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コスパの高いアイデア  ~自動車編~

 こんにちは!中小企業弁理士のnabです。本日は「コスパの高いアイデア」というテーマでお話させていただきます。先日、ホンダが「車酔いにくさ」を追求した車を開発したというニュースが挙がっていました。

  車と言えば、技術課題として「燃費性能」「耐衝撃性」が多いイメージですが、今回ホンダが開発した車は「酔いにくさ」を課題としています。この課題設定について、知財観点で評価してみたいと思います💦最後までお付き合いいただければ幸いです。

 表紙画像は、みんなのフォトギャラリーよりいただきました。横田裕市さんありがとうございますm(__)m。

 まず、自動車分野において、「課題」「燃費性能」「耐衝撃性」を課題にしている公報はそれぞれどのくらいあるのでしょうか?

 特許公報には、「解決すべき課題」の記載があります。「解決すべき課題」の箇所に、関連するキーワードが記載されている可能性の高い特許公報の数を、特許検索を行って確認しました。

課題別・特許公報等のヒット数

 検索結果によれば、①燃費②衝撃性を課題としている特許公報等に対し、③乗り物酔いを課題とする特許公報等が圧倒的に少ないことが示唆されています。

 一般的に、特許審査において、「ありふれた課題」は権利化されにくく、「従来にない課題」は権利化されやすい傾向があります。件数が少ないということは、それだけ開発競争も激しくない領域であるといえます。

 さらに、燃費性能や、耐衝撃性は、昔から検討されている課題ですから、大きなブレークスルーを生むには、開発にかけるエネルギーも必要になります。上記の観点からいくと、③乗り物酔いに関する課題は優れているといえます。

 では、③乗り物酔いする車に開発ニーズはあるのでしょうか?いくら課題が従来にないののでも、ニーズがなければ研究・開発する意義はありません💦

 調べによると、20~50代男女で乗り物酔いをする人の割合は、24.8%だそうです。燃費性能、耐衝撃性と一概に比較できませんが、乗り物酔いに関する課題は開発ニーズも高そうですね。

 3つの課題を、開発ニーズと課題の目新しさのマトリックスにあてはめると以下のようになります。特許化しやすく、開発難度が比較的や競争が少ない青丸ゾーンは、対費用効果が高いと考えられます。言い換えれば、青丸ゾーンのアイデアはコスパが高いといえます。

開発ニーズ×ありふれた課題

 では、ホンダの、乗り物酔いに関するコスパの高いアイデア(特許)を1件ご紹介させていただきます。

【特許番号】特許第6743072号
【登録日】令和2年7月31日
【発明の名称】制御装置、制御装置の動作方法及びプログラム
【出願人】本田技研工業株式会社

特許6743072より抜粋
特許6743072より抜粋

 この特許の概要は、「カメラセンサーなどで乗員の着座方向を検知し、前を向いていない乗員がいると判定された場合に【上図(b)】、車両の加速・減速の鋭さを制御し、後ろ向きの人が酔わないようにする。」ものです。

 この特許の内容は、後付けでいってしまえば誰でも思いつきそうなシンプルなものですが、本件は、拒絶されることなく特許化されています。

 このような、従来にない課題に目をつけたアイデアは、送風機において「におい除去」という課題を解決したシャープのプラズマクラスター、飲料水において「脂肪の吸収」という課題を解決した花王のヘルシアなど、たくさんの事例があります。

 ありふれた課題になる前に、多くの関連特許を取得し、他社の模倣を抑止していけば、「乗り物酔いしない車」といえばホンダというように、ブランドイメージも構築されていくと思われます。

 従来にない課題かつ開発ニーズの高い課題にチャレンジしすることは、対費用効果から、特に資金の少ない中小企業・ベンチャー企業に有効な手段だと思われます。

 最後まで、おつきあい頂きまして、ありがとうございました💦特許情報は、このようにマクロな視点で分析することも可能です。皆さんも特許情報を活用して、コスパの高いアイデアを資産化してください😊

 

 


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