パリ13区のマンガ喫茶!? 某公営放送の番組『ドキュメント72hours』、なかなか力の入った良い特番でした〜
観ていて、気持ちが温かくなる某公営放送の番組『ドキュメント72hours』。必ずというわけではないが、たまたまみかけるとつい観てしまう。どこかの街のなんていうことない風景を切り取って72時間のレポを届けてくれる。
思い出すのは・・西のほうの国道の脇にあるうどんやラーメンなど食事系の自動販売機の72時間。やってくるのはトラック運転手や意外にも地元の住人たち。食べにくる理由はそれぞれ。小さい時から親に連れられて来ていたとか、無性にこの味が(自動販売機の)食べたくなるとか、ネットで見かけたからとか・・
と言いつつ、今回は海外編だ! パリオリンピックにちなんでレポしたのであろう。
13区にあってなかなかおしゃれな、パリの漫画喫茶『マンガ・カフェ・V2』
オタクの息子さんとそのお母さんが18年前に始めたマンガ喫茶だそうな。
2024年6月1日の土曜日11:00からの72hoursを追う。それにしても、親子でやってくる人たちの多いこと。子どもといっても幼児から小学生、中高校生まで年齢は様々。子どもだけでなくその親たちもすでにマンガ世代なんだな、フランスって。
子どももその親も読むマンガは別々。鬼滅の刃、SPY×FAMILY、薬屋のひとりごと、進撃の巨人、推しの子、ブラッククローバー、呪術廻戦・・あたりは日本もフランスもご同様の最近の人気作品だ。
GTOが好きという女学生、こんな鬼塚のような先生はフランスにはいないと彼女は宣うが日本にもいないよ。パリに滞在した折にGTOをアニメで観たことがあり、ドラエもんの格好をした鬼塚が「僕、ドラエモン」➡️「Je m'appelle Doraemon./ジュマペールドラエモン」と言うシーンが笑えた!!!(フランスの声優さんがうまくて日本の鬼塚の声優さんと声質も似ていた)
人気マンガだけでなく、マンガ通のごとく、例えば谷口ジロー(孤独のグルメ)のマンガが好き!という強者もいたりする。当方は「犬を飼う」が好きだった。
あるプロのバスケットボール選手は登山の趣味をもったきっかけが、谷口ジローの「神々の山嶺」だったと語る。谷口ジローはフランスを初めとして、EU内で日本以上に評価が高く人気のある作家だそうだ。
子ども2人とやって来ていたマンガ出版社勤務の男性、日本語が堪能でどのマンガが好きかと尋ねられて「手塚治虫の火の鳥」と答えていた。渋いね。日本のマンガは子どもだましをしない、善と悪がグレーなところ、そして主人公が不完全なところがいいと語っていた。
弁護士になるために1日8〜9時間も勉強するという勉強漬けの大学生、ひと休みで自分の好きなものに没頭する時間、マンガで自分の時間を楽しむのが好きという。心理描写より主人公が成長するストーリーにひかれるとも。
例えば「NARUTO」を読むと、最初は弱くて落ちこぼれの少年が少しずつ強くなっていく様子をみて自分もベストを尽くそうと思えるし、マンガの力に深く感動しそれは尊いし前向きになれると語る。
おお!なんて素晴らしい!!!マンガを通して作者の伝えたいことが、こんなにもストレートに国を超えて広がっていくさまは、マンガ家ではないけど自分のことのようにうれしい〜
60歳の初老の夫婦は10歳ほどの子どもたち2人連れでやってきた。再婚したステップファミリーらしい。奥さんのほうはマンガ初心者で、お店のスタッフに勧められ「深夜食堂」を読み始めた。家族でマンガ喫茶に集い、ご飯を一緒に食べ、これが大切と語る。大事なこともささいなことも話し合える、これが幸せとも。この漫画喫茶のスタッフも雰囲気もすべて「Vraiment Sampa/ブレモンサンパ!」(感じ良く好ましい)とそのステップファミリーのご主人が笑顔で叫んでいた。
ソファの肘掛けに腰掛けて「葬送のフリーレン」を読んでいる女性は双子の息子たちからすすめられて読み始めたらしい。人生の哲学が描かれていて面白いと感想。彼女は離婚していて、息子たちは母親と父親の間を交代で行き来しているのだそうだ。だからこの漫画喫茶には隔週で訪れているとのこと。母息子たち共有の時間。
日曜の午後、親と離れて暮らしているティーンエイジャー数名を児童養護施設の教員が引率していた。月に1回のお楽しみだそう。「グラップラー刃牙/Baki」が好きという少年は「ここは繭の中にいるようで僕に必要な落ちつけるところ」と漫画喫茶を表現・・フランス人って・・どうしてこんなに言葉の表現が哲学的で巧みなんだろうといたく感心してしまう。
アフリカ出身で大学を卒業してから2年間就職活動を行っているが職を得られない男性、面接の後に漫画喫茶に。「あきらめない」という日本語が好きだと言いつつ今回は「ブルーピリオド」を買っていった。
番組の最後、「Young GTO」を選んで読み始めた男性、鬼塚がどうやってGTOになったのかを知りたかったのだそう。以前の仕事と関係があって、寮の子どもたちの世話をしていたそうだ。子どもたちから兄のように慕われていたが、2年前に辞めたそうだ。子どもへの視点が欠けている経営側のビジネスライクなところが気に入らなかったそうだ。
子どもたちは人生に対する怒りや絶望からトラブルを起こし危険なことをすることを彼はよく知っているようだ。3時間ほどYoung GTOを読んで、教育者の仕事に少し戻りたくなったそうだ・・凄い”ちから”だね、”マンガパワー”!!!
さてはて、フランスは世界2位のマンガ大国で、日本の次に日本のマンガが読まれているとのこと。市場調査会社によると、フランス語に翻訳された新刊の日本のマンガが、2023年に約4000万部販売されているという。
この春、鳥山明が亡くなったときにはマクロン大統領や首相に財務相が弔意のコメントを発表していたことを思い出す。こちら=
まんが! マンガ! 漫画! ばんざーい!!!我らファミリー親子3人はマンガで育ったのだ〜
最後にパリで100人に聞いた「日本のマンガ人気ベスト5」をどうぞ!!!納得のいくランキングだと思う。
マンガの世界に浸り繭のなかで守られて自分の思いや心を成長させる環境を得る。なんて素晴らしい! ひと昔前には「マンガなんて読んでないで勉強しろ!」とか「マンガばかり読んでるとバカになる!」とか言われてたけど・・まったく逆だ。
日本に生まれてしあわせなわたしたち。そう感じることは減ったけど、まだまだいいこともある、とつくづく思った『パリの72hours』だった。