ながめる「天正遣欧少年使節」

千夜千冊 1518夜は、楠木建さんの「戦略読書日記」。
話として、ビジネス戦略に落とし込んでいくので、
ビジネス書が大半ではあるが、それらばかりではなく、
ユニークな選定となっている。
私の好きな本「おそめ」(石井妙子 著)を扱った章題は、
『暴走するセンス』。祇園芸妓「おそめさん」の銀座の水商売の話。
全部で21章ある内の、20章が「クアトロ・ラガッツィ」を扱っている。
章題は、『グローバルとはどういうことか』。
天正遣欧少年使節をプロデュースしたヴァリニャーノ神父に焦点をあてる。
しかし、私が「クアトロ・ラガッツィ」を読みたいと思ったのは、
その本の著者:若桑みどりさん(故人)のこと。

西洋美術史を長く研究してきた著者は、還暦を迎える1995年のある夜、こんな声を内心に聞いたという。「東洋の女であるおまえにとって、西洋の男であるミケランジェロがなんだというのか?」
(・・・)
自分が無我夢中で研究してきた対象と自分をつなぐものが何もない。自分がミケランジェロを研究する必然性がない。
(・・・)
本書は「人類は異なった文化の平和共存の英知を見つけることができるだろうか」というきわめて壮大な問いに対して、著者が人生をかけて答えを出そうとした力作である。若桑さんは本書を出版した四年後の2007年に他界している。

第20章 グローバル化とはどういうことか P. 387

「クアトロ・ラガッツィ」をほぼ読み終えたが、まだ消化中。
4人の少年の意。伊東マンショ、千々石(ちぢわ)ミゲル、中浦ジュリアン、原マルティノの4人。上下巻あり、上巻の途中でほうっていた。

古楽アンサンブル「アントネッロ」の『天正遣欧使節の音楽』の存在を知り、また「クアトロ・ラガッツィ」を読み出した次第。

アントネッロ率いる濱田芳通さんは、
著書「歌の心を究むべし」の中に『桃山ルネサンスの南蛮音楽~日本人のアイデンティティ』という章を設けている。

「あなたは日本人なのに、なぜヨーロッパの音楽をやっているのか?」
ヨーロッパ滞在中によくこのような質問を受けた。
(・・・)
なぜヨーロッパのしかも何百年も前の音楽がこんなにも身近に感じられ、愛してやまない存在なのか。その理由が知りたいという気持ちは常にあった。
(・・・)
ルネサンス・スペイン、ポルトガルの歌は「日本のわらべ唄や民謡に似ているなぁ」ということに気が付いた。
(・・・)
ポルトガルやスペインのガリシア地方などはケルト音楽の文化も持っている。ポルトガル植民地時代に伝わったマレーシアの伝統音楽なども非常にケルト調であるし、もしポルトガル伝来でこのようなタイプの音楽が日本人の血の中にも入り込んでいたとすれば、明治時代に輸入され文部省唱歌『蛍の光』『仰げば尊し』などのもととなったスコットランド民謡などケルトっぽい音楽が、抵抗なく日本に浸透したことの理由にならないだろうか。

桃山ルネサンスの南蛮音楽~日本人のアイデンティティ P. 85 - P. 96
 

で、濱田さんが「早く大河ドラマに取り上げてほしい」と望んだドラマがあった。

ドラマは、個人の想像力を制限してしまうのだろうが、
ストーリーとして理解しやすい。面白かった。
約30分×約10話。
信長の頃に、旅だった少年使節が、
秀吉が日本王となっていた日本に帰国する段階まで。
サイドストーリーとして、
実話ナレーションが、約5分×約10話。まだ、途中だが。


次に味わいたいストーリーは、
渡辺京二さんのものかなぁと考えつつも保留。
徳川の時代に重心を置いているとか。


若桑みどりさんの、他の著書も気になる。第三次世界大戦の時代ですので。