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【マッチレビュー】2022 J3 第18節 AC長野パルセイロvsテゲバジャーロ宮崎

殴り勝つ

 7月24日、長野Uスタジアムで行われた2022 J3 第18節 AC長野パルセイロvsテゲバジャーロ宮崎の一戦は3-2でホームチームが大逆転勝利を収めました。私調べですが、パルセイロがJリーグに参入して以降、2点ビハインドをひっくり返して勝利するのは初めてのことでした。後半戦第1試合という節目の試合で、勢いをつける大逆転勝利ができたことはチームにとって非常に大きな好材料になったかと思います。
 コロナウィルスの感染拡大が全国に拡大し、J3リーグでも試合中止が増え出しています。その影響もあって、全チームの消化試合数が再びズレ出してしまいましたが、各チーム各選手健康でシーズンを走り切ることを祈るばかりです。
 全国的な感染再拡大を受けて、来週の各試合が行われるかも不透明な状況ですが、どんな逆境にも立ち向かわなければなりません。大逆転勝利を収めた勢いがあることは良いことですが、その前の複数失点や前半で取り返せなかったことについても振り返って改善していかなければ、浮上していくことはないでしょう。チームが次の試合に照準を合わせるように、パルセイロファミリーも今節を振り返り、来週に向けて"One Team"・"Grow Everyday"で進んでいきましょう。

前半

 第11節で対戦した時は両チーム共に4-1-2-3を採用して試合に入りましたが、今節はお互いに4-2-3-1のシステムだったかと思います。テゲバジャーロ宮崎はわかりやすく攻撃で4-2-3-1、守備では4-4-2という形でしたが、パルセイロのシステムは若干変則的な形で読み取るのが難しかったです。厳密に言えば、4-2-3-1のようで4-3-3のような形でもありました。
 お互いに絶対的な主力であるCBを移籍・離脱という形で欠いた状態だったことも戦い方の変化という側面で影響を与えたかもしれません。

ワンチャンスを沈める

 前半のスコアは0-2と数字だけ見れば、完全に相手ペースと思ってしまいますが、スコアほどのやられている実感は感じない前半だったかと思います。
 1失点目はなかなかに際どいファウル判定からのFKが起点でした。大内の立ち位置的に完全に中央へのクロスを読んだ対応でしたが、小川選手の駆け引きが一枚上手でした。中央へ合わせることを匂わせつつ、直接ゴールを狙って先制ゴール。シュートコースとして厳しいものではないと感じていますが、ボールスピードは完璧。完全に大内の逆を突く素晴らしいFKだったと思います。
 あの位置での守備対応としてFKを与えてしまうのはどうか、という指摘もあるかと思いますが、9割方個人戦術での修正が可能な失点で悲観するものではないと感じました。もちろん、先制点を取られると難しくなる側面も大きいので、事故失点のような形は減らしていきたいところではありますが…。ここは、"Grow Everyday"の材料としてGKコーチを中心にセットプレーの守備対応の練度を上げていって欲しいと思います。

 2失点目は完全にカウンター一閃といった形。個人的にリスク管理がずさんな状態だったとは一概に言えないと感じており、相手に運があったゴールとも言えるのではないでしょうか。薗田選手の突破に対して、池ヶ谷も反応できていなかったわけではないですし、シュートコースも消せていました。しかし、数センチのずれが結果的にシュートにドライブ回転をかけることになり、ゴール左隅に吸い込まれてしまいました。
 GKとしてはディフレクションもあり、タイミングがずれている+コースが際どいという点でノーチャンスでした。元々CBを務めていた立場からしても、ああいったゴールが一番悔しかったです。足を出すタイミング・足に当たる角度・相手との距離、どの要素でも数センチのずれが失点する・失点しないに関わってきます。止めたはずなのに…とCBからしたら感じるゴールだったと思うので、前半の失点に関しては運が味方しなかったと感じました。

攻撃の狙い

 前項で失点について「運がなかった」と結論づけましたが、運で勝敗が全て決まってしまうようでは困るのです。サッカーはジャッジをするのが人間だったり、競技規則の運用でグレーゾーンがあったり、そもそも扱いづらい足でボールをコントロールしたりと不確定要素が多いスポーツです。しかし、最後の結果を分けるのは運かもしれませんが、得点を奪うためにはその運を引き寄せる確率を上げなくてはなりません。
 「(SBから)相手のSBの背後へ」という意識が試合を通じて強く感じられ、その急所を起点にするような攻撃回数が多かったかと思います。おそらくテゲバジャーロ宮崎がクロスから多くの失点を喫していることを突き止め、その弱点を突くための起点作りだったのでしょう。

 クロスからの守備が弱点であることに加えて、前節CBの代選手が負傷したことで4バックは比較的急造の組み合わせ。普段のスライドに比べれば、より間が開きやすく、サイドに起点を作りつつ中央のスペースを生かす狙いが見事に刺さっていました。前半から3度ほど作り出せていた宮本の決定機は、その狙いがうまくはまった結果であり、そのうち1つでも得点につながれば…と感じるところでした。
 今季のパルセイロは逆転が苦手ではないことはわかっていましたが、さすがに2点ビハインドは小さくない差で、前半で差を縮められなかった段階で苦しい状況になりました。

