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代替肉の不味さを受け入れるということ

最近いろんな種類の代替肉を食べるようになった。はっきり言って美味しいものは少ないので、何か買うときはマシなものを探し求めている。

機会の増加

肉の環境負荷が社会課題としてSDGsの文脈で語られ、豆類などからできたプラントベース(植物由来)の代替肉が手に入りやすくなってきた。
以前なら一部の情報感度や社会課題への意識が高い人のものだったが、たまたまランチで入った店がヴィーガンの店で美味しくランチを食べたり、コロナ禍でフル活用しだしたネットスーパーで買えたりするので、食べる機会が増えた。

あと、食肉をめぐる課題を知ってしまうと食生活での配分を減らそうと思えてくる。でも、食肉が作られる工程に立ち合い、どのように処理されるかを深く知って肉を食べない選択をするほどではない。


代替肉ハムの不味さにショック

代替肉は「動物油脂、肉エキス、肉フレーバーなどは使用しておりません。」と明記しながら肉に似せて作っている。
キーマカレー、坦々麺、ハンバーガーと味の濃いものは良いのだけど、無理に肉に擬態しなくて良いものもある。

ショックを受けたのは大豆ミートにハムだった。

ハムと同じでペラっと薄切りで重ねられ、つるつるの表面で硬さもハムそのもの。香料によって燻製された肉のような香りもついてる。
でも、それはハムではなかった。噛み切れるゴムのような粘り気のないガムのような…。


深刻な事情

ハムに模した何かが不味くても、それが作られるに至った深刻な世界の事情がある。

思い返せば、まともに動物を絞めて食べた経験がないので、食肉にはスーパーで切り身になっているか飲食店などで既に調理された状態しか接点がない。
生命がどのように生産され食べるために「処理」され肉片となってスーパーマーケットに陳列されるのか「情報」でしか知らないけれど充分に事情は理解しているつもり。


オックスフォード大学が運営し世界中のメディアが引用する「Our World in Data」によると、食肉の増加量が年々加速しているという。

・世界では現在、50年前の3倍以上の量の肉が生産されている。
・毎年、800億匹の動物が食肉用に屠殺されている。
・世界が豊かになるにつれ、肉の消費量は増加している。
・一頭の動物から生産される肉の量は、生産システムによって世界各地で大きく異なる。

上記をはじめとするさまざまな事情があるから、代替肉への転換が必要とされている。

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Global meat estimates and projections, World, 1961 to 2050より


毎日途切れることなく売られている食肉は「工場型畜産」によって作り出され、多数のアニマルライツや環境の問題がともなう。


社会正義の味

肉に代わる代替タンパク質が肉を模して進化していくことに、人類の肉への執着の強さを感じるし、実際自分も肉に代わる良いものを探し求めている。

プラントベースミート(代替肉)の購入者は、ヴィーガンとしてではなく、肉も菜食も取り入れる「雑食」な考えを持っているという。(肉は動物のものも代替肉も食べるというスタイル)
アニマルライツや環境問題だけではなく、自分の健康のために肉を控えるという人もいる。

コンサルタント会社A.T.カーニーは、食肉供給が2040年までに50%以上減少すると予測しているが、いくつかの要因に老舗の食品会社が参入があると指摘している。
数年後には、今のようにわざわざ選ばなくても当たり前のように普段の食事に使われていくかもしれない。

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「How Will Cultured Meat and Meat Alternatives Disrupt the Agricultural and Food Industry?」(人工肉と代替肉が農業と食品産業について与える影響について)より

代替肉は社会正義かもしれないが、不味いものを作れば廃棄になり結果的に環境に優しくない。
フランケンフードという言葉がある。これは遺伝子工学によって作り出された動植物を使った食べ物を意味していて、フランケンシュタインに由来している。(フランケンシュタインは墓を暴いて作られた人造人間)
過剰な加工、パッケージ膨大な成分表示を見ると、本当に食肉に比べて環境や人体に負荷のない生産加工品なのか信用しきれない部分がある。

あの大豆ミートハムは見た目にともかく、味は肉という感じがしなかったし不味かったとしみじみ思う。以前の恋人にそっくりなのに、まるで話の噛み合わない相手のように。良くない記憶なのに反芻してしまう。おかげでこんな文章を書いてしまった。
無理に肉のふりをしなくていいのにと思いながらも、肉に似た何かを探してしまう。そのうちトレンドに影響されて、動物の細胞を培養して生産される「培養肉」や、「昆虫食」を試して文句を言うかもしれない。
「なぜ代替肉がこれからの社会に必要なのか?」という問いは社会正義で説明がつくけど「なぜ肉を食べたがり、こんなにも肉に似たものを求めるのか?」という問いを不味い代替肉のおかげで気付かされた。
肉を食べることをやめられない。


Photo by Ilya Shishikhin on Unsplash

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