見出し画像

【マッチプレビュー】2022 J3 第19節 カマタマーレ讃岐vsAC長野パルセイロ

再び因縁の地へ

 2022シーズンのJ3リーグもいよいよ後半戦が始まり、各地で熱い熱い戦いが繰り広げられています。パルセイロは後半戦ホームゲームでスタートし、3-2の大逆転勝利を飾ることに成功しました。相手は当時6連敗中のテゲバジャーロ宮崎ということもあり、前半で0-2のスコアとなった時はサポーターからすると絶望的な状況だったかもしれません。しかし、チームは勝利を諦めず、後半開始から攻勢を強め45分間で3点をもぎ取り勝点3を積み上げました。
 7月に行われた試合では、3勝1分と4戦負けなしと勢いを徐々に上げつつあるパルセイロ。今季初の3連勝がかかったタイミングで、因縁の讃岐アウェイに臨みます。
 パルセイロ史上最もJ2に近づいた一戦で、希望を打ち砕いた相手の本拠地ではもう二度と負けたくないという思いが強いです。いつまで過去にこだわるのかと思われるかもしれませんが、それだけ希望に満ち溢れた試合であり、それだけJ2の壁を感じた試合でもあったのです。
 7月を負けなしで終える・3連勝・5戦負けなし・因縁の地と勝利にさまざまな意味合いが重なるこの試合で勝点3を奪取しましょう。

通算対戦成績

 パルセイロはこれまでカマタマーレ讃岐に対してJ3通算5勝2分0敗を記録しています。そう、"J3リーグでは"負けなしなのです。2014年の入れ替え戦以来、公式戦で敗北したことはなく、J3の厳しさを伝える教官ポジションに立っています。…そこまで勝てる相手に対して、勝負どころの1回で負けるなよ、というツッコミは聞こえなかったことにします。過去じゃなくて今で戦う。そんな都合の良い解釈で乗り越えましょう(笑)。
 そして、前回対戦のマッチレビューでも触れましたが、カマタマーレ讃岐とのアウェイゲームはJ3で既に3回あり、3戦3勝。カマタマーレ讃岐に1つも勝点を与えていないのが現状です。皮肉にもJ3リーグでの対戦になってから相性の良いスタジアムで4戦4勝と記録を伸ばすことができるのか。今節も2014の涙がパルセイロ戦士に力を与えるのか。勝利を期待せざるを得ないデータが揃っています。
 しかし、逆にカマタマーレ讃岐の立場からするとそんな屈辱的なことはありません。ホームで1つも勝点を重ねられていない相手に対してこれ以上負けることは許されないはずです。これまでの3敗を反骨心というエネルギーに変えて全力で勝点3を奪いにくるでしょう。
 意地と意地のぶつかり合い。一方的な想いかもしれませんが、讃岐の地で行う「カマタマーレ讃岐vsAC長野パルセイロ」では絶対に勝たなくてはいけないと思っています。それが、2014の忘れ物であり、この地での勝利を糧にJ2に上がることでしか解消されないものだからです。

今季これまでの両クラブ

7月25日時点順位表(基本:第18節終了)

カマタマーレ讃岐

 まずはホームチームのカマタマーレ讃岐。今季18試合を消化して5勝2分11敗で勝点17、暫定15位に位置しています。
 7月に入ってからの成績は1勝3敗、7月頭のY.S.C.C.横浜戦を最後に勝点から見放されて現在は3連敗中と厳しい状況です。第2節で今季初勝利を収め、一時はFC岐阜との対戦に勝利し3戦負けなし&連勝を達成するも、直後に5戦勝ちなしと浮沈の幅が大きいシーズンになっています。その後は接戦を勝ちにつなげる強さも見せますが、連勝は出来ず順位表のボトムハーフに止まる形になっています。
 基本的に今季のJ3のゲームでは勝っても負けてもロースコアな展開が多く、いわきFCや松本山雅FCに対してもその特徴が発揮されているので、全体的に堅い試合になることが想像できます。

