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イタリアという国名の由来は? 〜イタリアと牛の関係〜

「南イタリアで、仔牛の姿をトーテムポールに刻んで崇拝していた民族がいた。そこから仔牛の大地という意味の国名イタリアが生まれた」
イタリアの大学で教わった国名の由来だ。

しかし私としては、別のストーリーの方にもっと惹かれてしまう。
それはエノトリアという国のイタロ大王の話。
エノトリアと言えば、ソムリエの間ではワインが初めてイタリアに伝わった地として知られ、意味は「ワインの大地」となる。そしてイタロという名前は、現在でも作家イタロ・カルヴィーノがいたり、超特急にも名がつけられていられるように、イタリアではちょっと別格の名前だ。だって国名から出ているんですから。

その大本だったイタロ大王、最初はエノトリアの王だったのが、彼の人徳の下に多くの種族が傘下に入り、領土が拡張していくにしたがってイタロの土地=イタリアと名付けたと言われる。

さらにこの「イタロ」を無理やり訳してみれば仔牛太郎。

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ロマーニャ牛

古代、トラクターなどなかった時代、牛は力の象徴。それに有史以前からイタリア半島には5種類の巨大な野生の牛がいたのだとか。想像してもみてほしい。あの巨体がのっしのっしとの野原を歩いていたとすれば、だれもが畏敬の念を抱くだろう。しかもこの牛たち、3000年後の現在も健在なのですよ。その名は、キアーナ牛、マレンマ牛、マルケ牛、ロマーニャ牛、そしてイタロ王のいたカラブリアのポドリコ牛・・・となると、イタロ大王の父親はこのポドリコ牛を見て名前を付けたのに違いない。
そんなわけで、イタリアという国名の意味は、こちらの説でも「仔牛の大地」。

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ポドリコ牛

さらにイタリアでは、牛に対しての呼び名がなんと6つもある。
料理人以外の方には、興味がないかもしれないが、その名前と内容を紹介すると―

Vitello da latte-乳飲み仔牛と呼び、生まれてから数カ月で、母乳しか飲んでいない仔牛の事。色がピンク色で肉質が柔らかいので最高級品となる。有名なのがピエモンテの「サナート」

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乳飲み仔牛の肉はピンク色

Vitello ―もう少し成長して生後1年まで。肉の色もまだピンク色をしていて、現在イタリアで料理に使われているのがほとんどこのタイプ。

Vitellon-成牛になるまでの間で1~2歳のもの。

↓ここから去勢してあるか無いかで牡牛の名前が変わります。

Manzo-去勢してある牛で18カ月から5年。

Bue-去勢牛の5年以上のもの

Toro-去勢していない2歳以上の牛・・・星座占いではToroと呼ぶ。だから荒々しい感じがするのね。

Bue-2歳以上の牝牛

さらに、
Mucca-乳牛

これはイタリアではチーズ作りが重要な産業だったため、牛との付き合いが深いことに起因する。ついでながら食肉はすべて男性形だという事(イタリア語には男性形と女性形がある)。つまり牡牛は食べるけれど牝牛は子供を産んでミルクを出すので、食べないというわけ。

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キアーナ牛


さて料理に目を移すと、
「ローマ風サルティンボッカ」-仔牛肉にサルヴィア(セージ)を置き、生ハムを貼り付けて焼いたもの。

「オッソブーコ」-仔牛のすね肉を輪切りにして煮込み、真ん中の骨の髄まで食べるミラノの代表的料理。

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「コーダ・アッラ・ヴァッチナーラ」-普通なら捨ててしまう尻尾を香味野菜と共にゆっくりと煮込んだローマを代表する料理。写真はその材料の仔牛の尻尾。

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肉店で売っている仔牛の尻尾。


「フィレンツェ風Tボーンステーキ」-昔は貴族様、それも大金持ちのフィレンツェの方しか食べられなかった逸品。部位はロースとヒレ肉がついているTボーンで、巨体のキアーナ牛の中でもほんの少ししか取れない。

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悠々と歩く太古の牛から3000年、イタリアと牛の密なる関係のお話あれこれでした。




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