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今日のジャズ: 4月7日、1967年@ニュージャージーRVG

Apr. 7, 1967 “Alligator Bogaloo”
by Lou Donaldson with Melvin Lastie, Lonnie Smith, George Benson & Leo Morris at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ for Blue Note (Alligator Bogaloo)

アルトサックス奏者ルードナルドソンによる、
ラテン音楽「ブーガルー」を取り入れたジャズ風オリジナル作品のヒット作。

ジャズもこの時代になると、スタンダード曲の演奏では聴衆の注目を浴び辛くなり、六十年代前半にボサノバやラテンといった南米音楽を新たな題材として取り上げていく。

ここからは個人的な憶測だが、そんな状況でもジャズミュージシャンの大半は大衆化するロックには近寄りたくない。そこで音楽のジャンルを漁って南米繋がりで辿り着いた音楽の一つが、このラテン音楽のブーガルーなのかも知れない。そのリズムをジャズに取り入れてヒットした。

いつもご機嫌で張りのあるドナルドソンのアルトサックスは当然のこと、オルガンとギターの相性の良さも聴きどころ。3:23から、ジャズギターの巨匠ウェスモンゴメリーの後継者との売り文句で登場し、今や大物ポピュラー歌手となった若き日のジョージベンソンのギターソロとファンキーなオルガンマスターのロニースミスのバッキングのやりとりが面白い。

そのギターソロが続く中で4:05にドラムの間合いが入ったところから、ドラマーのレオモリスがスイッチを入れて、4:09、4:13、4:16、4:20、4:24とスネアを更にタイトに力強くスカッと叩くところが気持ちいい。これはビートルズを始め、ポピュラー音楽として定着したロックのスタイルを取り込んでの叩き方と推測する。ロックは音楽としてやらないが、要素としては取り込まれているように思われる。

因みにこの年に、ビートルズの「サージェントペパーズ」やクリームの「サンシャインオブユアラブ」等のサイケデリック色の強い作品が発売されている。これらの過激化するロックとジャズはレコード屋の棚の中で対等に競わなければならず、このようなノリの良いファンクな音楽が生み出されたのではないか。

そしてその後の70年代からジャズと他ジャンルの音楽の融合が進み、フュージョンというジャンルが生まれていくが、ルードナルドソンは、後日この行き過ぎを振り返るかのように、ステージで”Fusion is nothing but confusion!”とダジャレを言った後に、この曲を演奏していたのを思い出す。これが出ると、大御所の決まり文句、待ってました、という感じで観客が盛り上がる。

それを耳にしたのは、名門ジャズクラブのビレッジバンガード。公演前にトイレに行ったら、後ろの個室から本人が出て来て、目配せしてくれたのには驚いた。その表れた時の演奏同様にご機嫌な表情が忘れられない。

まさにこんな表情

この文章を書くためにウェブ検索をしていたら、我が国のグループサウンズバンドによるカバー曲が複数存在していることが分かった。

気になったので聴いてみた。先ずはこちらから。あの「ルビーの指輪」の寺尾聰さんがベース奏者としてクレジットされています。

次は、バンドのデビュー曲として採用、カバーされたもの。こちらの方が本家の作風に近い印象。

如何でしょう。ディストーションのかかったギターのイントロという共通点は偶然でしょうか。そして、アルバムジャケット同様にオリジナル曲よりも、サイケデリック色が強い感じです。両作品共に本家発表のほぼ直後の発売で、この頃になると欧米から日本への音楽の伝播の時差が縮まっている事が分かります。

調べる過程で、本作とこれらのカバー曲の関係についての、プロのライターの方による面白い考察を含んだ詳細記事を発見しましたので、ご興味ある方は是非ご覧ください。色々な見方がありますね。

ブーガルーについては、あのジェームスブラウンも本作の三年前、1964年に取り上げていて、そのダンス映像も残っていました。これらが間接的に本作に影響を与えているのでは無いでしょうか。ブーガルー音楽を踊るソウルのブラウン、やっぱり自己流に取り込んでいますね。

ドラムのレオモリス(その後、改名してイドリスムハマド)を更に楽しみたい方は以下からどうぞ。

オルガンをもう少し堪能したい方、その歴史に興味がある方はこちらをどうぞ。

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