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晴れの日も雨の日も#174 【創作SS】ある日の定時後

もう夜の7時を回った。
営業マンは外出直帰や、嫁サン孝行で早々に帰宅済み。誰もいない。フロアには女子社員が一人残って頑張っている。SDGzかなにか知らないが、フロアの電気も半分消されてしまい、なんともさびしい風景だ。
オレが残っていても彼女の仕事の助けにはならない。が、かといって、お先に、と知らん顔することもできずにいた。ついに思い余って声をかけた。

「7時回ったよ。そろそろ終わりにしない?」
「もうちょっとだけ。課長、どうぞ先にお帰り下さい」
「(そう言われてもなあ)
  ま、あとは明日でいいって。喉乾いたしビール一杯付き合ってよ」
「え〜〜〜」
「まあ、たまにはいいじゃん」

ということで二人で会社を出た。今にも雨が振りそうな夜空だった。

「なに食べたい?」
「わたし、お好み焼きが食べたいです」
「お。いいねえ。行こ行こ」

沈んだ感じの彼女と話をするには、鉄板がジュージューと音を立て、手を動かしながら飲み食いするほうがいい。オレは駅チカのお好み焼き屋に彼女を案内した。

「最近、毎日遅いねえ」
「はい、すいません。私要領が悪くって」
「いやいや、別にそんなこと思ってないよ」
「はぁ〜〜〜」
「なになに?なんか悩みでもあるの?」
「なんか、うまくいかないんですよね〜」
「うん?なんか最近あんまり笑顔がないなあと思っていたんだけど?」
「同僚のAさんが結構きつく当たって来るんですよね」
「ふむふむ、Aさんか。まあ、そういうとこちょっとあるかな」
「でしょでしょ〜。もう私、限界なんです。
 課長からビシッと言ってもらえませんか」
「よっしゃわかった。オレが何とかする。心配ご無用。
 だから、パーッと飲もうや」
「えー、ホントですか。嬉しい!
 そう言ってもらったら私なんだか気が楽になっちゃった」

彼女は笑顔と明るさを取り戻し、二人でさんざん飲み食いしてゴキゲンになった。

「よかったなあ。元気になって」
「はい課長!今日はお話させて頂いて良かったです!」
「その笑顔なら、堂々とAさんにぶつかっていけるよ。
 ドア開けられるよ。」
「えー、でもそれはオレがやるから心配するなって
 言ったじゃないですか」
「いや、もちろん、オレもやるよ。
 ところでこれって元々は誰の問題だったっけ」
「えー、、、、、それは、、、私ですけど、、、」
「だよね。でも、あなた一人では難しいんだから、
 一緒に向かっていこうよ」
「えー、さっきのオレに任せとけって、ウソだったんですか?」
「ウソじゃないよ。
 ちゃんと二人で乗り越えられるようにオレも全力を尽くすよ」
「そうなんですか。なんか、だまされたみたい。。。」
「大丈夫。だって店に入る前と今とであなたは別人のようだよ」
「それはまあそんな感じしますけど」
「今のあなたなら大丈夫。ちゃんとオレがついてるし。
 また明日も笑顔で会社に出ておいで」
「・・・・そうですね。今のこの元気な私がホントの自分ですからね。
 これでいきます!」
「そうそう、その調子。さあ、ぼちぼち出ようか」


外に出ると、空一面に覆っていた雲は消え去り、大きな満月がかかっていた。


こんな課長がいる職場はいいですよね〜。

え?
現実はこんなあまくないって?
ま、そうかもしれませんけどね〜。
だから、創作SS? なせばなる? 
どう受け取るかはあなた次第❤。

娘#1有縁のミニバラ。バラ本チャンは散ってしまったが、こちらはまだ元気。年々成長中。

今日も最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました♬ 長井 克之

コーチングのご相談などご連絡等はこちらに→nagaib61s83@gmail.com
(グチ、やり場のない思いやイライラ、悩みなどもどうぞお気軽にメール
 下さい。しっかり受け止めます。皆様の「心のゴミ箱」としてご利用
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<予告>
#175 おでん屋にて#11 沼からの脱出
#176 オレもツライねん
#177 続中学生日記

(つづく)


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