独自の詩の森の世界へ:しなだしん句集『魚の栖む森』
死角の無い句集である。
どこから読んでも、どの句を読んでも面白い。
溜息が出るほどだ。
全11章より感銘句を各章より1句ずつ。
喝采のやうな風鈴市をゆく
騙し絵のやうな嫗が毛糸編む
わが影へ膝折りたたむ汐干狩
穀象の眼いたいけとも見ゆる
鶴渡るふつくら赤き燐寸の火
軍港を白く濡らして日雷
サーファーの鼠小僧のやうに立つ
梟の身に軸のありこちら向く
貌つつこんで花虻の尻の縞
夜に満ちて葬儀のやうな白つつじ
臘梅のひらきて未完なる形
季語の使い方の巧みさはもちろんだが、切れ字