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戦略人事:ジョブ型雇用のリスク(安易な解雇と労働組合)

人材の流動化と安全性はセットで考えるべきである。

■業績と雇用調整

 経営者の都合の良いように従業員を簡単に解雇できないように労働法などで働く人々に一方的な不利益が生じないように法律が用意されている。しかし、その法の網の目をくぐるかのように「雇い止め」や「リストラ」が横行している。早期退職制度と名前は、それらしくとも実質的な解雇には違いない。

 それでも一定の心理的な歯止めになっており、それなりの合理性を持って従業員数の調整をしているのだと思う。しかし、グローバル化が進むとそうはいっていられない。

 アメリカでの事例ではあるが、海外では簡単に雇用の調整が行なわれる。

○コロナ禍で急成長「ズーム」が従業員1300人解雇 CEOの給与は98%カット
2023年2月8日
https://www.fnn.jp/articles/CX/483078

○ディズニー7000人を解雇 動画配信の赤字続く
2023年2月9日
https://www.fnn.jp/articles/CX/483821

もちろん、業績悪化が背景にあり、昨今のIT企業のリストラはそれが原因であろう。

2023年2月3日、NHKのニュースで「アップルやアマゾンなど米IT大手5社 3か月決算 全社で減益」と報道された。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230203/k10013969271000.html

■労働組合という抵抗

 海外と違い、日本にその慣行を持ち込もうとすると社会問題になる。
 いままで、働きやすいと言っていた企業での処遇が幻想であったのではないかと思う。簡単に解雇されると言うことに対しての理不尽さは納得が行かないのは当然であろう。

○ワンクリックで解雇なんて…Google日本法人で初の労組が結成 巨大IT企業で続々起きる新たな波
2023年3月1日

 巨大IT企業Google(グーグル)の日本法人で働く従業員らが、同法人では初めての労働組合を結成した。グーグルは昨年約8兆円の利益を上げ業績好調なはずだが今年1月、全世界で1万2000人を解雇すると発表。労組結成はこれに不安をおぼえ、抗議するためだ。グーグルに限らず、アマゾンやツイッターなど米国発の世界的IT企業で一方的な解雇が横行しているが、ボタン一つで従業員を消去するかのような手法には批判が集まっている。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/233795

○グーグル社員に突然届く“退職パッケージ”。労働組合「違法な解雇は許さない」
Mar. 02, 2023

日本のグーグル合同会社においては、「2週間以内に退職を決めた場合、退職金を増額する」などとしたメールが一部の社員に届いたという。

一方的な解雇に対抗するため、グーグル合同会社の社員が労働組合を設置。今後、人員削減の合理性があるのかどうか、解雇を回避する努力をしたのかどうかなど説明を求めていくという。

https://www.businessinsider.jp/post-266293

 こうした「労働組合」で対抗するという流れは、日本より組合の結成が難しいアメリカでもその流れがある。従来レイオフが前提の雇用慣行は、労働力の調整弁でもあり、多くは泣き寝入りになるのでコストの心配がなかったものが、予期せぬ労働コストを考えなければいけなくなる。

■ジョブ型雇用のリスク

 ジョブ型雇用の移行が話題になっている。
 グローバル化が進む中で、採用や報酬などの仕組みを国際規格に併せて行く必要性は理解できる。しかし、そこに潜むリスクも無視してはいけない。

 ジョブ型で雇用したとすれば、そのジョブが不要になった、あるいはそのジョブの遂行ができないと判断した場合に解雇できることが前提になる。しかし、そうは簡単な問題ではない。特に日本であれば、解雇を回避する努力をしなければ訴訟が起こされるリスクがある。多くは泣き寝入りになるが、企業イメージにはプラスにはならない。

 安易に拡大した企業は労働組合を持たないか無視する傾向にある。既存の大企業であっても、労使が癒着した組織になっており、その組織率の低下は目を覆うほどである。既存の労働組合とは別の組織が立ち上がることも想定すべきである。

 ジョブ型雇用に移行すると言うことは、彼らの働き方に責任を持つこととセットで考えるべきである。安易な雇用忠誠ができると思わない方が良い。

<閑話休題>

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