見出し画像

2022 J3 第9節 AC長野パルセイロvs松本山雅FC マッチプレビュー

 さあ、信州ダービー2nd レグの開始です。
 5月8日、サンプロアルウィンにてAC長野パルセイロはこれ以上ない悔しい光景を突きつけられました。幸運なことに翌週にリベンジのチャンスが残されています。このチャンスを生かさないわけにはいかないでしょう。5月8日、惜敗ではありましたが、同県のライバル対決に敗北し長野県代表として天皇杯本戦に出場できなくなりました。
 残されたコンペティションはJ3リーグのみ。昇格争いに置いていかれないためにも、是が非でも勝点3が要求される試合になります。ホームUスタで宿命のライバル対決を制し、昇格に向けて自らの手で上昇気流を作り出しましょう。

 それでは、この試合の見どころなどをまとめていきます!

①通算対戦成績

 松本山雅FCがJ3リーグに初参戦ということで、この対戦カードがJ3で実現したのは初めてになります。そのため、J3通算成績という形では紹介するデータがありません。しかし、それだとせっかくのJの舞台初の信州ダービープレビューとしては物足りないため、私が遡れるだけのリーグ戦での信州ダービーの結果を調べてきました。
 1997年の北信越リーグの結果から2011年のJFLの結果を通算するとリーグ戦での対戦は16試合ありました。そして、パルセイロ(長野エルザ時代も含む)は、松本山雅FC(山雅サッカークラブ時代も含む)に対して通算5勝5分6敗を記録しています。つまり、わずかに1試合分ですが負け越していることになります。来季以降も信州ダービーが行われるかはわかりませんので、今季の2試合で両方勝利し、成績を逆転した状態にしてシーズンを終えたいところです。
 11年前に飛びますが、パルセイロは直近の松本山雅FCとのリーグ戦で4戦連続勝ちなしとなっています。最後にリーグ戦で勝利したのは2008年9月7日まで遡ります。その後は3分1敗と接戦をものにできなかった記録が並んでいます。ただ、最後に勝利した試合からホームゲームでは無敗を継続しています。Uスタがホームになってからは、初めて松本山雅FCをホームに迎えることになりますが、この無敗は継続しつつ14年ぶりの勝利をホームで喜びたいところです。
 また、10年以上前のデータよりも先週行われた天皇杯長野県予選決勝の結果に目を向けると、0-1で松本山雅FCの勝利となっています。この時の松本山雅FCのメンバーはシーズン序盤のリーグ戦で控え組だったメンバーが中心、パルセイロは怪我人抜きのリーグ戦主力組でした。両軍のスカッドの組み方の違いはあれど制したのは松本山雅FC。リーグ戦は序盤に出場時間の長かったメンバーもメンバー入りしてくるでしょうから、簡単に先週の試合を参考にして対策を練れないというところも大きな損失かと思います。
 この信州ダービー1stレグが与えた影響がどのようなものになるかは試合が始まってでないとわからないところになるため、先週と比較してどうなったのかを見ていくのも面白いと思います。

②松本山雅FCの予想システム

3-4-2-1

 天皇杯長野県決勝のマッチプレビューでも同じように3-4-2-1のシステムを予想しましたが、リーグ戦とメンバーを大きく入れ替えたこともあり予想は外れ4-4-2のシステムでした。当然、今週末の試合も同じように4-4-2でスタートしてくる可能性もあると思いますが、その可能性は低いと考えています。
 先週の試合でメンバー外であった主力級の宮部選手、大野選手、常田選手の3バックは4バックの敷く時よりも強固ですし、5バックにして相手の攻撃を引き込んでからカウンターに移るゲームプランの時の方が、勝利に直結している印象があります。5バックの守備組織の堅牢さ、横山選手、菊井選手のカウンターの鋭さを明確にする上でも3-4-2-1が現実性の高いシステムになるかと思います。

【攻撃】

松本山雅FCの攻撃警戒ポイント

 先日の天皇杯長野県予選マッチプレビューと重なるところもあるかもしれませんが、違うコンペティションになるので一応おさらいしておきます。松本山雅FCの攻撃時のポイントは3つあります。

