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就職活動について考える【転職編(ただし不動産中心)】

前回の記事では、新卒の就職活動マーケットについて書きました。

今回は、転職市場について書いてみたいと思います。

私がこれまで経験してきた不動産業界における転職市場における特徴についての記述が中心となることをご容赦ください。

その他の業界は私自身、経験したことがないので触れませんが、どこの業界でも本質は同じであると考えます。

不動産業の裾野は広いことから、ここでは大手の総合不動産業及びそのグループ企業をイメージして実際に採用されている人たちの特性などを見ていきたいと思います。

冒頭で述べておきたいのが、転職市場人材マーケット)は、企業と人材のブランドの交換市場であることです。

企業にもブランド価値があるように、人材にも当人のポテンシャルやそれまでの実務経験がその人のブランド価値として形成されていきます。

これをお互い証明しあって、市場価値を交換していくというのが転職マーケットです。

それでは、不動産業界を中心に見ていきましょう。

第二新卒はポテンシャル採用?

新卒で入社後2~3年で会社を辞めてしまう若手が、昭和系オジサンたちから「我慢が足りない」と批判されますが、それはさておき職業のミスマッチがあるのも現実です。

特に、新卒時においては、「働く」というリアルな経験がないままの想像の産物の結果が就職となるので、「こんなはずじゃなかった」現象が最も起こりやすいという特性があると考えます。

昨今は、第二新卒採用ということで、このようなミスマッチ層にも転職の門戸が広がっています。

第二新卒市場では、就労希望者側に就業経験が殆どないため採用基準は、ポテンシャル採用ということになります。

反感を恐れず直球で説明すると、この第二新卒市場は、一つ厳然たる事実があります。

「第二新卒マーケットは、上流から下流への流れしか殆どないこと」

就職偏差値というものがあったとすると、偏差値の高い企業から低い企業への転職が殆どであり、逆に中小企業から大手への移動は困難を極めるという厳しい現実があります。

この点において、下駄が履ける新卒市場で、思いっきり高い下駄を履いておくのが重要とも言えます。

ただし、横移動はありえます

どこまでが「横」かというのは判断が難しいですが、業種のミスマッチというよりカルチャーのミスマッチがあった場合、この横移動は多く見られます。

不動産デべの場合ですと、準大手間の横移動は結構頻繁に起こります

ただし、超大手間は殆どありません

以上のように不動産業界においても第二新卒マーケットにおいては、ポテンシャル+第1社目のネームということが重視される傾向があります。

転職は35歳が限界?

ひと昔前までは、転職は35歳までが限界と言われていました。

最近の傾向として感じているのは、転職35歳限界説が無くなったというより弱まったというほうが正しい認識であると考えます。

不動産人材マーケットについて言えば、次のような趨勢があります。

・転職マーケット自体が拡大し、40代以降の中堅・シニア層も転職するようになった。(積極的、消極的を問わず)

・専業化が強まり、スキルの横移動が可能になった。(特にファンド、AM業界に顕著)

・不動産業自体も裾野が広がり、不動産業務を俯瞰できる人材の価値が従来より高まった。(専業化の影響もあり)

一方、従来にも増して実務経験のある若手層はどの業界でも「引っ張りだこ」となっています。

少子高齢化するという社会構造が進捗するにつれて、実務を担当する若手が圧倒的に不足しているというのがどの業界にも言える現象となっています。

やはり転職市場で一番強いのは、30代前後の第二新卒+αの実務経験を持った人材と言えます。

そういう意味では、35歳転職限界説は形を変えて生きているという感覚を持っています。

転職回数が重なると不利になる?

結論から言うと、相当不利になります。

私の感覚では、1~2年のサイクルで3回程度転職してきた人は、大手企業への就職は難しくなります。

一方で、恒常的に人材が不足している業態においては、このような転職回数が多い人も積極的に採用する傾向があります。

恒常的に人材が不足しているマーケットには二種類あります。

一つは、労働集約的な業態です。

不動産業界で言えば、ビルメンテナンス(BM)業などの管理系、プロパティマネジメント(PM)系のほかに、仲介部門などは「人がいてなんぼ」の商売なので、恒常的な人不足となっており、未経験者でも積極的に採用する傾向があります。

もう一つは、専門的すぎて人材が不足している業態です。

例えば、投資銀行、不動産投資ファンドやアセットマネジメント(AM)業界がこの種に分類されます。

不動産と金融が融合したこの業態では、不動産業界未経験者による採用がそもそも無い業界であり、業界どうしの横移動が頻繁に行われる業態です。

これらの不動産投資ファンド系においては、そもそも退職金の規定がないなど、終身雇用を前提としない代わりに給料を高く設定するという傾向もあります。

一方で、総合不動産会社(デベロッパー)は資本集約的な産業なので、他の業態と比較して人手不足感はマイルドなので、総合不動産会社への転職は、総合不動産会社からの横移動か特別なスキルや不動産関連資格を持った人に限定される傾向が強いです。

