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アイデア・技術の資産化は、「発明の認識」から!

 こんにちは!元中小企業弁理士のnabです👍本日は、発明が資産化(権利化)されるまでのステップを紹介するとともに、一番最初のステップである「発明の認識」について、実例を挙げてご紹介したいと思います。記事のサムネは、みんなのフォトギャラリーよりいただきました。稲垣純也さんありがとうございます😊

(1)資産化までのステップ

  • 発明資産化(権利化)までのステップは大まかに以下の4ステップです。

  • 1.発明の認識→企業で行われた研究・開発に関する仕事を「発明」であると認識する。

  • 2.特許調査→認識された発明について、どこまで先行文献で開示されているかを調査する。

  • 3.特許出願→調査した先行文献の開示されていない部分を、ポイントとして文章化する。

  • 4.出願審査→特許庁審査官に対して、出願した発明のポイントを主張のやりとりを行って、権利化を図る。

  • 企業知財と特許事務所での勤務した経験から、①②は企業知財の業務で、③④は特許事務所の業務といったすみ分けがあるようです。しかし、中小企業・ベンチャー企業さんで知財部のない企業は、①②の業務を行う専門家がおりませんので、せっかく企業で生れた発明を取りこぼしている可能性があります。そこで、本記事では、特に発明の資産化の最初のステップである「発明の認識」について実例を挙げながら解説していきたいと思います。

 特許法における発明は、「自然法則を利用した技術的思想のうち高度なもの」と定義されています。例えば、ゲームのルール、数学の公式、経済の法則などは、単なる取り決めであり、発明に該当しません。

(2)いきなりステーキ・サービス概要

 発明該当性の指標となる事例として、通称「いきなりステーキ」事件をご紹介させていただきます。サービスの概要は以下の通りです。

1.お客様を案内するテーブルには、テーブル番号と、テーブル番号を記載した札Hを置いておく。(下図参照)

2.接客スタッフは、ライスなどステーキ以外の注文を受付ける。ステーキ以外の注文を受け付けて,テーブル番号が示されたオーダー票1を作成する。顧客は、上記テーブル番号を記載した札Hを持って、カットステージまで移動する。

特許公報5946491号より抜粋

3.スタッフは、カットステージにおいて、伺ったステーキの量をカットする前に、お客様から伺ったステーキの量を肉のブロックからカットし,そのカットした肉Aを,お客様の前で計量機に乗せ,計量機に数値を表示させ、顧客の了解を得る。(下図参照)

特許公報5946491号より抜粋

4.ステーキには、予め種類に応じて価格を決めておき、計量機が示した数値をステーキAの料金とする。

5.計量機から打ち出された,ステーキの種類及び量,価格,テーブル番号が記された2枚のシールの内の一枚をステーキのオーダー票2とし,先のステーキ以外のオーダー票1に貼着することにより保管し,お客様には,案内したテーブルに戻って頂く。

6.お客様の要望に応じてカットした肉Aには,先の計量機から打ち出されたもう一枚のステーキの種類及び量,テーブル番号等が記されたシールSを付し,他のお客様のものと混同が生じない状態として,ステーキを調理する。(下図参照)

特許公報5946491号より抜粋

7.ステーキを,ライス等の他のオーダー品と共に,保管したオーダー票1でその商品を確認し,オーダー票1と共にお客様のテーブルに運ぶ。

(3)発明を認識する

 さて、このステーキの提供方法の一体どこが発明なのでしょうか?当初の特許庁の判断は、「札」、「計量器」、及び「印し」という物に、技術的特徴はない。として、発明該当性が否定されていました。しかし、その後の、知財高裁の判決で、「札」、「計量器」、及び「印し」は、他のお客様の肉との混同を防止するという効果との関係で技術的意義を有するとして、発明該当性を認める判決が下されています。他のお客様との肉の混同を防止するという課題を「札、計量器、印しを用いて、カットした肉とその肉の量を要望したお客様とを1対1に対応付ける」ということによって解決している点が発明該当性を認めるポイントとなったようですね。

知財高裁判決文より抜粋

(4)まとめ

上記事例から、従来にないような課題、その分野特有の課題を解決するようなアイデアや技術を考え出した場合、発明に該当している可能性がある。といえます。開発現場において、解決できなかった課題を解決するようなアイデア・技術を思いつき、完成させた場合は、企業の知財部や、お付き合いのある特許事務所に相談して見てください。大したことないと思っていたあなたのアイデア・技術が、無形資産に化ける可能性があります💡

 過去の関連記事として、くら寿司さんのモバイルオーダーシステムについて、私が独自に発明の認識を試みた記事がありますので、興味がある方は、こちらもご参照ください。

 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました💦
 2021年よりコーポレートガバナンス報告書に知財情報の開示が義務付けられたり、近年、民間及び特許庁から、特許のライセンス化を促進するサービス提供が行われたり、特許権が「財産」として認識され始めてきています。発明の認識について、相談するような場所が無い場合は、私でよければご連絡ください。可能な限り、相談に乗らさせていただきます😊

ちなみに日本弁理士会も無料相談を行っています。


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