・WBがCBからのパスで相手守備ラインを超えること
・横山選手の快足
・2シャドーがDF-MFラインで嫌な仕事をする

 松本山雅FCは縦に鋭い攻撃が特長の一つですが、相手が守備ブロックを整えた時には無謀にDFから裏へ蹴ったりするだけではありません。3バックとダブルボランチで相手のFW+2列目に対して数的優位を作りながら前進を図ります。3バックとダブルボランチでショートカウンターに対するフィルターもある程整理できているため、WBの選手は高い位置をとり、後方からのパスを受けた時点で既に守備ラインを1つか2つ越えているような位置どりをしてきます。
 ここは相手の方が数的優位な段階ですから、どれだけエネルギーを効率よく使ってビルドアップにストレスを与え続けられるかが鍵になってくるでしょう。
 特に警戒しなければならないのは後半に挙げた2点です。最前線に入ることが予測される横山選手は年代別日本代表候補にも選出されたストライカーです。彼の快足は分かっていても対応が難しく、これまで対戦した各チームのDFを困らせてきました。
 また、そんな横山選手と2シャドーの関係もパルセイロにとって脅威になり得ます。相手が嫌がる位置に顔を出して決定的な場面まで作り出すことのできる菊井選手、空中戦で圧倒的な強さを誇る小松選手、ドリブルに強みのある村越選手というようにリーグ戦で起用時間の長い選手を並べてもそれぞれに個性があり、一筋縄で止めることは難しい相手だと考えます。
 天皇杯長野県予選で、榎本選手が空中戦で秋山にあまり勝てなかったことと失点の場面でスペースを埋める動きがやや遅かったところを考慮して地上戦の機動力勝負で臨む可能性も十分に考えられます。どの組み合わせでも前線の3人だけで決定機まで運ぶ力があるので、鋭いカウンターには長短問わず注意しなくてはいけません。

【守備】

5-2-3(5-4-1)の守備ブロック

 基本的には守備時に5-2-3(5-4-1)のブロックを固めて自陣の危険な場所を人で埋めてシュートを打たせない守備をしてくることが予想されます。前節のギラヴァンツ北九州戦でも相手に許したシュート数は公式記録でわずかに1本でした。押し込まれる時間が全くなかったわけではないのに、シュート数をここまで減らせられる守備というのは、非常に堅牢で対戦相手にとってストレスのたまる守備ブロックではないでしょうか。
 5-2-3のブロックの外側まで出てブロックの内側にスペースを与えるような守備はせず、ブロックの外側では相手にある程度自由を与えます。そして、相手の攻撃が自陣の危険な位置に入りそうになった時、急激に守備の圧力を高め、ボール奪取に切り替えます。ギラヴァンツ北九州も何度かサイド突破する場面がありましたが、ブロックの内側に入っての有効な攻撃を生み出すには至らず、サイドレーンからのクロスを放り込むしかなくなる場面が散見されました。
 シーズン序盤こそ失点が続いた松本山雅FCの守備組織ですが、ここにきてアスルクラロ沼津戦、ギラヴァンツ北九州戦、県決勝でのパルセイロ戦と3試合続けての無失点を達成しています。おそらく、数字がやっていることについてきて守備陣としても調子が良い状態かと思いますが、パルセイロの攻撃はどうにかしてその守備網を打ち破る必要があります。

③松本山雅FCの要注意選手

 この項も天皇杯長野県予選決勝マッチプレビューと重なるところがあるので簡潔に紹介させていただきます。
 1人目は横山歩夢選手。天皇杯長野県予選決勝ではベンチ入りもすることなく、GWの後半は十分に休息をとってUスタに乗り込んでくることが予想されます。彼の武器は間違いなくその足の速さでしょう。1人でDFラインの裏に抜けても決定的な場面を作り出すことのできる選手で、足元のスキルとシュートテクニックも超J3級の傑物です。この選手の動き出しには特に注意を払わなければいけません。
 2人目は菊井悠介選手です。天皇杯長野県予選決勝マッチプレビューでも紹介した選手ですが、試合が終わってみると得点の起点になったのもやはりこの選手でした。最前線の選手が空けたスペースに下りて、相手の守備組織に隙を与えるのが非常に上手な選手です。この選手に自由な時間とスペースを与えると自分達の守備組織がズタズタにされかねないので、どこまでの自由を許容するのかが重要になってきそうです。

