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タイムラインとレコメンドによって世界は綺麗に閉ざされる

長濱由成です.

今日もYouTubeを開いた.昨日も一昨日も,おそらく明日も.小学生の頃から脈々と続いているコンテンツ消費.全世界の半数以上は同地獄に片足を突っ込んでいるだろう.長時間のネット使用やゲームのしすぎ問題は世間から常に取りざたされているが,本質はより深い所にあるのではとこの頃考えている.今日はそんな話だ.

Amazonの一緒に買っているモノリスト,Spotifyの自動再生,YouTubeのCM,突如流れてくるTwitterやInstagramの投稿.これら全てに共通しているものは何だろうか.いくつか解があるだろうが,「棚から自力で卸していない」という所に焦点を当ててみたい.

暗闇を歩く少女,画面を眺める私たち

皆さんは本屋に行くメリットを尋ねられた時,「本を探している途中に偶然見つかる出会いや背表紙が知を磨く」という通説を聞いたことがあるのではないだろうか.この話は本屋に留まらずコンテンツすべてに通じるはずだ.自ら探し歩いた中で偶然見つけた動画,商品,音楽,アート.これらと今出会う確率はほぼ0に等しい.専らインターネットの外側で生息し続けているのなら話は別だが,こうする今もnoteをネットで読んでいるのだからあなたはネットの内側に真の所在があるだろう.

インターネットに存在する数多くのプラットフォームがレコメンド機能(ユーザーの好む傾向を把握し,類似のコンテンツを多量に供給すること)を使う理由はユーザーの滞在時間を延ばすことにある.プラットフォームが人々から受け取っているのは金銭ではなく時間だ.それは近代の資本主義の中には時間というものが大きな対価として考えられているからだ.広告を流す企業としてはユーザーの滞在時間が大きく効果を左右するため,プラットフォームも企業も総じてアテンションを吸い続けることに終始するようになる.

このようなアテンション吸引の巣窟の成れの果てこそがsnsなどのソーシャルメディアだ.snsは人々の注意をいかに吸収するかで付加価値が決定されている.私はここにアテンションを吸われたくはないためsnsから離れることにしている.この間も「インスタやってますか?」と聞かれたのだが,酷く反応に困った.もちろん「やってません」と単に"応答"することはできるのだけれど,人々のアテンションを吸収する時間泥棒に発言者が加担していると考えればどこか気持ちが悪い.まぁ,このnoteも同一なのだが….

吸われる脳みそ(アテンション;注意)

さて,snsだが私には単なる時間とアテンションの墓場ではない.むしろ閉ざされた世界,ある意味で居心地のいい世界への片道切符であると思えて仕方がない.皆さん一度試してほしいが,アカウントにログインしていない状態のYouTubeで同じYouTuberを3本ほど連続視聴してほしい.すると,次トップページを開いた際にはそのYouTuberもしくは類似のチャンネルが表示されているはずである.たった3本かつログインしていない状態で既にレコメンド,AIによって自動的に傾向を分析・提案されているのだ.こんな狂った世界,むしろ当人の都合の良い世界で貴方が反対意見に出会う確率など極めて少ない.誰も反論しない町内会の長老のような精神状態だ.

こんなマッドな精神世界で貴方が反論に耳を傾けることができるわけはなく,貴方が反対意見の人とコミュニケーションを交わすわけもなく,貴方が反対意見の情報や根拠を知る由もない.今の世の中は文面に書くと恐ろしいが,物理的には楽しい世界だ(哀れ).

私もネット市井の一員として日々GAFAにアテンションを提供しているのだが,この現実は少し修正を加える必要がある.端的に言うならば,タイムラインとレコメンドの外側の世界に体を預ける必要がある.言葉で言うのは簡単だが,方法が意外と難しい.なぜならこれは単なるネット離脱をすれば済むという話でもないからだ.ネットで誇大されることで見えてくる閉ざされた美しい世界は,現実世界でも息を潜めて存在している.

多分,内側も外側もある種こんな感じ

似た評価軸と価値観を持ち,同じ趣味や興味で楽しむ同志たち.その居心地の良さは何にも代えがたい喜びとなる.しかし,ネット同様同じ系統の人々と話し続けると思考の血管が硬化し,気づけば破裂する.ある種の毒的な生活習慣病は誰にも病理と診断されることはなく,気づいた頃には治療が間に合わない.四代公害病など義務教育で習ったはずだが,タイムラインとレコメンドはある人たちにとってそれ以上の危害をもたらす恐れがある.私は己だけでなく周囲の人の中でその病理から抜け出せるような人が一人でも出てくればいいなと心から願っている.

同系統の意見はいつしか先入観,バイアス,前例として脳裏に刻まれる.毎日を帰納的に過ごす私たちにとって過去の事例が同系統で埋められることは地獄への道を自分で舗装しているのと何ら変わりない.科学が帰納法を信じるように,ダーウィンがすべての生物種の傾向を一部から推測するように,我々は今日も昨日の自分を信じて崖へと身体を向かわせる.昨日は傷つかなかったのだから今日もsnsを見てもおそらく傷つかない.軽い気持ちで開いた画面には山のような罵詈雑言,誹謗中傷が書き連ねられており貴方の精神は地に落ちる.他人の成功を発色の良い液晶越しに受け取り,貴方の嫉妬と憎悪は宙に舞う.文面で書くとやや誇張しているように見えるかもしれない.けれど,これが現実でこれが現代の病理だ.

さて,私の密かな願いとしてこの記事を閉じると同時に携帯をどこかに放り投げてほしい.私の記事は大体毎日3000文字だから2,3分で読めるはず.後の世界は現実の魂に依拠してくれ.これ以降特にググる必要はない.明日になればまた私の記事が一本上がっているから,それまではネットと離れよう.

優雅に「自分の時間」を生きる

では,また明日.



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