うちのカメレオンカレー
一人暮らしを始めてから、
カレーとかシチューとか
大量にできてしまうメニューを
作らなくなった。
カレーは大好きだから
毎日でもいいのだが、
カレー玉手箱事件をきっかけに
おうちカレーは封印された。
普段は作ったその日のうちに小分けして
冷凍か冷蔵で保存していたが、
「なんか疲れたし、まぁ明日でいっか」
と鍋のまま1日常温で放置してしまった。
朝に火を通したときは大丈夫だったのに、
仕事が終わって帰ってきたら
カレーが見るも無惨な
真っ白でカピカピの何かに変貌していた。
浦島太郎もびっくりの急激な変化だった。
そして何よりも、
帰ったら食べようと思っていた
カレーライスがただのライスになった
悲しみと言ったらもう…。
その日を境に、
カレーは家で作らないことになった。
食べたいときは
外食やレトルトに頼るが一番。
…とはいえ、たまに家で作る
素朴なカレーが恋しくなるときもある。
実家で食べていたカレーは
私の成長に合わせて
その味や姿を変えてきた。
幼い頃は辛いものが苦手で、
スパイスの刺激が
どうにも耐えられなかった。
カレールーはもちろん甘口。
具材は食べやすいよう
サイの目に揃えて切られているし、
玉ねぎが溶けるほど煮詰めてあったり、
ハチミツが入ったりしていた。
父は甘くて黄色いカレーに
真っ赤な激辛スパイスをふりかけて
食べていた記憶がある。
年齢を重ねるにつれ
少しずつカレールーの中辛の割合が
増えてゆき、
具材も大きく食べ応えのある
ゴロゴロカレーに進化していった。
中辛が好きになった中学生時代には、
トッピングデビューした。
ある夜、仕事で遅くなった父が
1人で食卓についていたときに、
コンビニで買ってきたコロッケを乗せ
ソースをだぶだぶとかけて
食べていたのを目撃した。
母が
「今夜カレーでいい?」
と聞いてきたときに、
「コロッケカレーがいいな。
この間お父さんがやってたやつ。」
とリクエストして食卓に並ぶようにった。
あとで聞いた話だが、
父は、母に内緒でトッピングを
追加していたらしい。
娘の無邪気な告げ口のせいで、
しばらくビール禁止にされていたっけな…。
高校生になるとキーマカレーにはまり、
野菜をのせたり温玉をのせたりして
カフェ飯風のおしゃれカレーに目覚めた。
私が写真を撮ってSNSに上げるからか、
母の盛り付けもどんどん進化していった。
大学に入学してバイト三昧になると、
家で食事する機会がめっきり減った。
たまの休日、
バイト先で教えてもらった賄いカレーの
レシピを家で作ってみたら、
「おいしい!」と好評だった。
隠し味はカップ一杯のコーヒーと
大さじ一杯のコンデンスミルクだ。
普通にカレーを作っていき、
水を少し少なめにしてルーを溶かしたあと、
一煮立ちしたタイミングで加える。
それだけで、ぐっと味わい深くなる。
このレシピを気に入った母は、
今もコーヒーとコンデンスミルクを
入れているらしい。
カレーは各家庭の個性が出ると言うが、
うちのカレーの場合は
主に私の嗜好に合わせて
変化してきたカメレオンカレーだ。
だから、「うちのカレーはこれだ!」
という定番カレーはない。
でも、どれも間違いなく
うちのカレーであり、
なっちゃんちの歴史を語る上で
重要なエッセンスなのである。
…と言ったら言い過ぎだけど。
最近はスパイスカレーが
マイブームなので、
今度帰省するときは
またうちのカレー史を
更新してこようと思う。
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