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ファンタジー大好き主婦が選ぶ尊いオブ尊いファンタジー。僕と魔女についての備忘録

恋とは?家族とは?愛とは?
「僕」が残した魔女と人間、異なる時間を生きるふたり(と一匹)についての備忘録。

あらすじ

「僕」とは、2歳の頃親に捨てられて鴇守(ときもり)の魔女に拾われた男の子「渉」です。魔女と黒猫の蛍は彼を「坊」と呼びます。わたしも彼のことは可愛くてしょうがないので坊と呼ぶことにします。
物語の中では魔女の本名を知ることはタブーなようで、鴇守の魔女は魔女さんと呼ばれています。魔女さんはぐーたらで家事は好きではない様子。
坊はとても健気で、魔女さんに喜んでもらうために蛍の手を借りてパンケーキを焼いたりと家事に勤しみます。
魔女さんはそんな坊が可愛くてしょうがない。学校でいじめられてると知るとこっそり様子を見に行くほどでした。
一方、坊も魔女のことは大好きですが、その好きは親代わりとしてでは無く女性としての好き。幼い坊に蛍が魔女さんのことをどう思っているのか聞くのですが、坊は「可愛い」と答えます。大きくなるにつれてその好きをどんどん自覚する坊ですが…。

ここからは、わたしが感じた「僕と魔女についての備忘録」の好きなところをぱらぱらとご紹介したいと思います。

人肌の温かさが感じられる絵

作者の三つ葉優雨さん(←お名前も優しげな絵と合っていてステキ)はお子さんがいるそうですが、だからでしょうか子どものふかふかした肌感がリアルに描かれていて、魔女さんが事あるごとに抱きしめたくなる気持ちがすごくよくわかります。
第一話で蛍と坊、魔女さんと坊がぎゅっと抱き合うシーンは自分までじんわり温かくなるようでした。

美味しそうなごはんの数々。。。

魔法で渋さを抜いた柿、秋刀魚の塩焼き、栗ご飯、シチュー、ホットケーキ、卵とトマトのスープ、煮詰まったココアにオレンジジュースなど。作中にはたくさんの美味しそうなごはんが出てきます。
それぞれのメニューに、魔女と蛍と坊の思い出が詰まっている様です。
血のつながりはなくそれぞれ違うもの達同士が集まった奇妙な家族をつなぐもののひとつがこの食事。
食事の印象が強いのも、キャラクター達が食べることに重点を置いているからでしょうね。

異なる時間軸を紡ぐ様に進んでいく物語

まず、既に坊と蛍がいなくなっているときからはじまります。

坊がいなくなった世界で、魔女さんは坊が残した備忘録を広げて涙を流します。その傍には蛍の子、黒猫の朧が寄り添います。

さらに物語は坊が小学生の頃に戻ります。
この頃の魔女さんは、可愛い坊が少しづつ大きくなっていく様子をを嬉しそうに眺めています。

魔女さんと蛍と坊が魔法使いの集会に行った際、他の魔法使いの魔法で成長した姿となった坊が魔女さんに告白したときはさすがに少しドキリとした様ですが、お酒を飲んでいたからかまだ坊が幼かったからか魔女さんはそのことを覚えていないというオチ。

そして2巻の冒頭では坊がまだ4歳くらいの頃の坊が書いた備忘録で柿を通して出会った頃のことが綴られます。

さらに月日は巡り、坊は高校生になります。そこから少しづつ、魔女さんと坊の関係が動き始めます…!?

電子コミックス内の特典も見逃せないですよ!

長い年月を生きているはずの蛍と魔女の愛情深さ

長い年月を生きると感情って鈍化しそうなものですが、蛍と魔女さんはとても愛情深いのです。
坊が小学校でいじめにあうのも彼らにとっては大事件だし、坊との暮らしをふたりとも幸せだと言う。

たまに入る蛍目線からの語りもいいですね。ふたりの関係を見守る蛍は魔女さんよりも長生きですので、魔女さんと坊がどのように考えて行動しているかもお見通しです。さっぱりとした物言いですが、ふたりの幸せを願っていることが見て取れます。

長く長い年月の中でも毎日気持ちを込めて丁寧に過ごす魔女さんと蛍の様子がとても好きです。

おわりに


わたしと娘は血が繋がっていますが、夫はいわば他人。しかしわたしは娘だけでなく夫も大好きです。
寝食を共にし、辛さや喜びだけでなくくだらないことまで共有して今があります。
もしかしたら血の繋がった両親よりも心が近くにある存在かもしれません。しかし他人だからこそ何かの拍子に気持ちが離れてしまう可能性も十分にあります。

だからこそ備忘録に出てくる魔女さんと蛍と坊の絆に温かさと切なさを感じます。

年齢を重ねたからでしょうか。
冒険活劇のようなファンタジーももちろん大好きですが、淡々と時が流れる様なじんわりと愛が漏れ出るようなしっとりしたファンタジーも心地よいです。

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