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晴れの日も雨の日も#206 【創作SS タケおじシリーズ#3】トンボとしあわせ

タケシくんとおじいちゃんが河原で散歩をしている。

「おじいちゃん、ようけトンボ飛んでるなあ」
「ほんまやなあ。でもこのトンボたちも冬には
 おらんようになるんやで」
「そういえば、あんだけ鳴いてたセミも
 おらんようになったしな」
「トンボもセミも短い一生じゃのう」
「トンボやセミってそんな短い一生で
 しあわせなんかしら」
「わしはトンボやセミじゃないから
 わからんのう。タケシはどう思う?」
「ボクもわからん。
 そもそもしあわせって何なんやろ」
「トンボやセミは別として
 タケシは今しあわせか?」
「しあわせかどうかわからんけど、
 毎日機嫌ようやってるで。
 ご飯はおいしいし、じいちゃんと話するのも
 楽しいし、友達もおるし」
「そうか。そりゃよかった。
 それこそがしあわせというもんかもなあ」
「ボクの友達にタカオくんっておんねん」
「ふむふむ」
「その子、外車がとまってる大きい家に
 住んでんねん。
 ほんで、勉強もスポーツもようできんねん」
「ほうほう。そりゃすごいなあ。
 みんな持ってるっちゅうやつじゃのう」
「ほんでも、その子、おもろないって言うねん」
「ほうほう。そりゃまたどうしたわけじゃ」
「テストで95点とっても100点ちゃうから
 喜ばれへんし、野球でヒット打っても三振した
 ことが頭から離れへんねんて。
 ほんで、何より、塾や習い事で友達と遊ぶ
 ヒマもないんやって」
「そうか。ほんで今の暮らしに
 満足できないんか」
「じいちゃん。トイレに「幸せはいつも自分の
 心が決める」って貼ってあるやん」
「うんうん。相田みつをの言葉な」
「これって、こういうことなんかな」
「そうじゃのう。そうかもしれんのう」
「ほんなら、毎日機嫌ようすごしてるボクは
 やっぱり幸せいうことかな」
「そりゃ結構なことやないか。
 ま、タケシの年やと、幸せとか人生とか、
 若年寄みたいにわかったような気にならんと、
 何かに血をたぎらせるように夢中で取り組む
 ことも必要じゃがな」
「うん、そのうち、何かそんなもんに
 出会うやろ」
「それに恋もしないといかんしのう」
「うん、それもそのうち出会いがあるやろ」
「そうじゃのう。トンボやセミでも子孫を残して
 いくんやから、タケシもいつかは子孫を
 残さんとな」
「そんなん、今は多様性の時代やから
 押し付けんといて」
「そうじゃな。タケシが自分で考えて決めたら
 ええことじゃ。」
「ボク、さっきの答えちょっとわかった気が
 する」
「トンボのしあわせか?」
「そう。トンボは何も考えんで空飛べることが
 しあわせなんとちゃうかな」
「そうじゃのう。いろいろ考える人間より
 しあわせかもしれんのう」
「より良く生きるためにひとは考えるんやろ?
 でも、考えることがしあわせにつながらん
 こともあるんかなあ」
「うーーむ。どうなんじゃろうなあ。。。」

(森沢明夫著「夏美のホタル」にヒントを頂きました)

西宮御前浜にて。私のお気に入りの場所です。

今日も最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました♬ 長井 克之

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<予定(但し、臨時差し替え頻発😂)>
#207 人生を形作る
#208 【創作SS タケおじシリーズvol.4】たかいたか〜い
#209 野良

(つづく)

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