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2022 J3 第5節 AC長野パルセイロvsいわきFC マッチレビュー

 第5節、パルセイロの今季2試合目となるホームゲームの対戦相手はいわきFCでした。開幕から4試合で負けなしの状況であった2クラブの対戦は、おそらく誰も想像していなかった形で終了を迎えました。お互いに2勝2分で第4節では引き分けであったため、是が非でも勝利が欲しかった第5節。負けなしを継続し、欲しかった勝点3を奪ったのはいわきFCでした。そして、誰も予想しなかったのはその大差のスコアでしょう。
 いわきFCに対して何が及ばずにこの点差になったのか、本当に点差通りの何もできなかった試合だったのか、冷静に分析を通して俯瞰してみることで見えてくるものもあるはずです!上位対決ながら点差が開いたこの試合を振り返っていきましょう。

①試合結果

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 上位対決となった第5節ですが、結果は0-4でアウェイチームの勝利。前半終了間際、後半立ち上がり、PK、CKというように失点したくない時間帯で失点してしまった印象が強いです。特に前半終了間際の失点は要注意人物として紹介した嵯峨選手と古川選手のホットラインで一瞬の隙を突かれてしまったため、時間帯&得点者・アシスト共にパルセイロといわきFCの明暗を大きく分ける結果になってしまったと思います。ハーフタイムで仕切り直せるとは言え、0-0で迎える後半と0-1で迎える後半では采配は変化せざるを得ず、シュタルフ監督としても難しい時間帯での失点であったと思います。
 また、後半の立ち上がり自陣でのビルドアップミスからビハインドを2点に広げられ更に難しい試合になってしまいました。パルセイロとしては今季初の複数失点を自分たちのミスから招くことになり、出鼻をくじかれた形になってしまいました。喜岡個人についてどうこうではなく、前半からうまくいっていない印象の強かったビルドアップからのボールロストであったため、チームとしてまだまだ3バックのビルドアップは完成していないと感じました。

②基本システム

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 いわきFCは予想通りの慣れ親しんだ4-4-2のシステム、パルセイロは船橋が第5節に受けた負傷の影響もあってか3-4-3のシステムでした。スタメン発表の段階で池ヶ谷、秋山、喜岡が先発であったため、3バックの形は予想外ではありませんでしたが、坪川をLWBとして配置していたのは想定外でした。
 噛み合わせ的には相手の2トップに対して3バックの数的優位となるので、この辺りの配置の優位性を生かして、じっくりと相手の4-4-2ブロックを左右に揺さぶり、ギャップを生み出す狙いがあったのだと考えます。

③前半

【攻撃】

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 基本システムこそ3-4-3でしたが、左右非対称な配置になっていたような印象を受けます。左サイドはLWGの森川が幅をとり、LWBの坪川はやや内側に入ってリンクマンの役割を果たします。右サイドはRWBの水谷が幅をとり、RWGの山中は中央に入って裏抜けorフィニッシュワークの役割を与えられていたようでした。

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 左サイドのビルドアップは比較的有効な攻撃に繋がるシーンが多かったと思います。坪川が自身のマーカーの立ち位置を把握しながらハーフレーンに入り込むべきか、サイドレーンに張るべきか選択してリンクマンとしての役割をこなすことに成功していました。また、ワイドに開いた時は左利きであることを生かし、迂回経路を作成しスムーズなサイドチェンジの経由地点となっていました。攻撃時においては中盤3枚に入った時と変わらないタスクを与えられていたようなので、WBという初期配置であってもあまり詰まることがありませんでした。

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 前半でビルドアップがうまく出来なかった時の配置は基本的に上図のようになっていました。人基準でいわきFCがプレッシングをかけてきた時、3バックのCBが開きすぎることでSHのプレッシングの網にかかり、幅をとった選手に対するパスコースが消されてしまい、プレッシングにハマってしまうようになります。噛み合わせで既に2トップに対して3枚の数的優位でしたから、相手の2枚の制限の仕方を見ながら3枚+GKで左右に揺さぶることができれば、また違った攻撃のバリエーションが見られたかもしれません。
 ただ、ここには故障者の問題も関係してきます。今回GKは移籍して間もない大内を抜擢したシュタルフ監督でしたが、故障者トラブルによる一手だったと推測されます。当然、Y.S.C.C.横浜で共闘経験のある大内はシュタルフイズムを知る重要なGKだとは思いますが、ピッチ上でパスを受けたりボールを回したりする相手は監督ではなく、2022シーズンのパルセイロという生き物です。これを考えると、パルセイロというチームに馴染んだGKである方がプレス回避の一員として関わりやすいと言えます。つまり、第3節・第4節で抜擢された金がベンチに入らないことは少し違和感につながります。初年度ですからこの辺りの故障者トラブルを乗り越えながら、ビルドアップの整地をしていくこともここからの課題になってきそうです。

【守備】

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 今季のシュタルフパルセイロにしては、狙い通りの守備という形があまり見えなかった前半だったかと思います。その理由は、いわきFCがDFラインからのビルドアップをある程度放棄してくるチームだったからと言えます。ロングボールで陣地回復をしてセカンドボールを回収することで、前進していくことがいわきFCの基本的なビルドアップ(?)になるので、狙い目という狙い目が作りづらかったのでしょう。そうは言いつつも、自陣での撤退守備の時にこれまでよりも好き勝手にボールを動かされている印象もありました。3トップ間のギャップが開いており、2CBとボランチに対して宮本しかフィルター機能を果たせていなかったため、楔のパスが入りレイオフされることでバイタルエリアで自由にプレーさせてしまった可能性は高いです。
 おそらく、相手のSH&SBに対してWG&WBをぶつけたかったのでしょうが、制限のない中途半端なギャップの開け方になり、相手の勢いをモロに受けてしまうような状態に見えました。

