北朝鮮noteカバー_3_

北朝鮮にあさり買いにいく。(3)

「日本に流通してる有明産のほぼ全てが北朝鮮産である。」

この事実を書いて殺されやしないかヒヤヒヤするがまぁ事実だしな。
有明の浜に撒かれた膨大なあさりは、1週間もしないうちに日本国内へ出荷されていく。
つまり産地偽装だ。
これを「札替え」という古来よりずっとやってる方法だ。kgあたり50円の手数料がのる。
流通業者の手により全国隅々まで行きわたる。

ヤクザな商売に素人がどっぷり浸かり、週2便を出すためにトライアスロンのような生活が始まる。
仁川から東莞で積荷確認して大連までいき飛行機で熊本もしくは博多にいき有明の浜で確認その後仁川へ戻るか大連もどりでいく。人と一緒に商売することがすっかり疲れてた僕には誰とも喋らなくていいのでわりと気に入ってた。浜でチョロまかされること以外は・・・・。

僕は、浜で廃業したあさり業者を探すと同時に冷凍食品の流通を探すこともそれに加えた。
なんでもそうだが、源流が1個しかないと突然止められた商売は困窮し不利な条件で取引することになる。
それを避けるため常にバックアップは最低2つ用意しておいたほうがいい。

商流は自分で作ることだ、誰かの用意した商流にまかせてる限り手数料が派生し儲からない。人類の歴史は昭和で60年以上あるわけだから誰かが必ず通った道があると信じて探す。自分だけの道を探すことだけにやっきになってはいけない。途中まででもいい、必ず道はどこかにあると信じて今を疑うことが重要だと思う。そうして、流通経路を開拓した。

まずは、韓国流通。少なからず値段は高いが韓国国内から日本国内へ韓国産の貝が流通している。多いのがあさりの稚貝だ。稚貝だけは北朝鮮から入れていないことがわかる。この稚貝は、韓国で荷詰めされる分だけ直接地方の浜に届く。最大千葉県まで届く、潮干狩り用の貝の仕入れを行うことにした。値段は安いが韓国国内から送るので事故が少ないのとヤクザと取引しなくていいのが僕のストレス軽減につながる。それに流通期間が長いのであさりが終わったあとにでもできるのが資金を眠らして置く必要がなかった。

そして、冷凍食品。言わずもがな腐らないので冷凍倉庫へいれておけば流通しやすい。食品問屋をかたっぱしから声をかけてみる。なかなかこれは苦労したがほそぼそできそうなイメージは湧いたので夏以降やってみようと準備を進めた。シュウくんの仕事はほぼ冷凍食品で売り上げは相当なものであった。

最後は、資金の移動。一度、現金を運ぶために嫁に金をもって行かせたら見事捕まった。罰金で約35%の資金がロストした。お腹に巻いていけと言ったがそれは出る時だからといったんだけど行く前に巻いていって捕まるった。親戚が税関職員だったので僕のパスポートが渡航記録が多くそれを換算してその分を資金を返してもらった。毎度現金商売は大変だと思い、韓国からの地下銀行を韓国国内の稚貝取引先にお願いすることで現金リスクを減らした。無論どっちにしても違法だけどね。

取引は増えていき、たまに吹雪で-20度近く気温がさがりホテルに缶詰になる時がある。
無駄足になることも多々あった。仁川から東莞は船のチケットは買えるのに、東莞から仁川へのチケットは数十回の渡航のうちたった1回しか買えたことがない。行く人が多く戻る人がすくないっていうのを表していると思う。 なにもすることがない時は、じーっと外を眺めてた時もある。

一度、嫁が捕まって金がなくなり取引できない時に業者が建て替えてくれた上飯まで招待してくれて。もうお馴染みの北朝鮮レストランへいった。嫁に北朝鮮の女の人と話てみてと言っていろいろ聞いてもらった。連帯責任や国のことや歌のことや色々なことをいつか南北が一緒になったら行ってみたい場所は?とかだ。等身大の女の子の目線が知りたかった。今でもとても有意義な時間だったと思う。

ある日、取引も終わり朝ごはんを食べようとホテルの食堂にいったら誰もいない。がらーんとしている。
フロントの人に食事は?と聞いてみたら給仕をしていた北朝鮮の女の子らが近隣のホテル全部から一斉に逃げたそうだ。連帯責任なら全員でにげた方がいいと判断したのだろう。
なぜかわからないが、清しいなと思ったこのあと地獄かもしれないが生きることを選択したんだな。
あの吹雪の中をチマチョゴリで逃げたことを想像するとワクワクする。

そんな僕は3ヶ月の取引の中ですっかり中国のPM2.5で肺をやられていた。
大連に着く80kmあたりで咳が止まらなくなる。大連につくころには目と鼻水でやられ呼吸ができないぐらいつらかったホテルに入ってシャワーで洗い流そうと思ってもなかなか落ちない。この咳は結局、中国に行かなくなっても数ヶ月は続いてなんて汚染がひどいんだと思った。そんな中国が空気が少し綺麗になってるだからやっぱ大号令でやれる国家は強いなと関心する。
シュウくんは、青島出身で家がそっちなので彼のところに逃げ込むようにしようと思った。
そっちのほうが空気が浜風で綺麗だと聞いたので。
大連から青島まで飛行機で30~40分以内なのに凄まじく遅延する。
6時間遅延はざらだった。

青島は確かに大連よりはマシだった、あくまでマシだった。

青島もあさりの産地であり主に中国国内流通が専門だった。大連の東に続く海岸線は金州産と呼ばれワカメやノリの養殖が盛んだ、そのさらに先に大小様々な島が存在するそこにもあさりがありそこからも日本へ流通しているが取引が難しい。

有明の浜の連中のヤクザは素人の僕がルート開拓したので数人のバカを送り込んでルートを開拓するようになった一度金州の浜でばったりあったが、中国人の浜主はヤクザが嫌いなのかたぶん値段を高く吹っ掛けて不調で終わった。彼らは徒党を組んで偉そうだったのが鼻についたのだと思う。買ってやるって上の立場でモノ言ったんじゃないかな?と思う。 

この商売に終わりはあるなとこの時僕は感じ始めていた。

シュウくんは食品で儲けた金でテナントを買いぬいぐるみを作って売る商売をやろうしていた。
春から秋にかけてはこの商売は開店休業状態になるから別の商売を僕も考えないといけないなと思っていた。

彼のおすすめのお店をいろいろと連れて行ってもらいその中でも韓国のわかめスープに似た牛骨スープが16元程度でお腹いっぱいになる美味しいスープがある今でも青島にいけばあれだけは食べたい。
そんなこんなでシュウくんとはビジネスだけではなく、すっかり仲良くなっていた。
いまでもたまにwechatでやりとりする。

彼とは変な運命があって、

1年前に逮捕された「結婚詐欺師」と関係があった。

世界はほんと狭いのか自分がそんな運命の中で生きてるのかわからないがとても結びつきの強い話がある。

つづく


40才になったので毎日書く修行です。