見出し画像

今日のジャズ: 6月27-28日、1969年@ベルリン

June 27-28, 1969 “Romaine”
by Jim Hall, Jimmy Woode & Daniel Humair
at Teldec-Studio Berlin for MPS Records  (Jim Hall in Berlin)

米国人のジムホールが、欧州ツアー時にトリオを組んだスタジオ演奏を、本作の前年に創設された新興ドイツレーベルMPSが収録。鮮明で解像度の高い音質という点では同じドイツ拠点で本収録年に設立されたECMに傾向が似ている。

ミュンヘン拠点のECMに対してMPSは、スイスとフランスに国境を接する森林の多いドイツ南西部に拠点を置き、その名も”Music Production Black Forest”のドイツ語"Musik Produktion Schwarzwald"の頭文字を取ったもの。因みにECMは、”Editions of Contemporary Music”だから、共に絶妙に「名は体を表す」と言える。

アルバムジャケットは、屋台の前でギターケース片手に成人したであろう実の娘にホットドッグをアーンするという、ほのぼのとした情景で、第二次対戦後の冷戦下、スパイが暗躍していたであろうベルリンにおいても、これまでと変わらない日常が営まれているようなワンショット。その右横に見える張り紙の”Coca Cola”と”Fanta”が時代を感じさせる。

欧州の典型的な味付けの少ないフラットで自然なバランスの録音で、ありのままのギター、ベースとドラムのトーンが透明感と相まって新鮮で、爽やかなメロディーもあって初夏を彷彿させる。

この曲は4月24日に紹介したビルエバンスとのデュオの名盤(以下、曲名が”Romain”と、本曲”Romaine”と若干異なるが同じ曲)にも収録されている、ライナーノーツによるとボサノバの伝道師でもあった、ジムホールによるボサノバ風の作曲作品。

サイドマンとなると控えめなジムホールも、リーダーでトリオとなると手数も多く、独特の揺らぎのあるハーモニーとフレーズで曲を組み立てていく。それは油絵で色を重ねるかのように音を重ねてゆく展開。三分弱の短い演奏ではあるが、 1:47からアドリブの途中で頻出する典型的なジムホール節、「ウニウニもじもじ」フレーズも登場する。

ここでの聴きどころは、三者の楽器のトータルバランスと、スイングするベースのふくよかな箱鳴り、ドラムのシンバルの響き。特に56秒からの「チチチっ」の金属音の弾ける音がどこまで捉えられるか。

Teldecというドイツ電気機器メーカーの名を冠するスタジオという事もあってか、精密機械のように忠実な音質が硬質なベルリンの空気感をも捉えているかのよう。

本収録時は19回ベルリン国際映画祭の真っ最中で、ノミネート作品にはダスティンホフマン主演でアカデミー賞を獲得した「真夜中のカウボーイ」も含まれた。この曲のサントラには、一度は何処かで耳にした事があるはずのニルソンによる「うわさの男」と、テーマ曲にはジャズハーモニカ奏者でセサミストリートのテーマも演奏したトゥーツシールマンスが起用されている。

左のジョンボイドはアンジェリーナジョリーの父

ベルリンには映画だけではなくて由緒あるジャズフェスティバルがあって同年11月には男爵エリントンと、マイルスが参加、それぞれライブアルバム化されている。

エリントンのライブアルバムは、
’69年と’73年に収録
マイルスには複数、ベルリンでのライブ盤がある

「真夜中のカウボーイ」の主題歌を演奏したトゥーツシールマンスの演奏に興味を持たれた方は、こちらをどうぞ。

ジムホールの演奏を更に堪能したい方は、こちらのフュージョン調のジャズもどうぞ。

最後に同組み合わせのギタートリオに興味を持たれた方は、軽快なこちらの演奏もどうぞ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?