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遠くへの手紙。

郵便局に、手紙を出しに行った。

いろいろと出したいものがあったんだけど、自分が事務所にいる時間しか郵便局も開いてないから行きそびれていて、ちょうど日本にいる父親に早急に送らないといけないものがあったので、いいタイミングだと思って、郵便局へ行ってきた。

そのひとつは、アフリカのタンザニアにいる隊員同期への手紙。
彼女とは、タンザニアとラオスにそれぞれ旅立つ前に、鹿児島での研修で3週間寝食を共にし、じりじりと暑い鹿児島の空の下で小さなその集落の家々を一緒に歩いてまわった、ちょっと特別な仲間。
そしてまめな彼女は2回も遠くアフリカから手紙を送ってくれていて、その返事をようやく書けたところだった。

4月の暑い午後の、ラオスの小さな街の郵便局にて。

「アフリカのタンザニアに手紙を出したいんですけど…」
「見せてもらっていい?」
「これです。」
手紙を差し出す。
「アフリカ…ね。ちゃんとアフリカって大きく国名書いてもらっていい?」
「えっと…ちゃんとタンザニアって書いてあります。」
「え?」

なんだか話が噛み合わない。

「ここです、ここ。」
「アフリカって書いてほしいのだけど…」
「タンザニアが国名です、アフリカ地域の、タンザニア国」
「え、そうだっけ…」

そうかわかった。

アフリカという国の中のタンザニアという県か何かだと思われていたのだ。
ラオスのそれもこんな田舎で、アフリカという地域は確かになじみが薄い。
確かにタンザニアという国を知らなくても無理はない。私も協力隊に来ていなかったら、あまり耳にすることもなかったかもしれない。

タンザニアという国に私が手紙を出したいということがわかり、送料を調べはじめてくれた。
おそらくこの小さな郵便局からアフリカに手紙を出す人もほとんどいないだろう、郵便局の職員さんたち総出の勢いで、調べてくれた。

10分くらいすると、呼ばれた。
「やっと調べられたよ。32,000kip(約410円)ね。」
そっか、そんなもんで着くのか。
遠く行ったこともないアフリカの土地へ、今手に持っている手紙は、お昼ご飯2回分くらいで着くのだ。

そしてもうひとつ、切手を貼りたかった。
タンザニアの彼女も、タンザニアらしい切手を貼ってくれていて、それが余計に嬉しかったのだ。だから私もラオスらしい切手を貼って出したいなと思っていた。異国に住んでいる者同士の楽しみな気がするから。
そのことを頼んだら、あとで貼っておいてあげると言われた。
その言葉を信じて託すことにした。
「それでは預かりますね」
「よろしくお願いします」

ラオスからタンザニアへ、手紙を出すだけでも、楽しい。
丁寧に対応してくれた郵便局の人たちにも感謝。

あの手紙は今どこにいるだろうか。
もうラオスは出ているかな。
どうやって運ばれるんだろう。船なのか、飛行機なのか。

どこにいるのかわからない手紙のことを思いながら、そしてその先にいる、頑張っている彼女のことも考えながら、今日もラオスで1日、私も自分の日常を過ごそう。

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