第18節までの順位推移

 前節までに今季2度目の3連敗を喫したカマタマーレ讃岐ですが、今季は4連敗の記録はなく、折り返し地点でその記録を作ってしまうわけにはいきません。試合数が各クラブ揃い出してからはボトムハーフに沈む期間が続いており、1つでも順位を上げていくためにこれ以上の連敗は避けなければならないでしょう。

AC長野パルセイロ

 次にアウェイチームのAC長野パルセイロ。今季18試合を消化して8勝6分4敗で勝点30、暫定7位に位置しています。
 7月は4戦3勝1分と負けがなく、調子を上げつつあるパルセイロ。しかし、7月はパルセイロ以上の順位につけるクラブも基本的に調子を落とさず、勢いのまま勝点を積み上げています。その影響で順位表上での大きなジャンプアップは確認できず、まだ中位集団の一部といった印象を受けます。上位集団が基本的に順位の下のクラブに勝点を取りこぼさないことを考慮すると、パルセイロは勝ち続けなければ、昇格に赤信号が点灯する状況です。他クラブ同士の対戦は、自力で結果を動かすことができないため、自分達の目の前の結果にこだわり一戦一勝を継続していく必要があるでしょう。
 上位陣の勝点を自力で削るチャンスが到来する前に自分達の勝点を失ってしまっては本末転倒。必ず来る上位進出のチャンスを虎視眈々と狙い、地道に確実に勝点3ずつ積み重ねることが、最終的に順位表の上2つに入る鍵になるでしょう。

第18節までの順位推移

今節の注目選手

カマタマーレ讃岐

 今節、カマタマーレ讃岐の注目選手に挙げるのは松本孝平選手です。
 今季から加入したカマタマーレ讃岐新ストライカーで、今季これまで6得点を記録し、チームの攻撃を牽引する活躍を見せています。前節のFC岐阜戦でも得点を重ね、第7節以来のゴールとなりました。第7節というと終了時点でカマタマーレ讃岐は8位に位置していて、今季の最高順位となっています。このことからもチームの浮上のためには松本選手の攻撃面での活躍が必要であることが伺えます。前節、久しぶりに得点しましたが、その後勝ち越しを許してチームは負けてしまいました。ただ、個人としての自信は間違いなく取り戻しているでしょうし、調子を上げてくると厄介なFWと言えます。
 前回対戦では、パルセイロの対松本選手策として実行された3バック(5バック)を前に空中戦で主導権を握ることができませんでしたが、今節はどのようにパルセイロDFラインに勝負を仕掛けてくるでしょうか。パルセイロは喜岡の移籍により、前回対戦のような対空作戦をとることは難しいように思えます。この変化に対して強かに対応し、得点を狙ってくる彼にゴールを許さないことが重要です。

AC長野パルセイロ

 今節、AC長野パルセイロの注目選手に挙げるのは山本大貴です。
 今季から加入した、パルセイロの中では年長組に属するストライカー。J1、J2と数々のクラブを渡り歩いてきた経験がもたらす影響は非常に大きいと最近の試合で実感しています。
 その特徴は何と言っても繊細なファーストタッチでしょう。移籍後初得点を挙げた第17節では4-2-3-1のトップ下として起用され、DFラインからの預けどころとして活躍しました。難しい浮き球の処理であっても、天性のボールフィーリングでコントロール下に置き、仕掛け・展開と何でもできる選手です。第16節から3試合連続でヘディングから得点に絡んでいることも彼の空間認識能力・ボールフィーリング・空中での姿勢維持の能力の高さが伺えるでしょう。
 今季開幕前には怪我での離脱もあり序盤戦は十分な出場機会がありませんでしたが、徐々に能力の片鱗を見せ、今では欠かせない攻撃の中核と言える存在です。宮阪とのホットラインの調子も良好のようで、3試合連続得点に期待がかかります。

