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インタビューをどこで撮るか  ~場所と背景の選び方~

番組や映像コンテンツの制作において、インタビューは大変重要な要素になります。
人物の生き方や考え方を描くにせよ、社会の事象を表現するにせよ、インタビューによって伝えるメッセージにリアリティと説得力が加わります。

インタビューを上手に取るコツは別記事で紹介していますが、ここではインタビューをどこで撮ればよいか、どのような背景で撮ればよいかについて記していきます。

場所や背景から見るインタビューの3類型

撮る場所や時間を考えた時、インタビューには大きく次の3つの種類があります。
1、時と場所に意味を持たせない「普遍型」
2、時は選ばないが、場所に意味がある「空間型」
3、その時その場所で撮ることに意味がある「瞬間型」
この3つに分けて、それぞれどのように場所や背景、時間を選び、どのような点に気をつけて撮ればよいかを解説していまきす。

1.時と場所に意味を持たせない「普遍型」

例えば、人物の人生や考え方をじっくり聞く時などが、このパターンに当てはまります。
映像作品全体のどのシーンのどの位置で使うかは、編集次第で変わり得るインタビューです。
多くの場合、10分、20分、場合によって数時間にわたるロングインタビューになることもあるタイプです。

「普遍型」のインタビューは、時と場所に大きな制約はありません。しかし可能な限り次のような条件を満たす場所を選ぶと、良い素材を撮ることができます。
①周囲の音の変化が少ない静かな場所
「普遍型」のインタビューの第一条件は、声がきれいに録れることです。
多くの場合、このインタビューは音優先で編集します。10分50秒の声と14分30秒の声をつなげて編集するといったケースも多々あります。
また、声だけを使って別の映像をインサートするという手法もしばしば使います。
そうした編集ができるようにするためには、音の環境が一定で静かな所で撮った方が、編集した時の音の違和感が少なくなります。
できる限り室内で、静かな場所を選ぶのが良いでしょう。

②背景に強い意味がない場所
「普遍型」のインタビューは、編集時にどのシーンで使うか分からないため、どんなシーンに入ってもなじむように無機質な背景の方が良いです。
例えれば、どのようなパンツや上着と合わせてもコーディネートしやすい白シャツのようなものです。
最も無難なのは、黒や白、薄茶色など彩度の低い壁面を背景にすることです。また書斎や会議室といった場所でも良いでしょう。

2、時は選ばないが、場所に意味がある「空間型」

「空間型」は、今日でも明日でも撮ろうと思えば撮れるが、その場所で撮らないと意味をなさないタイプのインタビューです。
リポート番組や旅番組に多く見られるタイプです。
例えば次のようなインタビューは「空間型」です。
A.城の天守の内部構造を、学芸員に案内し解説してもらう
B.子供の頃遊んだ公園で、そこにあるブランコの思い出話をしてもらう
C.ラーメン屋の店内のキッチンで、実演してもらいながら秘伝のラーメンの作り方を教えてもらう。
いずれも、その場所と密接に関わる内容の話をしてもらうので、その場所でなければ意味がないインタビューです。

「空間型」の場合、音への配慮の仕方は「普遍型」とやや異なります。
このタイプのインタビューは、声が明瞭に録れるに越したことはありませんが、その場所ならではのノイズにも意味がある場合があります。
例えばCのパターンの場合、ラーメンを茹でたり具材を切ったりする音などは、インタビューにリアリティを持たせてくれるので「あった方が良い」音と言えるでしょう。
一方でインタビューの内容に直接関係のない音、例えば店に流れている有線ラジオの音楽などは、消してもらった方が良い音と言えます。

また「空間型」のインタビューは、「普遍型」と異なり、その場所にも情報性があります。人物を撮る時も、どのような場所にその人物がいるのかが分かるルーズショットや、話の内容と関わりのあるインサートカット〔Aなら城の内部、Bならブランコ、Cなら調理の手元アップ〕などを必ず撮っておくようにしましょう。

3.その時その場所で撮ることに意味がある「瞬間型」

「瞬間型」は、まさに1分1秒を争って、その時その場所で撮るインタビューです。
例えば、スポーツの試合での勝利者インタビューや、ライブが終わった後の舞台袖でのプレイヤーへのインタビューなどが、これに相当します。
この手のインタビューは、言葉の内容だけでなく、その瞬間の人物の感情の高まりが顔の表情や声の調子に表れてきます。そこに意味があるインタビューです。一時間後に撮ったのでは、だいぶトーンが変わってきてしまいます。多くの場合は、「瞬間型」のインタビューは短いインタビューです。
長くても1分、2分。短ければ5秒ということもあるでしょう。
オリンピックで金メダルを取った北島康介選手の「超気持ちいい」などは、「瞬間型」インタビューの典型と言えるでしょう。
このタイプは、瞬発力で撮ることが多く、背景や構図、照明などを吟味している時間はほとんどありません。
細かなことにはこだわらず、とにかくその人物の表情が変わらないうちに、時間をおかずに撮ることが何よりも大切です。

中間型のインタビューも

以上、収録する場所と時間を軸に、インタビューを「普遍型」「空間型」「瞬間型」の3つのパターンに分けて注意点を述べてきました。
しかし、インタビューの中には、この3つの類型の中間的な要素を持つパターンも多々あります。
例えば次のような例です。

▼「空間型」の要素を持つ「普遍型」
 ある社会的立場を背景にしたインタビューの場合、インタビューの内容が普遍的であっても、その人物の立場を表す場所で撮った方が効果が高い場合があります。例えば企業の社長や学校の校長先生のロングインタビューを社長室や校長室で撮る。あるいは、職人のロングインタビューを工房で撮る、といった具合です。インタビューの内容は「普遍型」でありながら、「空間型」的な要素も持つタイプです。

▼「瞬間型」の要素を持つ「空間型」
 「瞬間型」とまでは言えなくても、いつでも良いというわけにはいかない「空間型」もあります。例えばビルの工事現場の様子を語ってもらうインタビューのように、今日でも明日でも似たようなシーンを撮ることはできても、数か月後には工事が終わってしまい撮れなくなってしまうというようなケースです。

このようにインタビューのシチュエーションは多様ですが、そのインタビューで何を目指すのか、また編集でどのように使うことを想定するのかで、場所や時間、背景の選び方が変わってきます。
適切な設定をすることで、インタビューのクオリティが上がりますので、ぜひ意識してトライしてみてください。





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