後半

連続性が生んだ得点

 後半に入り、昇格戦線に食らいついていくためには少なくとも3点が必要になったパルセイロ。前半のプレーから1段階も2段階もギアを上げた攻撃を見せてくれました。
 流れを引き寄せる後半開始早々の1点目は、杉井の連続性から生まれた素晴らしいゴールでした。自陣から相手陣内の宮本に差し込み、自身は60mほどの全力ダッシュ。宮本が溜めを作って、スルーパスを出すと前には広大なスペース。得意の左足のクロスから佐藤の頭にドンピシャクロスという流れでした。前線の選手に差し込んだ後に、連続してボールホルダーを追い越していく走りがこの得点を生みました。
 2点目は宮阪の中央へのパスが引っかかったところからカウンターの芽を水谷が摘んで連続した二次攻撃につなげます。右サイドの佐藤に展開して絶妙なクロスに合わせたのは山本。ここでも攻撃を途切れさせない連続性が相手の組織に修正の暇を与えず、追加点を奪うことにつながりました。
 3点目はGKスローから杉井にボールが渡り、再三狙いとして持っていた相手DFラインの裏に外側からスルーパスを入れます。ここに連続して山中とデュークがプレッシャーをかけ続け相手のクリアミスを誘発。シュートまで持っていったデュークはもちろんのこと、マイボールになると信じて押し上げ続けた藤森のランニングも素晴らしかったです。
 このようにいずれも連続したプレーから得点を奪ったパルセイロ。2点ビハインドという難しい状況から勢いを武器にひっくり返してしまいました。きっかけとなった要所要所での連続したプレーが評価できると同時に、杉井を中心に急所を狙い続けたこと、水谷のセカンドボール回収が得点に繋がったこと、いずれも試合を通して点差に関係なく連続して継続できた結果だったのではないでしょうか。

変則システム?

 見事な逆転勝利を掴んだパルセイロですが、特に調子が上がった後半からシステムが把握しづらいポジショニングに思えました。

 ボール保持の場面では、相手の前線4枚でのプレッシャーに対して水谷と宮阪がボールを引き出せるギャップの位置に立ってプレスを回避し、前線の3枚は近い距離感で裏を狙ったり、ポストプレーをしたりという印象でした。この構図だけ見ると4-1-2-3に近い要素もあると思うのですが、それにしては佐藤の位置が外寄りでIHというよりSHに近い位置どりだったようにも思えます。アンカーを置いて"へその位置"を抑えているというよりは流動的に宮阪と水谷が引き出して…というような印象だったため、4-1-2-3と言い切ることが難しいです。

 この守備配置は特に前半ですが、比較的距離感が整頓された4-4-2のブロックを固め、そこからボールホルダーであるSBなどにプレスをかける場面が見られました。4-4-2のダブルボランチだったからこそ2失点目のようなラインブレイクのされ方だったのかとも判断できますし、攻守で配置したい場所が異なっていたようにも思えます。

 61:00頃のピンチシーンで見られた選手の立ち位置では5-2-3の撤退のようにも見えます。鍵となる選手は佐藤。仮に4-1-2-3や4-4-2の撤退守備であれば、1列高い位置で宮阪とのギャップを狭める必要があるはずです。それを行わずに攻撃時RSBである船橋の外側に立つということは、WBのようなタスクであったのかもしれません。原理原則が大きく変わったわけではありませんが、新たなパルセイロを見たような気分です。

まとめ

 後半戦巻き返しのために一度の引き分けすらブレーキになる状況で、前半を0-2で折り返したことでの難しさは計り知れません。しかし、チームが目の前の試合の勝利に最大限集中していた結果がこの逆転劇を生んだと思います。「目の前の勝敗にこだわる」簡単なようで一番難しいのは、選手もサポーターも同じです。この積み重ねが昇格という果実を結ぶように全力で応援していきましょう。
 また、大逆転勝利でも危なげない3-0の勝利でも得られるのは勝点3であり、それ以上でもそれ以下でもありません。目の前の試合の勝敗、もっと言えば目の前のデュエルの勝敗にこだわることがシーズン全体の結果につながります。"昇格に向けて"落とせない試合が続くのではなく、"長野の誇り"のために落とせない試合が16試合残っていると考えたらどうでしょう。より集中して目の前で躍動する選手たちと気持ちを一つに戦えるはずです。
 次節は今季初の3連勝をかけて因縁の地である讃岐アウェイに乗り込みます。この正念場で因縁の場所が開催地というのも何かの縁でしょうか。試合が始まってしまえば、過去も未来も関係なく、あるのは目の前の勝負のみ。次節は試合開始からエンジンフルスロットルで相手を圧倒しよう。今季初のシーズンダブルと3連勝を因縁の地で掴み、追い風を自分たちで呼び込もう。

獅子よ、千尋の谷を駆け上がれ。

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