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2022 J3 第4節 福島ユナイテッドFCvsAC長野パルセイロ マッチレビュー

 第4節にして、今季2度目の首位攻防戦inアウェイとなった、福島ユナイテッドFCvsAC長野パルセイロ。ここまで開幕無敗の両チームによる激闘になりましたが、結果はドローとなりました。正直試合内容としては、最後に執念の1点を捻じ込み勝点1を拾ったような形に見えましたが、試合後の各人の振る舞いを見ると悔しさがひしひしと伝わってきました。特に、試合終了直後に画面端に映るシュタルフ監督の姿を見てもらえれば、この試合に勝ちたかったという強い思いを感じることができます。
 痛み分けとなった首位攻防戦、福島ユナイテッドFCとしては4連勝を逃す形になり、パルセイロとしては今季初連勝とはなりませんでした。双方の狙いがぶつかった熱い激闘を振り返っていきましょう。

①試合結果

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 第4節首位攻防戦の結果は1-1の痛み分けとなりました。前半の早い時間帯で、3-4-2-1と4-3-3の優位性を突いて福島ユナイテッドFCが先制点を奪いました。パルセイロの4バック+中盤3枚に対して、前線3枚&WB2枚で左右に揺さぶりを与えると、新井選手が素晴らしいコントロールで池ヶ谷を出し抜きPA内に侵入。そのまま中央に上げたクロスを高橋選手が冷静に合わせてのゴールでした。新井選手はパルセイロの下部組織に所属していた経歴があり、とんでもない恩返しをやってくれたな...と画面の前で複雑な気持ちになりました。(数年前のホーム,ガイナーレ鳥取戦でも終了間際にやられた記憶がうっすらと...笑)
 その後は福島ユナイテッドFCがカウンターで決定機を作るなどしますが、お互いのGKが失点を許さず、スコアは膠着したまま試合終盤を迎えます。そして、シュタルフ監督が交代枠5枚を早めに使うとパルセイロが攻勢を強めることになりました。何度か山本選手の好守に阻まれましたが、最後はPA内でFW顔負けの仕事をやってのけた喜岡が同点弾を奪いました。試合終了間際の同点劇だったため、福島ユナイテッドFCとしては目前に迫った勝点を2つ奪われ、パルセイロは土壇場で勝点1を掴む試合となりました。

②基本システム

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 お互いにスタメン発表時の登録ポジションとは少し違った配置になりましたが、メンバーをみれば大方想像のつく形でのスタートとなりました。福島ユナイテッドFCは樋口選手と森選手という中核になり得る選手が欠場、パルセイロは第2節で怪我をした矢田貝のところに金が入った形で、開幕戦と同じシステムとなりました。

③前半

 「失点だけが誤算」振り返って分析してみるとこの表現が一番あっていると感じました。0-1で折り返しているので、試合内容的にも厳しいものだったと初見では思っていましたが、それ以上にパルセイロの試合中の攻守における狙いが見えており悪くない内容だったと思います。本当に失点だけがアンラッキーな形で発生し、早い時間帯であったことが福島ユナイテッドFCにとっては有利に働いたという前半だったかと思います。そんなパルセイロのゲームプランを分析していきます。

【攻撃編】

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 上図がパルセイロのビルドアップ時によく見られた配置になります。守備時は4バックのLSBを担う水谷を1列上げて配置し、残りの3枚がPA幅くらいに広がって擬似3バックのような形でボールを動かします。そしてこの時3トップは中央で一定の距離感を保ち、福島ユナイテッドFCの3バックをピン留めします。

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 パルセイロの3トップの幅に合わせるようにして3バックの幅が狭くなるということはDF1人あたりのカバースペースが狭くなることと同義です。つまり、WBの選手は自分の背後に広大なスペースを作られているために勢いを持って水谷のポジションに圧力をかけることができません。また、シャドーとWBの中間ポジションを取ることで、相手にマークの迷いを与えます。こうすることで、水谷のテクニックから考えて十分なだけのプレー選択時間が与えられることになります。

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 水谷にプレー時間が与えられるということはそこに呼応する形で周りの選手が動き出すことができます。仮に上図のような形で坪川が相手ボランチを引きつけながらサイドレーンに流れていけば、元々いたスペースが大きく開くことになります。そして、このスペースに入ってきた宮阪を使ったり、森川に預けてレイオフする形で宮阪から逆サイドへ展開したりと相手を押し込むことができます。実際に前半は左サイドからのビルドアップで相手を押し込むことができていましたし、特に失点する前まではかなりの脅威になっていたのではないかと思いました。
 ただ、押し込むことはできても得点を奪うまでに至らなかった原因は2つあります。
・PA進入に差しかかる1本目の精度
・失点が起こってしまった
以上の2点が押し込んだ後の一歩に足りなかったところです。また、この2点は連動して負の循環を与えることになりました。正直、サッカーはミスのあるスポーツなので、前者のパスの質に関して言えばチャレンジ回数を増やすことができれば、前半に改善して得点を奪うこともできたかと思います。そんな中、早い時間帯に失点を喫したことで、パルセイロにボールを持たれても福島ユナイテッドFC側としては焦らなくて良い状況になりました。しっかり自分達が守備ブロックをセットしてミスを狙い、カウンターで沈めるという戦いに注力できるようになったのです。
 本来、開幕3連勝で主導権を握りながら戦ってきた福島ユナイテッドFCにとって主導権を握られて押し込まれる展開は本望ではなかったはずです。そのため、失点前までの状態を0-0のスコアで継続していけば、ストレスが溜まり守備の綻びにつながる可能性が高くなります。そういった意味で最初の決定機を得点に結びつけられてしまったことは、両チームにとって真逆の大きな意味を持ったと言えるでしょう。
 そして、カウンターの起点になっていたビルドアップのミスはここからいくらでも改善できるところであったり、芝との相性が悪いように感じるミスもあったため、そこまで悲観する現象ではないと思っています。

