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晴れの日も雨の日も#189 I兄ちゃんのこと

オフクロの実家は兵庫県丹波市の寺だ。先日、そこの先代のご住職が亡くなったとの連絡が入った。連絡をくれたのは、オフクロの姉さんの長男のI兄ちゃん。私にとってはいとこだ。10年余前にその母上と奥さんが相次いで亡くなり、その時以来のご連絡だった。

私が幼少の頃、オフクロには健康問題があり、このオフクロの姉さんのところで育ててもらった時期がある。せいぜい半年かそこらの短い間だったが、この姉さんは大変よくできたひとで、私は精神形成上、多大な影響を受けた。旦那さんは日展出展手前という書道の達人で、小学校の夏休みにはよく手ほどきを受けた。I兄ちゃんは今75歳というから、私より一回り年上。ずいぶん遊んでもらった。というより、私がI兄ちゃんに始終まとわりつき、いわば年のあいた兄弟のようにして育った時期がある。

今回の葬儀、I兄ちゃんと連名で供花を出すことになった。私の分を建て替えてもらったので、先日その返却に伺った。花代を渡したら早々に失礼するつもりだったのだが、上記の通り10数年ぶりの再会、結局2時間ほどよもやま話に花が咲いた。
丹波の大きな家に一人で住むI兄ちゃんのもとに、大阪に住むお子さんやお孫さんが時折遊びに来るという。庭の一部は屋根付きのBBQスペースになっていた。なんでも友達に大工さんがいて、手弁当でやってくれたとか。今は仕事も引退し、畑仕事をしたり、サンルームから見える景色を見ながらコーヒーを楽しんだり、やたら家が広いもんだからいろいろ友達が押しかけてきたりという日々らしい。

まさに余生を楽しんでおられる感じだ。

I兄ちゃんは昔からそういうところがあった。
全国のゴルフ場のグリーンマーカーとバンカーの砂をコレクションで集めてたり。
青年期の頃はあちこち旅行に行ってペナント(死語?)を集めて壁中に貼ったり。
コーヒーもこだわりをもっていて東京の有名所から取り寄せているのだとか。
ホントに掛け値なしに、いいなあ、と思った。人生の達人だなあと思った。

そう言ったら、I兄ちゃんは「オレはアンタのように自分で道を切り開いてきた人間と違うから」とはにかんで笑っていた。
いや、確かに、オレは仕事や何やら頑張ってきたつもりやけど。でも、ガリガリゴリゴリ濁点の音が聞こえてくるようなブルドーザー人生で、I兄ちゃんのように人生を心豊かに楽しむ、なんてことは知らずにここまで来てしもてん。
そう言うとI兄ちゃんはニコニコ笑っていた。

I兄ちゃんは高卒で就職し、定年まで勤め上げ、ご両親との約束通り故郷に帰ってこられた。なんでも、今でも上司に怒鳴られている夢を見るとか。サラリーマンとしては必ずしもオモロイ人生ではなかったのかもしれん。

しかし、結果、何がよくて何が悪いのやら。

さらに話をしていると、3つ上のお付き合いしている女性がいるとか。一緒にエジプトに行ったり、お互いの家を1週間単位で行き来したりとか。籍はいれないが、そうやって一緒に生きていこうと思っていると。
やるなあ!

聞けばオフクロさんと奥さんの何回目かの法要の時に、「母親をなくした涙は枯れても妻をなくした涙はまだ枯れません」とおっしゃっていたとか。しかし、今は軽やかに次の人生に進んでおられる。
なんかとっても刺激的な半日だった。


オレもガリガリゴリゴリ一辺倒からはそろそろ脱却したいなあ。
あらためて強く思った。
I兄ちゃんのような生き方はオレにはできへんけど、でも、穏やかで、まろやか、ゆったりと、しっとりとした心の状態で日々を過ごしていきたいと強く思った。

最近いろいろな出会いの影響等で、スモールライフへの指向も私の中には芽生え始めている。頑張って何かをゲットする、なんていうのはもうほどほどでいいかな、と最近良く思う。願いをかなえるという記事を書いてきたが、今の私の願いはこれだな、と思いの輪郭がはっきりした気がした。

庭に生ったオクラ。ザンネンながらちょっと硬い。。

今日も最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました♬ 長井 克之

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(つづく)

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