自分の殻をちょっと破ったら受けとめられて、いまの私
私は人と接することが好きである。
「おはよう」のあいさつから言葉のキャッチボールが始まり、
「おなかがすいたねー」と声を掛け合って出かけるランチ。
「おつかれさま」と会社を出るまでに、社内でたくさんの会話が繰り広げられる日常の出来事。
ここ最近は、対面の会話が失われていたが徐々に復活して嬉しい。
このように書くと、いかにも積極的な性格と思われるかもしれないが、人と話すのが好きになったきっかけは入社後3年目に訪れた初めての異動だった。部員が40名ほどいる部署で事務全般の担当となったが、女性の先輩は50代の方が3名。当時の私は、おとなしい性格であまり話をしない静かな日々を過ごしていた。
そんなある日、上司から週末はグループでカラオケに行こうと誘いがあった。
「カラオケ!」その言葉を聞いた途端、私は急にそわそわし始めた。実は今まで口に出したことはなかったが、大のカラオケ好きでマイマイクを持っているほどである。
会社の人がいる中でマイマイクを持っていくとオタクだって言われて恥ずかしいな。
でも、友だちと行く時は持っていくし、このマイクでないと調子が出ないなぁと気持ちは大揺れ。一晩考えた結果、「笑われてもいいから持っていこう!」とマイクをそっとバックに忍ばせた。
カラオケ店に着くと、さぁこれから選曲という時に私は興奮気味にバックからマイクを取り出し、思い切り声を振り絞って
「あの、私は自分のマイクで歌ってもいいでしょうか?」
と言った。私の第一声にまわりはシーン。
あちゃ、やっぱり持ってこなければと頭をかすめた直後に上司が「なんだ、お前はカラオケが好きなんだな。いやぁこれはいい。きっと歌もうまいんだろう」とお腹を抱えて笑い出し、ほかのメンバーも後を追うように「いいぞ、なべとも」と拍手の嵐。
その場に立っていた私は、まさに自分の好きなことがまわりに受け止められた瞬間で、大げさかもしれないが、いま天使が降りたような感覚だった。
小さい頃から自分の意見がなかなか言えずにもどかしさを感じていたが、口に出して言うと受け入れられることがある。それはなんて気持ちのいいこと!
その後のカラオケは気持ちよく存分に歌えたのは言うまでもないが、1つ山を乗り越えると人は強くなれるようで、翌週から上司や先輩に少しずつ話しかけられるようになった。
その後、私は人と話すのが次第に楽しくなり、今では社内ネットワークの名人と言われている。
きっかけは些細なこと。しかしながら、自分の殻を少し破るようなちょっとした勇気が必要だと思う。特に大好きなことに関しては。
あの時、エンジンをかけてくれた”マイマイク”はいまも大事に保管している。
書き続ける楽しみを感じています、その想いが伝われば嬉しいです~