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今月のジャズ: 11月、1977年@オスロ
Nov. 1977 “My Song”
by Keith Jarrett, Jan Garbarek, Palle Danielsson & Jon Christensen at Talent Studios, Oslo for ECM Records (My Song)
11月6日紹介曲に引き続き70年代オスロ録音のECMレーベル作品。
ピアノのキースジャレットはスタンダーズでのスタンダード曲とソロ即興演奏のイメージが強いが、メロディーメーカーとしてスタンダード曲も生み出していて、その代表曲が本作。
ここでのキースの演奏は、ほぼメロディーに徹し、軽やかな鼻歌と共に展開され、即興は最後部にさりげなく現れる。そこに至る道のりで耐え忍びつつ感情を表出する演出がツボで、涙腺を刺激する。
ヨーロッパ人によるメンバー編成でソプラノサックスを交えたニューエイジ系のテイスト。この繊細で艶めかしい音色のソプラノサックスは、ECMレーベルと相性の良いノルウェー人のヤンガルバレク。
さっと耳に触れると、同じソプラノサックスということもあって、後にポピュラー音楽家として世界的なヒットを生み出したケニーGを彷彿させる。ケニーGがガルバレクをどう思っているかは知る由もないが、何らかの影響を受けているように感じてしまう。
そのケニーGについては、商業的にはミリオンセラーを連発して大成功を収めるものの、業界内では同業者や批評家からかなりの批判を受けており、論争を巻き起こしたことから、その境遇に関するドキュメンタリー映画が制作されている。
本曲はジャズと言えるか?そして、ケニーGはジャズミュージシャンなのか?答えは人それぞれで定義は難しいが、ここはキースの言葉、「ブルース、魂が込められているか」を信じたい。そこに、ジャズの主要構成要素たる即興、演奏者間のインタープレイによる共振共鳴とメロディーやリズムの独自のアレンジが揃っていれば、立派なジャズと言いたい。
譜面を忠実に弾く、アルバムを再現する、予定調和というような、その場限りのハプニング要素の無い演奏はジャズとは言えない。その定義からすると、ケニーGの音楽はジャズとは言えないのかもしれない。ジャズにはミュージシャンの音楽に対する信念が宿っており、聴衆に迎合する耳障りの良いマーケティング音楽では無いと思いたい。
なんて書きながら、この映画の中に「ジャズポリス」なる言葉が登場することを意識した。元々はジャズミュージシャンを評価する事でセールスや一般的な愛好家に影響力のある批評家を指していたようだが、これが映画の中では生粋のジャズ愛好家を含む形で捉えられている。ケニーGの音楽を「セーフセックス」にかけて「セーフサックス」と呼んだり、食べても一時間後にはお腹が空いてしまう「テイクアウトの中華料理」に例えるといった行為を指している。スムーズジャズではなくて、スヌーズジャズ(居眠りジャズ)とも揶揄しているのも、その一角かもしれない。
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最もケニーGに辛辣と思われるのは、ジャズギター界の重鎮パットメセニーで、紳士で優等生的な発言が多いにも関わらず、“lame-ass, jive, pseudo bluesy out-of-tune, noodling.”、「説得力が無くて出鱈目、なんちゃってブルースの調子はずれ、まさぐっている」と語っている。何故、メセニーがこんなにも怒ったのかというと、ルイアームストロングの音楽をサンプリングした音楽を演奏した事に激怒したから。
最後の単語、”Noodling”の意味が分からず、麺好きとして、この言葉の意味は放っては置けないので色々と調べてみた。 Collins辞典によるとアメリカのスラングで”aimless musical improvisation”(目的の無い音楽の即興)とある。他にその意味を調べてみると”Messing around”(無作為にいじくり回す)というのもある。
Noodlingという言葉が、素手でナマズを釣る行為も含んでいるというと、イメージとしては、麺をたぐる、というところから、あちこち雑に掻き回す、とか無骨に引き上げるといったニュアンスがあるよう。勿論、良い意味では無い。
さて、自身がジャズポリスなのか、と自問自答してみると、先に記述した内容からするとアマチュアであるものの確かにその側面は否めない。では、客観的な事実として、愛用している東京都北区の図書館でのジャンルの取扱い分類を記しておく。
モンタージュ~ケニー・G・グレイテスト・ヒッツ 分類2C(ジャズ - 外国)
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グレイテスト・ヒッツ~ニュー・エディション 分類2D(ポピュラー(インストゥルメンタル))
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G・フォース 分類2G(ポップス インストゥルメンタル)
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図書館も一律では無くてジャンルの特定が困難な事が分かります。だからこそ売れたのだろうし、その筋の専門家からは批判の対象になる、という事なのでしょう。本人も先の動画の中で、「ジャズかもしれないし、ポップスかもしれないし、自分もよく分からない」と言っているのが、そのまま事象として現れている。
因みに本演奏に登場しているヤンガルバレクのECMアルバムが、中央図書館では分類2D(ポピュラー(インストゥルメンタル))としてケニーGのアルバムと同じ棚に並べられている。ガルバレク本人は、どう思うのだろうか。
さて、本作のキースが同じようにジャズポリスとして時代の寵児、トランペッターのウイントンマルサリスを批判した事に興味のある方はこちらの記事をどうぞ。
では、最後にメセニーによる本曲のソロギター演奏をどうぞ。
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