【守備編】

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 上図がパルセイロの基本守備ブロックの配置になります。イメージとしては開幕戦のvsギラヴァンツ北九州と大きくは変わりません。相手のDFラインに対して3トップが中央封鎖の形で待ち構えて、ボールの前進ルートを外回りに設定します。そして、WBに出たところを中盤の3枚でスライドして奪いにいきます。
 しかし、開幕戦のほどの効力を発揮できたわけではありません。その理由は3-4-2-1と4-3-3の噛み合わせに隠されています。

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ギラヴァンツ北九州の4-4-2では佐藤がSBに対してプレスをかける時斜めのパスになるであろうCFへのコースを切れば、基本的に同レーンにいるSHに縦パスで逃げるしかなくなります。そこで1つしかないパスコースを船橋や水谷が狙えば、完全に奪い切ることが容易です。

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福島ユナイテッドFCで厄介だったのがシャドーの位置に入る新井選手と延選手です。彼らはWBの状況に合わせてハーフレーンで受けるかサイドレーンまで出てパスコースを作ってきます。こうすると、SBがボールとマーカーを同一視しながらインターセプトを狙うことがやや難しくなり、WBに対するプレス距離が遠くなったり、IHの背後で受けられてハマりきらなかったりする場面が増えます。ただ、同サイド圧縮を回避して決定機を創られたのは1度でありそれ以外は基本的に相手にストレスを与える守備ブロックとして機能していました。

④後半

 後半から交代枠を使いながら、いくつかの戦い方を見せたシュタルフパルセイロ。その変更と目的について迫っていこうと思います。

【4バックによるビルドアップ】
 前半は水谷を1列上げたような形でビルドアップしていましたが、後半に入ってからその形はあまり見られなくなりました。後半は4バックでSBが幅を確保し、相手シャドーより高い位置でボールを受ける場面が多かったかと思います。

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福島ユナイテッドFCは守備時にシャドーを中央に配置して置くため、サイドバックが高い位置をとって攻撃の起点になることで押し込む時間が増えていたかと思います。

【前線からプレス】
 前半から3トップが待ち構えて制限を加える守備をしていましたが、後半からは動的に相手を制限していきます。

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相手の3バックに対してもプレー選択の余裕を与えないようにワンサイドカットで時間とパスコースに制限を与えていきます。これに関しては、福島ユナイテッドFCも織り込み済みだったのか、ボランチやシャドーがパルセイロSBの内側をランニングすることで回避に成功している印象が高かったです。しかし、狙った形でパルセイロが奪えれば、格好のショートカウンターの状況が作れます。これを考慮して後半早い時間帯で同点に追いつき逆転するためのリスクをとった戦術だったのかもしれません。

【3-4-1-2への変更】

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 得点を取るための一手として3-4-1-2にシステムを変更しました。福島ユナイテッドFCの前線の選手のプレス強度が落ちたため、3バックに変更して両ワイドを攻撃の中心とし相手を押し込み更なる決定機を作り出すことができていたと思います。両ワイドに突破力のあるデュークと藤森を配置、2トップにはPA内で仕事ができて体の張れる佐野と宮本、相手を押し込み手詰まりになった時でも1.5列目で相手の嫌がるプレーのできる東といったように相手を押し込み是が非でも得点を奪うための最大火力配置でした。相手をさらに押し込むことでセカンドボールの回収率も向上させ、二次攻撃につなげる場面も多かったです。
 各選手の長所を最大限発揮できる環境を状況に合わせて用意するのがとても上手なシュタルフ監督が、これからどんな選手を使ってサッカーを展開していくのか楽しみですね。また、システム(初期配置)が変わっても瞬時に全員が同じ絵を描けるのはおそらく『24の原則』によるところが大きいのだと思っています!原則×選手の特長の数値が大きくなればなるほど優勝に近づくはずなので、ここからの戦いも熱く応援していきましょう!

まとめ

 今節で『4/34』が終了しました。「気付いたらシーズン終了してた」なんて状況が考えられるほどに週末の試合が楽しみで仕方ありません。首位攻防戦で勝利こそできなかったものの、この試合を通じてさらにチームが成長していくことは間違いなさそうです。リーグ戦で出番のない選手たちもTRMでアピールしていることは結果から伝わってきますし、チーム内の競争も激しいものになっているに違いありません。
 次節は昇格組ながらも未だに負けなしのいわきFCをUスタに迎えての一戦になります。負けなしクラブとの連戦になりますが、次はホームUスタです。昇格組に初黒星をつけるべく全力で応援していきましょう!
4月はJ2経験クラブこそ少ないものの、序盤の大きな山場になります。
福島ユナイテッドFC・いわきFC・Y.S.C.C.横浜・鹿児島ユナイテッドFC
監督や主力選手の古巣クラブ、負けなしクラブが3つと勢いをつけるにはもってこいの相手です。また天皇杯の長野県予選準決勝もありますので、4月の残りは4連勝で走り抜けましょう!

それでは、いわきFCvsカターレ富山のマッチレビューでお会いしましょう!


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