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ジャズ記念日: 12月24日、1964年@ニュージャージーRVG

Dec. 24, 1964 “Speak No Evil”
by Wayne Shorter, Freddie Hubbard, Herbie Hancock, Ron Carter & Elvin Jones at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ for Blue Note (Speak No Evil)

主に新主流派メンバーで編成された、テナーサックス奏者、ウェインショーターのリーダーによる自作自演曲。クリスマスイブの録音。リズムセクションのピアノのハービーハンコックとベースのロンカーターは、当時のマイルスが率いるバンドの盟友ゆえの安定感ある組み合わせ。

マイルスの代わりにフレディハバードが、ドラムにエルビンジョーンズが入る事により、微妙に生じる不協和音が新鮮な刺激を生み出し、黒魔術的なトーンを操るショーターの独壇場となっている。

因みに、コルトレーンの代表作でもあり、モダンジャズ屈指の名盤とされる”Love Supreme”は本作の15日前に同じルディバンゲルダースタジオで収録されている。つまり、エルビンはコルトレーン黄金のカルテットの絶頂期の真っ只中に居る、最も脂の乗った時期と言える。

ショーターは、そのコルトレーンに影響を受けながらも、フレーズのストックを多用しない、その場限りの演奏を繰り広げる、手厳しいアルトの巨人リーコニッツが認める数少ない真のインプロバイザーと言える。

ショーターの1964年は、4月に”Nightdreamer”、8月に”Juju”、そして本作が三作目となる多作の充実期、ピアノのハンコックもハバード、カーターと共に同年に以下名盤を制作しており、エルビンと同様に勢いのあるメンバーが結集して創られた作品と言える。

演奏はエルビンの力強いパルスを受けてか、ここでのハンコックのバッキングやソロは、コルトレーンの右腕ピアニスト、スタイリッシュな切れ味の鋭いマッコイタイナー調になってバリバリ弾きまくっているのが興味深い。4:19からのハバードのソロも新感覚に満ちたスリリングな展開で、組み合わせの妙が味わえる。

ブルーノートの定番デザイナーのリードマイルスが手がけた本アルバムジャケットには当時のショーターの奥様、日系人の中上輝子さんが登場している。この中上さん、残念ながらショーターとは離婚してしまうが、再婚相手がこれまた凄い。

Billy Dee Williams
スターウォーズのランドカルリジアン役の俳優

このカップル写真では、時代もあってか、中上さんは何となく小野ヨーコさんに似ています。

奥様登場アルバムジャケットと言えば、本作に参加しているハンコックのこちらの作品もあります。この写真はハンコックの知り合いが撮影したものだそう。

アルバム名にもなっている曲名、”Speak No Evil”は、何処となくぎこちない耳触りの英語の印象を受けます。もしやと思われた方は正解で、あの「見ざる、聞かざる、言わざる」の英語版 "see no evil, hear no evil, speak no evil"からの引用です。これもオリエンタルな中上さんを採用したアルバムジャケットと合わせた演出でしょうか。

ショーターには、アマゾンプライムで、ブラッドピット製作総指揮のドキュメンタリー映画があるのでご興味がある方はご覧ください。その人生がほぼイコール、モダンジャズの歴史となっているところが巨匠の成し遂げた境地です。因みに先の中上さんとの出会いと別れについても触れられています。

ショーターの名演は、こちらからもどうぞ。

ハッピーメリークリスマス!

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