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せがなくていいよ <雲を紡ぐ>

手がかじかんだ時は、熱いコーヒーをマグカップに入れて両手で持って温める。手が温まるとふわぁと息を吐く。

そこでふと、先日読んだ伊吹有喜さんの「雲を紡ぐ」に宮沢賢治さんの本が出てきたなぁと思う。「水仙月の四日」というタイトルで、こどもが凍えないように雪童子が雪で包み、雪を退かすというお話のようだ。

宮沢賢治さんの本は、自然と人間とのつながりを気づかせてくれるが、この本の主人公である高校生の美緒は、父親のふるさとである岩手県盛岡に心が惹かれてその地を訪れる。

盛岡という土地で、美緒がホームスパン(家庭で紡がれた手織り)に取り掛かることにより、祖父母と父母の関係、美緒と父母の関係、そして父母(夫婦)の関係が少しずつ変化していく。

昭和の時代だからか、土地柄か、はたまた遺伝か。言葉で伝えることなく、自分の仕事に打ち込んだことにより、大事な家族のつながりが失われていく。誤解だとか、そのことを知らなかったという言葉もあるが、相手に向き合うことの恐れがあったこともあるだろう。

しかし、一方だけに非があるのではなく、相手を見守る姿勢、相手を立てることで失望が希望に変わる姿がここにあった。

祖父の「せがなくていい(急がなくていい)」の言葉がおじいちゃんの心をすべて表しているようであったかい。

最後にこの一文で、さらにあったまってー💕

せきたてずにゆっくり見守ってやれば、あの子の言葉は自然にあふれてくる。


追記:この本は、第8回「高校生直木賞」を受賞されました。おめでとうございます!

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