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エッセイ033|剥げたマニキュア

マニキュアが好きだ。マニキュアのよいところは剥げていく姿にある。

夏、足の指に塗った赤いマニキュアがまだ残っている。残っているといっても、もう色がついているのは上半分くらいだけだ。
ほんとうは、きれいさっぱり剥がしてしまった方かいいんだろう。摩擦でずいぶん剥がれてしまっている。でも、その剥がれた感じも味があるから、こっそり、そのままにしてしまう。

こどものころ好きだったあるアーティストはマニキュアをした指でギターを弾いた。ギターの弦でこすれるから、いつも指先のマニキュアは剥げていて、でもそれが何ともかっこいいのだ。

そんな原体験があるから、ぴかぴかのマニキュアもすてきだけれど、剥げかけのマニキュアもなんだか別のよさがあるように感じてしまう。爪が伸びてくると露出する透明な部分から、時間の経過が感じられるのもいい。

今、ふとしたときに足元を見ると、爪の先っぽの赤色が目にはいる。まだここにだけ夏が残っているようで、うれしい。


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