「いま種を撒けば3ヶ月後には収穫できるはず」というように、常に全体感を持って目の前のタスクに向き合うことができます。
また、「そろそろあの施策、収穫時期ですよね」といった会話がチームで自然と生まれるようになっており、リリースして終わりではなく、きちんと振り返って学び、継続 or クローズ判断を逃さない仕組みとして機能している点もとても良いなと思っています。
【3】 これやった方がいい!が集まる「やりたいことpool」
タスク管理のMiroボードでもう一つ特徴的なのが、「やりたいことpool」という欄を一番上に大きくとっていることです。ここには、メインで進めていく施策とは直接関連しないけれど「改善すべきと思うもの」や「新たに実装したいもの」を誰でも追加することができます。
▲やりたいことpoolの大きさはこれくらい
もちろんタスクの優先度はインパクトとコストを鑑みて都度判断しますが、まずはチームの誰もが「これやった方がいいと思う!」というタスクを発案できる場が重要。実際に、ここから生まれた改善がいくつもリリースされています。
ボードの一番上に大きく欄を増やしただけですが、チームメンバーの誰もが自分ごとでサービスについて考え、改善を提案・リリースできる状態につながっているように感じています。
【4】 数値の可視化とモニタリングを日常にする
「施策をリリースするからには効果計測もセットで」というのは頭ではわかっています。でも、開発で手一杯になって分析が後手に回ってしまうのを、私は過去に何度も経験しました。数値分析が後手後手に回ると改善スピードが落ちたり、出したものの効果が不明瞭なままフワフワする期間が生まれてしまったり、チームとしてよくない状態に陥りがちで、その度に反省しきりです。
そこで、今のチームでは極力そんな状況を回避できるよう、期初に少し時間をかけて、KPIに紐づく大枠の数値が確認できるダッシュボードを用意しました。もちろん、各施策ごとで詳しい分析のためのクエリやシートは都度用意するのですが、ひとまずの初速は既存のダッシュボードで確認できる状態になっています。また、毎朝Slackにサマリーの数字やグラフが自動で流れるようになっていて、「この数字が動いたのは何の影響だっけ?」という会話が日常的に生まれる状態になっています。
▲毎朝のSlack通知のイメージと
一喜一憂する人びと
同じ数字を見ても、それぞれの視点から考察されることでアイデアは広がると思います。そういった意味で、フラットなダッシュボードを常にみんなが見える場所に置いておくのはチームにとても良い影響があるなと感じています。また、何か施策をリリースしたときに、直後のホットな状態で数字をみて議論ができることで、スピードを落とさずに改善を進めやすくなっています。
【5】 雑な会話を推奨するSlackチャンネルの運用
チームのスタートが2020年なので、その時々の情勢を踏まえ、これまで基本的にリモート前提でチームを動かしてきました。そんな中、チーム全員がサービスの価値を考え議論する場所として、Slackチャンネルの存在はとても重要だと考えています。
テキストコミュニケーションは放っておくとハードルが上がりがちなもの。発言が形に残ってしまうからか、なんとなく「自分でちゃんと調べてから書こう」とか「よくわからないから書くのやめとこう」となるのは自然なことかもしれません。しかし、物理的に一緒にいられない環境においては、テキストコミュニケーションのハードルによって会話の絶対量が減ることの損失は無視できないと思います。
そんな問題意識もあって、私たちのチームのSlackチャンネルでは「雑に」発言することが歓迎される文化にしようと心がけています。
特別なルールを設けているわけではないですが、個人的にはSlack上の一つ一つの発言をなるべく重くしないことを意識しています。発信の重さと返信の重さは比例すると思っていて、誰かが時間をかけただろう発言には、それ相応の重さで対応しなければと思うのが自然です。逆に、気軽な発言に対しては、「でもこうかもしれない?」「こうしたらいいかも?」と気軽に返答できる空気感が生まれやすいと思います。日常的にやりとりするSlackにおいては、そんな気軽な会話からポンポンと発想が広がっていくことを期待したいので、あえて「雑な会話」を発生させることを、真剣に考えています。
▲チームの日頃のコミュニケーションに関しては
この記事がイメージしやすいかもしれません
チームづくりを通して、プロダクトをつくる
今回紹介した5つの取り組みに共通しているねらいは以下の2つです。
・チームメンバーの目線を合わせること
・その焦点を常に少し先の未来に向けること
私がチームづくりで大切にしたいと考えていることが、この辺りなのだと思います。チームメンバー全員が、少し未来の共通する目標を意識できていて、各々がそれに向けた自分なりの考えや視点をもって健全に議論できる状態が保てると、チームの空気が良くなり、プロダクトが正しい方向に前進すると考えています。
私はもともと組織マネジメントに強い興味があったわけでもなく、今も「マネジメント」をやれているのか?といわれたら自信は全くありません。ただ、この一年ちょっとで、良いチームをつくることを通して良いプロダクトをつくっていくという方法も「ものづくり」のアプローチとして一つあるのかもしれない、というのを感じられるようになりました。
個人的には、クックパッドに入社したときから「人を幸せにできるものづくりがしたい」と思ってサービスやプロダクトを作ってきました。今もその気持ちに変わりはないですが、その手段は自分が手を動かすことだけに限る必要はないのかもしれない。デザイン、エンジニアリング、プロダクトマネジメント、組織マネジメント・・・いろいろと立場を変えつつチャレンジしてみる度に、見える世界が変わります。そして、どの立場になっても、やっぱり「ものづくり」は楽しい。今後もいろいろなアプローチで、「ものづくり」に挑戦し続けたいなと思っています。
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