長澤沙也加🦩

第1回氷室冴子青春文学賞準大賞。第37回太宰治賞候補「私鉄系第三惑星」。第67回群像新…

長澤沙也加🦩

第1回氷室冴子青春文学賞準大賞。第37回太宰治賞候補「私鉄系第三惑星」。第67回群像新人文学賞候補「可哀想な犬」。

マガジン

最近の記事

景色は光る

 YouTubeで、病気で死にかけた人が話していた。  その人は、肺に水が溜まって、息が苦しくてもう本当に死にそうだった。  病室にいて、それで、そこで悟ったのだと言って、  悟るとどうなるかわかる?  と、聞き手の人に尋ねる。  わからない、と聞き手は答え、わたしも、わからない、と思う。  死にかけてわかってんけど、欲がなくなってくねん。  食欲がなくなる、YouTube10万人いくとかどうでもよくなくなる、性欲もなくなる、で、どうなるか、わかる?  わからん。(わ

    • セルフレジが好き

       近所のスーパーに、セルフレジができた。  車を混んでいる道で運転するのが怖くて、スーパーにも混む前にと、開店してすぐに行くようにしている。  スーパーは、ショッピングモールの中にあり、それで、わたしは開店数分前に着いて、自動ドアーが開いたと同時に入ると、各店舗の店員さんたちが店先に立っていて、いらっしゃいませー、とお辞儀をしてくれるんだけど、その姿を見るといつも、ただ早く来店しただけでなにもしていないのに、お辞儀をしてもらって申し訳ない気持ちになる。  スーパーも、開店直後

      • 人見知り母さん

         中学生のときテニス部に所属していて、仲のいい4人組で、学校の裏にあった市の運動場でよく練習をしていた。  コートのベンチに座り、休憩しているときは、4人でいつもたあいない話をしていた。  4人の中で、誰が一番に結婚するのか、ある日そんな話で盛り上がった。  〇〇ちゃんは遅そう、〇〇ちゃんは意外と早そう、なんの根拠もなかったけれど、みんなで予想をし合って、わたしは、みんなから、結婚が早そう、と言われた。  将来生まれてくる子どもの名前を考えよう、ということになった。  絵が得

        • 音量調節みたいなつまみ

           詩を書きはじめて1年になった。  小説を書きはじめたときにも、自分が小説を書くようになるとは思っていなかったけれど、詩も、自分が詩を書くとは思っていなかったので、1年続いて、よかった。  詩を書くのがとても楽しい、とても難しくもあるけれど、これからも続けられたらいいな。  今、エッセイも公募に出している。エッセイと詩は、真逆という感じで、その真ん中に、小説があると、個人的には感じている。     エッセイーーー小説ーーー詩  という感じで、音量調節みたいなつまみがあって、そ

        マガジン

        • 文章
          227本
        • 日記
          222本
        • お知らせ
          8本
        • 小説
          3本
        • 12本
        • うろ覚え
          5本

        記事

          ずっと間違えている人

           昨日、テレビですごく厨房が狭い食べ物屋さんのことをやっていて、それを観ながら、わたしも昔すごく厨房が狭いお店で働いていたことを思い出した。  そこはパン屋さんだったんだけど、カレーパンに入れるカレーとか、サンドイッチに挟む具とかを、全部手作りしていたから、厨房にはコンロもフライヤーもあって、他にパン窯とかミキサーもあって、狭い厨房に常に10人ぐらいが忙しく働いていた。  ある日、わたしは、大きな鍋の横でしゃがんで作業をしていて、その鍋は火は切ってあるけど今しがたまでぐつぐつ

          ずっと間違えている人

          面白いや楽しいを全身に詰め込んで

           現代詩手帖の11月号の新人作品で「スポットライト」という詩を、杉本徹さんに佳作に選んでいただきました。  川口晴美さんとの対談合評の中でも名前をあげていただき、とてもうれしく、励みになります。ありがとうございます。  現代詩手帖の11月号は新鋭詩集が特集されていて、読み始めたのだけど、とても面白いですね。言葉って、なんでこんなに面白いのだろう。台湾同志詩も特集されていて、読むのが楽しみ。  言葉、面白い。  呪物、楽しい。  いつもよりちょっと値段が高めのスティックコーヒ

          面白いや楽しいを全身に詰め込んで

          オバケにゃホント住みにくい時代さ

           過去に行われた呪物展の動画を観ていた。  グッズとして、呪いの置物をプリントした抱き枕やぬいぐるみが販売されている。  呪物コレクターが呪物を持っている写真が飾られている。  呪物展に際し、さまざまな呪物の画像を編集していたところ、画面が変な具合にフリーズして、これは呪いかもしれない、とその画像をスクショして、Tシャツにしたものも販売されている。  呪物側も、スクショされてTシャツにされるとは、思いもよらなかったのではないか。  わたしはゲゲゲの鬼太郎の歌を思い出した。

          オバケにゃホント住みにくい時代さ

          甘くないピーナッツバター

           ブラッドピットが、スプーンでピーナッツバターをすくって舐めている映画があったはずだ、確か、ジョージクルーニーによろしく、みたいなタイトルだった。  と、いうのを、昨日コーヒーをいれながら思い出して、調べたら、映画のタイトルは「ジョー・ブラックをよろしく」だった。おしい。  ピーナッツバターは、甘くなくて粒を砕いたのが入っているのが好きなんだけど、おそらく、ここ5、6年ぐらい、わたしはピーナッツバターを食べていない。  ピーナッツバターを、スプーンですくってそのまま食べるのは

