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150:友人を退学させた|人生#010

・毎日の鬱備忘録を生み出す思考回路の原体験。
・前回。


・家出したものの、夜遅くだったので公共交通機関も動いておらず、頼るアテもなかった。
・というか財布も携帯も、何も持たずに家を出たので何もできなかった。数時間深夜徘徊しただけであった。

・明け方、家に帰った。

***

・家に帰ると母だけがいた。兄は自分を探すべく街を走りまわっていたらしい。

・母に「なぜ急に家を出た」といった旨の説教をされた。
・細かな内容は覚えていないが、その頃の自分は自分がすべて正しいと思っていたので、母からの苦言のすべてに対し言い返していた。母からすれば「ああいえばこういう」といった感覚だっただろう。

・いくつかの問答をした後、母は大泣きしながら「親に向かって「アンタ」なんか言うな!」と自分の顔を殴った。
・人生で最初で最後の、母からの体罰であった。

・そうして自分はようやく強がりを解き、心の奥底にあった感情をなんとか言葉にして吐き出した。
・高校の部活動で、人間関係がうまくいってないこと。自分の陰口を叩くグループがあること。
・最近の母や兄に対して、他人のように感じていたこと。母と兄が二人で楽しそうに話しているのが羨ましかったこと。妬んでいたこと。

・自分がなぜこの世に存在しているのかわからない、といったことを話した。

・いつの間にか帰ってきた兄はハーゲンダッツの入ったレジ袋を持っており、母と自分のやり取りが落ち着いた後、アイスでも食おうぜと3人で食卓についた。
・どういうやり取りになったか覚えていないが、思っていたことを吐き出したことで落ち着いた気がする。

・余談だが、数年後母は「あの時は何も言い返せなくて、殴ってしまった」と言っていた。

***

・次の日から学校を休んだ。
・母に「しばらく家で過ごそう」と言われ、担任や部活の顧問に事情を話してもらい、体調が優れないという理由で1週間くらいはずっと家にいた。

・日中は何をするわけでもなくただ一人でボーっと過ごしていた。
・その頃は大学生で、毎日講義があったわけではない兄が家にいる時は、一緒に映画を観たりした。
・なぜか『コマンドー』を観た。

・別にその期間で何かが解決したわけでもないが、母と兄はきちんと自分のことを家族と思っていたのだな、くらいには感じた。

・療養期間?を経て登校を再開した。

***

・クラスでは体調不良で休んだことになってたので、席に着くのに特に抵抗はなかった。
・放課後、文化祭の準備をしに地学部の部室に行くのが怖かった。

・怖かったが、顧問が指揮を執ってテコ入れしており、他の部員の協力もあって文化祭の準備は順調に進んでいた。
・問題となった友人は不貞腐れながらも、準備に勤しんでいた。

・もともと「自分は悪い」と思っていなかったので、順調に進んでいたことに安心し準備に一緒に加わった。
・が、もう地学部には情熱がなかったので何となく適当な気持ちで関わり、兼部していた新聞部の校内新聞の執筆・制作と生物部の地域の魚の水族館展示の方に時間を割くようにした。
・そっちの方が楽しかった。人数の問題で、その2つも副部長だった。

・新聞部と生物部の文化祭は無事やり切って終わった。地学部の方はあまり覚えていないが、形にはなっていたのではないだろうか。

・文化祭後、部活のことは後輩に適当に引き継いで(引き継ぐこともあまりなかったが)地学部には顔を出さないようになった。
・しばらくは問題となった元友人が部室によくたむろしていたらしい。

***

・自分はその元友人とのひと悶着を経て「人によって世界の見え方は違う」ということを学んだ。
・親の離婚などで母が弱っている時、周りの大人たちに「しっかりしている」とよく言われていた自分は、いつの間にか「自分の思っていることがすべて正しい」と思うようになっていた。

・これまでの人生で唯一、その元友人だけは今でも思い出すとはらわたが煮えくり返るが、それでも世の中には「他者の視点が存在する」という当たり前の事実に気づくきっかけとなった。

***

・ちょうどその頃くらいから、今でもよく連絡を取るクラスメイトの一人とつるむことが多くなった。
・彼は成績がかなり優秀で、テストでは常に1位だった。
・その上、イケメンでちょいワル(と言っても服装・頭髪検査で毎回ひっかかって指導されるくらいのレベルだが)だったので、同級生から人気な人物だった。
・自分の目からは、スーパースターのように見えていた。

・彼と自分は趣味などで被る部分が全くなく、なぜ仲良くなったかわからないが、彼と話したり遊んだりしたのがとても楽しかったのを覚えている。
・彼の仲良くしている友人ともよく話すようになり、仲間が増え、嬉しかった。振り返るとただいじられていただけな気もするが。

・彼と出会ってから約10年、今でも親友でいれることがとても嬉しい。

***

・一方、地学部で仲たがいした元友人はその半年後くらい、自分の知らないうちに退学していた。
・実際の理由は知らないが、成績が悪く赤点ばかりで留年しかけていたからなどの噂を聞いた。
・だがそもそも、彼と仲の良い人物が一人もいなくなっていたらしく、誰も彼の退学に興味関心がなかった。
・自分がそれを知ったのも、彼が退学した数ヶ月後とかである。

・どうでも良かった。自分の高校時代の青春は、今でもよく連絡の取る親友と築いた。

***

・その後、自分はその親友、また彼を中心としたコミュニティの仲間と共に受験勉強へ挑むことになる。

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