前回対戦の振り返り

 ここで前回対戦の大枠を振り返っていきましょう。
 試合結果は3-1でパルセイロの勝利。前半のうちにパルセイロが3得点を奪い主導権を完全に手中に収めると、後半に1点を返されますが危なげなくリードを守り切って勝利しました。
 パルセイロはカマタマーレ讃岐の3-5-2というシステムに対して、今季初めて3バックを採用し見事に対策を講じました。3-5-2のミラーマッチを仕組むことで相手のWBをマンツーマンでマークでき、空中戦勝負に強みのあるCF2枚に対しては空中戦で強みのある3バックで対抗し完全に機能不全に陥らせました。今季のパルセイロ特有の相手の攻撃をサイドに迂回させるブロック形成からWBの1vs1に持ち込ませ、苦しい体勢での放り込みには2vs3の数的優位で勝つというプランが完全に遂行されました。個人的に「こうも配置で相手の良さを消せるのか」と非常に勉強になった試合でした。
 当時カマタマーレ讃岐が弱点としていたセットプレーから2得点を奪い、エースポジションの宮本が得点、失点もカウンターからの1点と内容・結果ともに完勝だったと言えるでしょう。お互いに前半戦を戦い終え、後半戦に突入しての再戦。どのような熱い試合が展開されるか楽しみです。

前回マッチレビュー

試合の注目ポイント

新しい配置

 今節の試合の注目ポイントは配置の利を手にするのはどちらかという点です。前項で言及したように試合前の作り込みの部分からシュタルフ監督の思い通りになった試合だったと思います。相手の長所を封じ、短所を突いて快勝する、これ以上ない勝ち方だったかと思いますが、この再現をするのが難しい状況だと考えます。
 大きな要因は喜岡の移籍に関する影響です。前回対戦ではヘディングの強い喜岡・秋山・池ヶ谷を並べてカマタマーレ讃岐2トップに対抗しましたが、喜岡がいないということで配置の再現性は希薄になっていると思います。前回対戦の戦い方を踏襲するとすれば、秋山と池ヶ谷に加えてヘディングに強い選手を3バックで並べる可能性が高いです。しかし、杉井・敷田・船橋といった3バックの一角に入りそうなDFは軒並み身長が180cmに届かないサイズです。この中で空中戦に強い印象があるのは船橋ですが、前回対戦では船橋を攻撃時に4-3-3のRWGとして可変するシステムを採用していました。3バックに船橋を入れるとするならこのタスクを他の選手に託さなくてはいけません。
 このように、喜岡の移籍がもたらした影響は大きく前回対戦の配置を完全再現することは難しいでしょう。ただ、シュタルフ監督は元々システムありきの監督ではなく、選手の個性を勝つために全力で生かす監督なので新しい対カマタマーレ讃岐策を実行するはずです。この辺りにも注目して観戦してみてはいかがでしょうか。

まとめ

 ここまで2022 J3 第19節 カマタマーレ讃岐vsAC長野パルセイロのマッチプレビューをしてきました。
 連敗中のホームチーム、連勝中のアウェイチームとお互いの勢いは対照的ですが、サッカーは試合が始まって終わるまで何が起こるかわかりません。前半戦で完勝した相手であっても、簡単に勝てるリーグではないのです。ましてや、前回対戦で講じた策が人員的に再現が難しいということもあり、前回対戦の踏襲というわけにもいかないのが現状です。
 前節、6連敗中の相手に0-2という絶体絶命の状況から3-2とひっくり返す強さを見せましたが、今節は連敗中の相手に試合の入りからどう立ち向かっていくのか。試合の入りの出来が勝負を分ける事は、すでに行われた18試合でなんとなく想像がつきます。
 前半戦の甘い記憶は一度胸の奥にしまって、J2昇格を目指すライバルとしてフラットに全力で勝利を目指さなければ勝点3を得る事はできないでしょう。勢いがつきそうな今だからこそ、余計に厳しく"ORANGEの志"に矢印を向けて戦っていきましょう。

獅子よ、千尋の谷を駆け上がれ。

よろしければサポートお願いします! アウェイ遠征費やスタグル購入費に使わせていただきます🦁