          甘くないピーナッツバター

          呪物を集める人

           呪物を集めている人の動画を観ている。  わたしは、呪物をほしいとは思わないけど、呪物を集めている人を見るのは面白い。  見ると死ぬ絵とか、持っていると悪いことが起こる置物とか、そういうものを好んで集めるというのは、気持ちがわからなくもない。  普通に生きていると、大概の人は、不思議な体験をしたり、幽霊を見たりとか、そういうことはほとんどないと思うけど、呪物というのは、それ自体が不思議な物なので、持っているだけで非日常という感じがする。  本当に怖いことが起こるのは嫌だけど、

          呪物を集める人

          板海苔状態

           最近は特になにがあったというわけではないのですが、わたしは板海苔の状態にあります。  板海苔とはなにかということを、ネットで調べてみました。    板海苔を、炊き立てのご飯に塩を振ったものに巻き付けて、食べると、おいしいのですが、まだご飯が炊きあがらないのです。お米をといで水を入れ、炊飯器にセットしたのですが、いつまで経ってもスイッチが入りません。わたしが入れればスイッチは入りますが、わたしが入れてくれません。  今日はせめて、スイッチを入れるため、指を持ち上げる練習ぐら

          本と人

           福田恒存の評論の中で「コローの風景画のあとで自然はその様式をまねはじめた」というのがあって、これはワイルドという人の言葉らしい。  風景画で描かれた、木々の葉を照らす光の粒は、現実の木々の葉を、風景画を見た人の目を通して、再生される。    人と直接会って話すことは、本を何冊か読むことと、近いかもしれないし、遠いかもしれない。  本を読むことは、何人かの人と直接会って話すことと、近いかもしれないし、遠いかもしれない。

          シャンパンファイト

           昨日、テレビを観ていたら、大谷選手がシャンパンファイトをやっていて、そうしたら娘が、この人たちなにやってるの? と訊いてきた。  だからわたしは、なにかしらで優勝すると、こうやって、お酒をかけ合うのだよ、アメリカとかはシャンパンだけど、日本ではビールをかけるよ、と答えた。  へー、なんで? とまた娘に訊かれ、楽しいからじゃない? とわたしは適当に答えてしまった。  シャンパンファイトとかビールかけをやっている人たちは、とても楽しそうだ。  だけど、お酒が目に入ったら痛いだろ

          シャンパンファイト

          志賀直哉の帽子

           福田恒存の評論を読んでいる。旧仮名遣いなので読みにくいが、読んでいくとだんだん慣れてきた。  近代日本文学は、プロレタリア文学や私小説が不幸自慢に陥ってしまっていると批判されるけど、志賀直哉は評価が高い。  志賀直哉は山手線にひかれたことがある。志賀直哉は家がお金持ちだったから不幸自慢にならなかったのかもしれないけど、電車にひかれたのは痛かっただろうな。  戦争に負けたあと、志賀直哉が被っていた帽子を、米兵がからかって取り上げている場面に遭遇し、小説の神様になんてことを! 

          志賀直哉の帽子

          虹を見ていない

           最近、虹を見ていない。  人が見たという虹の写真は、SNSでたくさん見て、見るたびにわたしは、自分の目で直接虹を見なくなって、もう何年になるだろう、と考える。  ちょっと前に、車を運転していたら、後部座席にいた娘が、虹だ! と行ったんだけど、わたしは運転中のため振り返れず、見ることができなかった。  虹に、避けられている。なにか、虹が気に触ることをしたのかもしれない。  今度、虹に出会えたら、わたしも、虹も、久しぶり過ぎて、少し気まずいかもしれない。  だけど、わたしは虹に

          虹を見ていない

          おいしかったなー

           小学校の給食の時間。  うちの学校では、けんちゃんなんか嫌いだよ、という歌が流れていた。あと、山口さんちのつとむくん、もよく流れていた。  つとむくんもけんちゃんも、わたしが子どものころより少し前に流行った歌なのだと思う。  つとむくんの大事にしていた三輪車がお庭で雨に濡れている。  けんちゃんは、いつもわたしをペンギンと呼ぶ。  そういった歌詞を、耳で聴きながら、頭の中ではつとむくんの三輪車が雨で濡れている。口の中には、きな粉揚げパンが入っていて、もぐもぐ食べている。ソフ

          おいしかったなー

          その写真はなかった

           とても昔のこと。  友だちには子どもがいて、わたしはまだいなくて、友だちの子どもの写真が飾られている写真展に、出かけた。  友だちは、子どもが写真に撮られ、雑誌などに載るのがいいようで、撮られた写真をわたしは見たことがあった。  友だちと二人で、写真展に行って、ビルの白い壁の中、狭いくねった部屋のすみずみに、さまざまな子どもの写真が、笑ったり、動く途中であったりした。  白い部屋を、くねくねと移動する。あれー、どこだろう、友だちは、自分の子どもの写真を探す。  何度くねくね

          その写真はなかった