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2023.12.7 ドーナツを食べる警察官

 子どもの頃に『ポリスアカデミー』という映画を観ていた。わたしは1982年生まれなので、そのくらいに作られた映画なのだと思う。当時はテレビでやっていた映画をビデオテープに録画して、それを繰り返し観ていた。ビデオテープというのは、分厚い本みたいな四角いやつだ。友だちにビデオテープを貸したりもしていた。わたしは友だちに『新桃太郎』という台湾で作られた映画のビデオを貸して、友だちからは確かデヴィッド ボウイが出ていた『ラビリンス』という映画を借りて、友だちは『新桃太郎』をちゃんと返してくれたのに、わたしは『ラビリンス』を友だちに返していなくて、多分まだ実家にある。
 それで、『ポリスアカデミー』というのは、ちゃんと全部を覚えてはいないけどアメリカの警察のコメディー映画で、マホーニという警察官が嫌な上司にイタズラをしたり、他のキャラもなにか失敗をしたりして、それを面白がって観ていたのだけど、その中のシーンで、警察官二人が朝、ドーナツ屋さんでコーヒーを飲みながらドーナツを食べるというのがある。二人は窓際の席に座っていて、窓の外には自分たちが乗っていたパトカーが停まっていて、警察官二人はのんきに会話しながらドーナツを食べているんだけど、後ろのパトカーに悪い奴がガソリンをかけて火を点けて、ゴーゴーとすごい勢いで燃える。けど、警察官は二人とも全然気付かなくて、ずっとドーナツを食べている。
 子どものわたしは、パトカーが燃えているのよりも、警察官の男の人が、朝からドーナツ屋さんでドーナツを食べている、ということに驚いたのかもしれない。それで、今でもそのシーンを覚えている。
 わたしはすごく食べることに興味があるし好きで、子どもの頃というか、小説を書くようになる前は、ほとんどそのことが生活の中心であった。幼稚園の頃は、食べることが好き過ぎて、道ばたに咲いていた花も、その味が知りたくてよく食べていた。
 去年だと思うんだけど、小説を書くことに行き詰まって、近所のショッピングモールの占いに行った。そこでは日替わりで、タロットとか手相とかを占ってくれているのだけど、わたしが占ってもらったのは、四柱推命というやつだった。
 それで、思い詰めていたわたしは、占い師さんに、わたしは小説家になれますか? と訊いた。そうしたら、うーん、小説家になれそうな星は入ってないですね、と言われた。わたしは、四柱推命という占いによると、「食神」という星が中心にあって、その他にも「食神」がいたるところに入りまくっていて、つまりは、「食」に関する仕事に向いているということ。そうとう暗い顔をしていたのだろう、占い師さんは、食べ物の小説を書いたらいいんじゃない? と励ましてくれた。
 占いというのはどこまで信用できるのかわからないけど、わたしは実家が飲食店をしているし、小さい頃から食べることが好き過ぎるぐらい好きなので、食神ね、うんうん、当たってるかもー、とは思いつつ、だからどうなんだというか、それをどうやって生かしていけばいいのかがわからない。
『ポリスアカデミー』だけじゃなくて、昔の映画とかテレビで、印象に残っているのは食べ物にまつわるシーンが多くて、他にも『ポリスアカデミー』では、警官が食べていたシリアルに飼い犬がおしっこをしちゃって、気付かずに食べちゃって、観ていてうわー、と思ったこととか、そういうのを覚えている。

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