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 失点シーンに関しては非常に単純なスライドのミスです。本来、嵯峨選手に対応するべき坪川の内側をフリーランニングされ、中央からのマークの受け渡しが遅れる状態になり、人数が足りているのに下がってしまいました。一発を仕留める相手のクオリティもさすがですが、マークの受け渡しという点では合流して間もないGKを起用した副反応になってしまった可能性を否定できません。

④後半

【攻撃】

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 後半に入り攻撃時の基本的配置は上図のようになりました。WBに入っていた坪川と水谷はサイドレーンで幅を取るのではなく、宮阪の隣に入って内側へのパスコースを作ります。そして、3バックでビルドアップの幅をとりライン際に森川&三田を立たせました。
 ビルドアップを行なっていく配置としては悪くなかったと思うのですが、ビルドアップで有効的に前進することができなかった印象を受けました。その理由は、前半から引き続きサイドCBの立ち位置にあると考えます。

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 ビルドアップ時CBで幅を担保するのは手段としてありますが、相手SHに捕まるところまで広がってしまうと用意されていたはずのWGへのパスコースが消え、迂回経路が相手の背中で消されてしまいます。本来であれば、2トップに対して3バックの優位性を生かして左右に揺さぶりをかけたいところですが、SHに捕まることで実質的に数的同数に持ち込まれてしまいます。このポジショニングから見るパスコースの生まれ方は1m~2mで全然違ったものになってくるため、この辺りの中盤の選手の配置も含めた3バックでのビルドアップはここから熟成していくことになりそうです。

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 「失点に関与したからダメ」といった意見とは関係なしに利き足の関係上で杉井がLCBに入ってからの方が、ビルドアップの配置としてはスムーズかつやりやすそうな印象を受けました。森川や三田といった選手を幅を取らせるWG役として外側の迂回経路に組み込むなら、その前段階のプレイヤーは利き足が外側の選手であった方が、周りの選手の立ち位置もとりやすいと言えます。

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 左右問わず有効なプレス回避として効きかけていたのが、レイオフを使った回避でしょう。前述した外側の迂回経路に対してSBが強く圧力をかけてきた時、空いたスペースを内側に入ったWBが利用することで前向きな選手を少ない手数で使うことができます。
 ただ、今節に関して言えばパスミスが多すぎたかと思います。レイオフ時のショートパスや1本目の楔のパスがどうってことない状況でも50cm~1mずれることが散見されました。たった数十cmかもしれませんが体勢が崩れてしまえば、いわきFCの期待通りのボール奪取を遂行できてしまいます。ミスを0にすることは現実的ではありませんが、今節のズレの頻度だと配置によるプレス回避など夢のまた夢になってしまい、自信を持ってポジショニングできなくなることにもつながるため、この辺りの正確性は昇格に向けて突き詰めていかなければいけないでしょう。

【守備】
 守備に関しては、ビハインドが後半開始直後ですぐに広がってしまったことといわきFCの球際の闘いに引き込まれてしまったことで、空回りにつながる場面が出てきてしまったかと思います。0-1でしばらく推移していれば避けられた事態かもしれませんが、自分の前でボールを奪うという意識が強く出て、「球際で勝つ」という意識も試合の中で高まることで接触する角度が適切でない時が中盤の攻防で見られました。
 「まず1点を早い段階で奪わなければならない」「球際で勝つためにすぐ寄せないと」という意識は悪いことではありませんが、冷静に判断しなければ逆効果になることもあります。本来、守るべきゴールやスペースの方向から寄せられていれば、相手の懐に無理やり飛び込まずとも前進を止めることはできます。しかし、今節の2失点目以降は危険なところを塞ぐことから逆算した方向でプレスをかけられず、結果的に触れてはいるけれどボールは相手の前+自分の背後に転がっていることが多くなってしまいました。サッカーの攻守はシームレスであり、この焦りを軽減させるためにもボールの奪われ方には気をつけなければいけません。

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 また、ビルドアップ時に中央の厚みを持たせていたため、ボールの奪われ方が悪いとSHにつけられてサイドCBが釣り出されてしまい、広がったギャップにボランチやFWが侵入してくることを受けきれない状況もありました。背後を気にしながら前に強く出る、言葉では簡単に言えますがピッチレベルで体験するとものすごく難しい作業です。このことからもボールの奪われ方には注意してビルドアップ→ネガティブトランジションを設計していく必要がありそうです。

まとめ

 ここまで第5節での大敗を振り返ってきました。0-4という数字だけ見ると昇格に対して後ろ向きな気持ちになることも理解できます。しかし、まだ5試合しか終わっていません。シーズン序盤の1度の大敗で下を向いているようなチームが『J3優勝&J2昇格』なんて目指して良いはずがありません。この敗戦をどう受け止めて『Never Give Up』『Grow Everyday』できるか、この大敗の後こそ『ORANGEの志』の見せ所でしょう。
 チームと同じ方向を向いてJ2昇格に向けて挑戦し続けられるかが、私のようなサポーターに求められていることだと思います。下を向いていても次の相手に食われるだけですし、修正が完成するまでリーグの試合日程は待ってはくれません。挑戦を続けて成功する形を増やしていく、うまくいかなかったことは次回の糧として成長する、常に目指すべき場所をパルセイロファミリー全体が見据えて戦っていきましょう!

それでは、ガイナーレ鳥取vs Y.S.C.C.横浜のマッチレビューでお会いしましょう!

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