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世間に転がる意味不明:忘れ去られるリスキルの騒動(いったい今はどうなっているのかが分からない出来事)

世間に転がる意味不明:忘れ去られるリスキルの騒動(いったい今はどうなっているのかが分からない出来事)

戦略人事がらみの話です。

■伊藤レポート

伊藤レポートが世に出たのは平成26年(2014年)であり、副題に「持続的成長への競争力とインセンティブ  ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクトとあるように、投資家に対する企業の対峙の仕方などを提言したものである。

印象で言えば、資本家に対し、彼らが投資判断とするROEにもっと注意を払い情報開示を進めよというものである。

これの人材版が2020年の「人材版伊藤レポート」であり、人的資本開示へと議論が進んだきっかけである。来れも投資家に対する情報開示であり義務化されている。実際CSRレポートでも「人的資本開示」とい打項目があるものを散見している。

しかし、これが企業競争力を向上させているかと言えば分からない。
それは投資家に対して現状を明らかにしているに過ぎず「戦略人事」という枠組みで企業の経営革新に結びつけているとは思えないからである。

伊藤レポートの中でも人事部門の戦略性の欠如が指摘されており、それが解決されているとは思えない。

■人材ポートフォリオの組み替え

2024年問題に端を発する人手不足は全業種・全企業への波及があり、2024年の春闘は給与アップの話題であふれた。

○JTB、初任給を3万2000円引き上げ…再雇用シニア社員にも賞与支給へ
2024/01/11

 人材を流出を防ぐため、再雇用したシニア社員に賞与を支給することも決めた。年収ベースで24%上がることになる。
 JTBはコロナ禍で業績が悪化して新卒採用も一時見送り、人員の削減を進めていた。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240111-OYT1T50132/

しかしその陰でおこわなわれたリストラの話題にも事欠かない。
それはグローバル展開をしている企業でも常態化しているのではと思われる。

○バイエルが多数の管理職従業員を削減へ、「苦境脱出」目指す
2024年1月18日

医薬品や農薬を手掛けるドイツのバイエルは、管理職層の大幅な人員削減を含む抜本的な改革計画を打ち出した。

  17日の発表文によれば、従業員らは「多くの管理職従業員」の削減を意味する新しい経営モデルの確立を支持した。人員削減は数カ月以内に始まり、2025年に完了する。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-01-17/S7F5GRT1UM0W00

○セールスフォース、従業員700人削減へ-ハイテク業界のレイオフ続く
2024年1月27日

クラウドベースの顧客管理(CRM)ソフトウエアを手掛ける米セールスフォースは、従業員約700人を削減する。テクノロジー業界では年初からレイオフの動きが相次いでいる。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-01-26/S7VHD0DWLU6800

こうした人材のポートフォリオの組み替えは今日の企業業績が好調だからといってしないわけではなく、常に人材戦略の見直しが求められるのだろう。その時に一緒に語られる言葉に「ジョブ型雇用」という言葉があるが、その取り組みはごく一部の企業にとどまっているだろう。

日本で大多数を占める中規模以下の企業にとってジョブを固定化していては柔軟性の高い企業運営などはできない。フットワークの良さを前面に出すことを考えるとジョブ型雇用が最適解とは思えない。

■リスキル

人材の質の向上を願うのであれば戦略は決まっている。
・不足する人材を外部調達(採用)する
・能力向上の教育・訓練をする
・適材適所(ローテーション)に努める
と言うのが王道であろう。
しかし、2024年問題に端を発するとおり人手不足である以上、「教育訓練」がより重要になる。当然配置転換や上位職種への転換を意識した教育訓練は有効であろうと言うことは誰でも思いつくことであり、特に喫緊の課題であるDX人材の育成は急務であるというのは誰でも賛同するだろう。

そうした流れの中で「リスキル」が注目を浴びたのは理解できるし、政策の一部を担うことも理解できる。

○リスキリング支援「5年で1兆円」 岸田首相が所信表明
臨時国会召集 旧統一教会問題「説明責任果たす」
2022年10月3日

第210臨時国会が3日召集された。岸田文雄首相は衆院本会議で所信表明演説し、個人のリスキリング(学び直し)の支援に5年で1兆円を投じると表明した。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題について「国民の声を正面から受け止め説明責任を果たす」と強調した。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA30ACD0Q2A930C2000000/

もっとも、同じ記事の中で「政権が重点的に取り組む3分野に「物価高・円安への対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」を掲げた。」とあるように、「お金を出すがそれ以上には関わらない」と言っているようで、確かに関連する補助金などはあるものの、その効果のほどが全く分からない。関連データを探せないからだ。

最近の日経新聞などで「リスキル」を検索しても、この一年トンと出てこない。
忘れ去られたかのような「リスキル」が納得できない。

■リスキルの当然の帰結

とはいえ、経営に関する危機はそんなことは待ってはくれない。
リスキルに群がる教育期間やコンサルタントの声に耳を傾けているヒマはない。
人材育成は常に課題なのだから、経営もそれに向き合うしかない。

しかし、当たり前に考えれば「リスキル」に時間を欠けている余裕などはない。なぜならば、働く人々にとって、現業をこなしながらの学習などは片手間で市価できない。その成果を過剰に期待されても困る。会社が強力な支援をしてくれるわけではないならば、そこでえられて自己能力は自分のものである。もっと処遇のよい会社を選ぶのは当たり前である。

こうして、企業は「ジョブ型雇用に名を借りた外部調達」と「事業再編で余剰となった人材のリストラ」に走る。

まぁ、今の現状から考えると「リストラ」は絵に描いた持ちである事は納得できる。

さて、現場を知らない身としては実際どうなんだろうと思う。
誰か知っている?

2024/07/06

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