各業態の特徴

以上のように全体像を見てきましたが、以下では不動産業の各業態における転職マーケットを概観してみたいと思います。

総合不動産会社(本体)

超大手への転職は、特別なキャリアを持っている人が優先される傾向があります。

例えば、最近は大手不動産会社も新規事業を立ち上げるなど、従来のナレッジでは対応できない分野に参入が増えており、これらの専門的知識を持った人材を採用するというケースも見受けられます。

ただし、まだまだレアケースと言えます。

準大手間ではかなり横移動があるというのも特徴の一つと言えます。

総合不動産会社の特徴として、新卒でも中途でも、本体採用と子会社採用の2パターンがあることです。

一般的に本体採用の給料・就職難易度が高く、子会社採用のそれは低いという傾向があります。(ただし、AM子会社などの専門分野は逆転現象もあり得ます。)

これは、新卒でも中途でも同じです。

不動産会社(仲介)

不動産業界の中にける最大の転職マーケットが存在するの不動産仲介業と言えます。

業界未経験者でも営業センスを見込まれて中途採用されるケースも多いです。

不動産仲介業は、法人・個人の別、取扱い物件別、エリア別と細分化された業態であることから、この細分化された業態間での移動はかなり頻繁にあるという傾向があります。

上記の総合不動産会社(本体)との違いは、横移動だけでなく、意外に上下の縦移動も多いというのが一つの特徴です。

これは報酬体系が終身雇用を前提となっているか、コミッションを重視する形となっているかなどにより、就業に対する価値観によって異なってくる部分もありますので、一概にどちらが上下か言えないという特性があります。

不動産ファンド系

所謂、不動産証券化ビジネスです。

この業態の大きな特徴として、新卒採用が殆どなく、大部分が中途採用であるということです。

不動産証券化ビジネスは、J-REIT、私募リート銘柄の増加により、かなり裾野が広がっている業態であり、人材から見ると売り手市場となっている業態です。

ここでは、不動産投資ファンド(エクイティ)、不動産ファイナンス(レンダー)、不動産アセットマネジメント(AM会社)の3つに大きく分けることができ、この各業態間での移動も頻繁にあります。

これらの不動産証券化ビジネスで重視されるのは、若手であればポテンシャル採用もあり得ますが、年齢を積み重ねていくと実務経験の有無が重要となってきます。

ファンド、AM業界は外資系が多いこともあり、英語ができると高収入のチャンスがある業態と言えます。

ここでの英語能力は、TOEICが最低でも900点程度あり、ビジネスで支障なく英語が運用できる能力です。

また、AM会社には、不動産証券化マスター、不動産鑑定士、ビル経営管理士などを一定程度配置しなければならないなどの要件もあり、これらの有資格者には有利に働くという傾向があります。

不動産管理ビジネス

一口でプロパティマネジメント(PM)業と言っても、傘下にビルメンテナンス(BM)業や清掃業務までを自社で行うか、アウトソースしているかによって様相が異なってきます。

ここでは、不動産投資ファンドに近いプロパティマネジメント会社をPM業、実物の不動産管理を行う不動産管理業をBM業として見た場合におけるそれぞれの業態における転職マーケットの特性を見ていきたいと思います。

同じ管理業で労働集約的な側面がありますが、PM業はより頭脳集約的、BM業はより労働集約的と言える業態です。

不動産PM会社

PM業界は、横移動がかなり起きやすい業態です。

住宅賃貸系、オフィス系、その他専門系と対象アセットにより業界が縦割化されているのも一つの特徴と言えます。

仲介会社出身の人も結構多い印象です。

PM業界の一つの特徴として、AM業界への人材供給源となっている側面があります。

AM業界でもご多分に漏れず若手の人不足が激しく、発注先のPM業の若手社員を引き抜くケースも散見されます。

一般的に、発注者AM業、受注者PM業との力関係であり、またAM業のほうが給料水準が高い傾向があるため、このような転職が起こりやすいという傾向があります。

不動産BM会社

BM業は、労働集約的な事業であり、とにかく人不足の業界です。

業界未経験者の採用が多いというのも一つの特徴です。

この業界においては、発注者であるオーナーやAM、PM会社から指示されたことに対して誠実に答えていくというヒューマンスキルが重要視されるため、就職の面接では人柄が重視される傾向にあります。

以上、ざくっと不動産業界における転職マーケットを眺めてみました。

転職マーケットでも最も重要なのは、スキルよりも何より、その人の人柄であることは間違いないです。

これはどの業界でも共通です。





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