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暮らしと文化から生まれる布

ラオスの布から服をつくっているけれど、ラオスの布とはなんだろうとふと考えた。
ブランドを始めたばかりの頃、ブランドや服の紹介をするときに「ラオス」を一言目に持ってきても多くの人はラオスを知らないのでそこでシャットアウトされてしまったり、途上国の支援活動だと思われたりしたこともあった。
だから、ラオスという言葉を使わずに布の特徴や服のコンセプトの説明をしたりもしていた。
でもラオスを隠したいわけじゃない。

ラオスの布の特徴や魅力に思うところを改めて考えてみたいなと思った。

ラオスの布の要素を分解
・原材料: 自然のもの(コットン、シルク、ヘンプ)
・染料: 自然のもの(化学染料のものも今はたくさんありますが)
・工程: 機械を使わず、手作業の工程が多い。
・柄やモチーフ: 民族や地域によって異なる伝統の織り柄。
・織りの技術: 平織り、縫取織り、綴れ織りなど
・つくる場所: 家、工房、工場

ラオスの布というと「伝統」という言葉で語らずにはいられないが、その伝統というものに日本人である自分はどう携わっていけばよいのか、悩んでいる。ラオスの人たちが大切にしている、アイデンティティに関わるものだからこそ、自分も関わり、共に残していける方法を、慎重に考えたいなと思っている。

そこでまず自分たちは「自然素材」「手仕事」という要素に魅力を感じ、「手紡ぎ手織り」のコットン布をメインとして服をつくっている。
綿花から布になるところまで電動機械を一切使わずに生まれる。
現代社会の中で、それは非効率なのかもしれない。
でも、伝統を受け継ぎ、村の暮らしの中で丁寧につくった布は、そんな手仕事にしかない風合いがあるから、豊かなものだと感じている。
そんな暮らしと文化の中で、布がつくられていることが大きな魅力だと思う。

現在私は、ラオスでは首都のビエンチャンを拠点にしているが、布の産地である地方の村にも定期的に足を運んでいる。

元々は青年海外協力隊の活動を通して知り合った村の人たち。
村を訪ね、布づくりを見ながら、その歴史や技術、柄の意味を教えてもらい、そして一人一人の布を大切に思い残したいという気持ちを聞いたことが、自分の原点となっている。

村では、織りの風景と暮らしの風景が同じ空間の中にあって、暮らしの中から布が生まれているのだと実感する。
村の人は朝早く起きてもち米を蒸して、6時ごろから托鉢をして僧侶たちにそれらを分け、昼間はそれぞれ織りの仕事をする。
太陽が沈み始めると仕事を終え、夜は虫の声だけが響いている。
誰もいない織り機の横で、星空の下、ふと過ごす夜の時間は、特に都会との対比を感じるのか、とても穏やかだ。


そもそも協力隊に行った目的はラオスの暮らしや文化を深く知り、入り込みながらそこにいる人たちと何かできたらなと思ったこと。
でも今だに入り込むことはできないし、いくら会話ができたとしてもやっぱり私は日本人としてのものさしが入っていることを感じる。
それでも違いを理解しながら、ともに時間を過ごし、一緒に笑ったり泣いたりできる関係でいられることが最高なのかもしれない。

村の生活、音、時間の流れ。
つねに鶏が歩いてて、鳥のさえずりが聞こえて、家々を回ると洗濯物の横に藍染めした糸が干してあって、軒先の織り機の音が響いている。
私は異質な外国人ではあるけど、興味を持って織りのことを行くと丁寧に教えてくれる。
この穏やかな暮らしを壊したくないなと思う。
けれど手仕事や伝統が続いていくための挑戦も時には必要だと思う。
そのバランスを取りながらsiimeeというフィルターも通して新しい価値をつくりたい。
指示する、される関係ではなく、一緒につくることを大切にしたいなと思うのです。
村に行くといつもその守りたい気持ちと挑戦したい気持ちの両方が生まれます。

いまでも自分の活動のスタンスは、協力隊のコミュニティ開発隊員なのかもしれない。彼女たちの視点に立つために、現状を知り、想いを聞き、どうすればよりよくなるかを考える。そこに今、ビジネスという持続可能性を付加していくことが新たな使命である。

外部者である自分がどのように関わるべきなのか。
私のクリエイティブみたいなものを、どれだけ入れてもいいのか。
ただ服や雑貨にすればいいというわけでもない。
伝統や文化は、数百年を経て少しずつ変わっているかもしれないけど、変わらずに受け継がれているものもある。だからこそ、簡単に伝統や文化という言葉でまとめてしまってはいけないという気持ちもある。

まだまだ可能性にあふれている。
ラオスという国全体にも、布をつくる人たちにも、素材にも。
あと、私自身の可能性も信じてみようと思う。
様々な掛け合わせをつくり、新しい価値を生み出していく。

ビエンチャン工房での服作りに今日もまた、取り組んできます。

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