④パルセイロはどう戦うか

 松本山雅FCは天皇杯長野県決勝のメンバーと大きく入れ替えてくるはずで、パルセイロとしては対策がしづらいですが、なんとか乗り切って勝利を掴まなくてはなりません。
 松本山雅FCの攻守の特長と要注意選手を含めてパルセイロがどのように戦うことが想定されるか見ていきましょう。

【攻撃】

・シュートまで攻撃を完結できるか
・中盤で失わない

 天皇杯長野県予選決勝では予想通り、パルセイロがボールを握り、松本山雅FCが機を見て長短のカウンターを仕掛けるといった構図でした。松本山雅FCのメンバーが大きく変わることを考慮しても、この試合全体の構図としてはあまり変わらないかと思います。パルセイロがボールを握り、堅牢な守備組織を固めた松本山雅FCが守って即カウンターを狙うでしょう。
 先週のメンバーと比べて大きな変更がありそうなのは松本山雅FC側ですが、先週のメンバーとリーグ戦のメンバーでの大きな違いはプレー強度だと思っています。特に後方の3バックに入ることが予想される宮部選手、大野選手、常田選手はそれぞれ地上戦、空中戦という明確な武器があるため、攻略は簡単ではないでしょう。また、ボランチに入るであろうパウリーニョ選手、私はこの選手がいるかいないかで大きく松本山雅FCの守備強度は変わると思っています。中盤の底で強度の高い守備を見せ、的確に相手のプレスをいなすような展開ができる選手なのでこの選手が抑えるバイタルエリアを攻略することも至難の業と言えるでしょう。
 守備強度が1段階から2段階上がることが予想されますが、パルセイロとしては攻撃をシュートで完結させる意識が重要になってくるでしょう。なぜなら、松本山雅FCの明確な武器はカウンターです。フォーメーションが崩れた状態の相手の守備組織を急襲し、瞬く間にゴールを奪うという戦い方が得意なチームですから被カウンターの場面をできるだけ作らせないということが勝利のためには必要になってくると考えています。そのためには、ボールを握る展開だった場合、攻撃をシュートまでやり切って完結することと中盤でのパスミスなどでボールロストしないという課題が挙げられるでしょう。ここをクリアしていけば、必然的にチャンスも増えるでしょうし、得点という形にも現れてくると思います。

【守備】

・同サイド圧縮を完遂できるか

 正直この試合の守備に関しては普段以上に攻撃の質が関わってくるところになるので多くは求めません。パルセイロの守備組織の強力なところは相手の前進をサイドに誘導して、狭くなったスペースで相手をすり潰すかのような圧縮が特長です。その反面、1人でも遅れて圧縮しきれずに逆サイドに逃げられると一気にピンチになります。
 「それならそんなゲリラ戦仕掛けないで満遍なく守ろう」
 それができたら全クラブ失点しません。圧縮が完遂できなければピンチを迎えるし、満遍なく守ろうとすれば隙間を縫って攻め込まれる。サッカーはいくつものトレードオフとジレンマと戦いながら0.001%でも勝率を高めることが必要なスポーツです。
 相手はおそらくパルセイロの高いDFライン設定の裏を執拗に狙ってくるはずです。鋭い攻撃を弾き返してできるだけ自分達の時間帯を作り、その中で得点をすることが、最大の防御とも言えます。普段以上に攻守の入れ替わりにおける重要性が求められる試合なので、一瞬たりとも気は抜けません!

まとめ

 天皇杯長野県予選決勝で敗北し、このまま終わって良いわけがありません。収容人数上限近い観客が来場することが予想されます。長野の誇りを見せつけるのにこれ以上ない環境が当日は用意されているはず。チームと会場が一つになって最大のライバルチームを倒しましょう。
 また、信州ダービーとしても負けられない一戦ですが、昇格を目指す中でこれ以上上位陣に勝点差をつけられるわけにはいきません。自力で上位陣の勝点を削ぐ前半戦ラストチャンス、是が非でも勝点3を奪い自力での逆転チャンスを残しましょう。
 勝点3を奪い、先週出された“KING OF 信州”の横断幕を下げさせ、1週間の短い天下だったと思い知らせましょう。勝つのはオレンジ。俺たちが長野だ。

関連記事


よろしければサポートお願いします! アウェイ遠征費やスタグル購入費に使わせていただきます🦁