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オタクが2022年上半期に"見た"アニメを振り返る

アニメが大好き、藤吉なかのと申します。

一年も終わったところだし、2022年に私が"見た"アニメの中で特に大好きだったものをガンガン振り返っていくぜ…!!



1月『平家物語』

全世界待望の山田尚子監督の新作のオンエアが始まったので、この月は平家物語に夢中でした。まさかこの時点では同じ年の間にもう一作品監督作が公開されるなんて想像もしていませんでしたが…

2話以降の展開や物語の美しさも本当に書き表せないほど良いんですが、個人的に好きなのは山田監督自らコンテに携わっている1話なんですよね。


被写界深度を浅くして画面奥部をボヤかす実写的な画面や、悠木碧さん演じるびわの悲壮感も鳥肌必至。堪らない。
特に前者の画面構成は、山田尚子監督が影響を受けている小津安二郎のセンスを感じさせます。


でも何より素晴らしいと感じたのは、これだけ重い展開を描きながらも後半にしっかりギャグパートを入れているところ。

こればっかりは本編を見て確認して欲しいのですが、びわがご飯をモリモリ食べるカットや重盛の息子たちとじゃれ合うシーンでのびわ転倒カットなんて、まさにフィクションを用いてリアルに迫ろうとするアニメーションの美学が詰まっている。

父を惨殺されたAパートの直後にこれだもんね


細田守がムービーウォッチメンことRHYMESTER宇多丸さんのラジオに出演した時に「日常の動作を自然に描くと、アニメーションだとそれ自体がすごくいい。これが実はアニメーションのワンダーな部分なんだ」と言っていましたが、流石は湯浅政明という規格外のアニメーター・監督と仕事をしてきたサイエンスSARU。

山田尚子監督から絵コンテ段階でどこまで指示があったかは分かりませんが、ともかくここまでコミカルに、それでいて雰囲気も崩さずアニメーションの面白さも伝えること出来るの!?という衝撃。

あと、『けいおん!』のジャズ研後輩などにも見られる「山田尚子が描くモブ子ちゃん」がびわの世話役女中として出てきた瞬間の興奮ったらない!


あと、『その着せ替え人形は恋をする』もこの月のアニメでべらぼうに良かった作品。

効果音の文字化やコスプレ図解などの漫画的な演出でコミカルにギャグパートを描きながら、えっちなカットは一気に艶かしく!

『着せ恋』のコミカルパートは『ぼっち・ざ・ろっく!』3話「馳せサンズ」で我々を魅了してくれた山本ゆうすけさんの活躍した11話が印象的です。
山本さんの効果音やコマ割り風の画面構成でポップな画面にするセンスは無二…!


それでいて、最終話プールサイドのシーンのような「プールの水面が人間に反射する」さりげない美しさも描写する。
ただアニメ的な美しさを描くのではなく、敢えてこのハイレベルなリアリティを劇的に描くことで、視聴者が持つ「美少女と暮らす夏への憧れ」「存在しないあの日へのノスタルジー」の感情も呼び起こす素晴らしいシーンです。



雛人形の質感といい、最終回の花火といい、撮影スタッフさんがめちゃくちゃ天才なんだろうな…と感じさせられる作品。

めちゃくちゃ高クオリティなのですが、エロ要素やキレキレのギャグなどが作品全体に「飾らない」印象を与えていて、そこらへんの深夜アニメらしいバランス感覚も大好きでした。


喜多川さんと五条くんが海に行く回もロトスコープ風の作画スタイルで、独特の雰囲気を醸し出していましたよね〜たまらん!!

現代TVアニメらしい綺麗な作画だけでなく、アニメーションとして風格のある画面を常に提供してくれる『着せ恋』、どこをとっても隙がない!

この記事、開幕からめちゃくちゃ選考に迷いました。当たり前ですけど、『平家物語』と『その着せ替え人形は恋をする』に優劣をつけることなんて出来る人間いるの?


2月『化物語』

奇しくも1・2月ともに「物語」だ。

でもこの括り方をすると、あまりに両作品の演出の方向性違いすぎて笑っちゃいますね。

『平家物語』は実写らしい構図・演出でアニメの「動き」の良さを追求しているけど、『化物語』はアヴァンギャルドな演出でひたすらアニメにしかできない「止め」の良さを追求している作品という印象。「止め」に関しては詳細を後述します。


『絶望先生』や『電波女と青春男』でシャフトが大好きになったのでよっしゃ最高傑作を見てやろう!と意気込んで視聴したらマジで最高のアニメすぎてやられてしまいました。

OPテーマだけで言うと加藤英美里さんのお歌が可愛い真宵の「帰り道」やシャフトの冨樫義博こと天才・尾石達也による渾身の絵コンテが炸裂している「sugar sweet nightmare」マジで好きだったんですが、お話としての完成度で言うと圧倒的に1・2話が大好き。


最近は活躍が少し控えめな新房昭之監督ですが、今作ではやはりその腕を存分に振るっていて、さすが一時代を築いた演出家。
『アニメスタイル003』に収録されているインタビューで化物語のアニメ化を振り返り、制作に際して気を付けていたことを語っています。

西尾維新さんの作品を初めてアニメ化するにあたって、他のラノベのアニメとは格が違うんだ、ということを示したかったんです。(中略)
その当時、僕は打ち合わせなどで「文字を映像にするんだ」という言い方をしてました。

言葉からも、当時の気合いの入りっぷりが伺えて興味深い。カニの怪異を「蟹」の字で構成された存在として表現した印象深いシーンもこの「文字のアニメ化」という意識が生んだものなのでしょうか?

でもどこまでが武内さん・新房さんでどこからがテロップワークの尾石達也演出なのかが分からないんだよな…


あまりシャフトや化物語の良さについて書きすぎると文字数が大変なことになりそうなのでこのくらいにしておきたいところですが、最後に最高のカットについて少しだけ…

上記発言と同じインタビューで新房昭之監督は「下手にPANして画面のクオリティが下がるから止めて画面のクオリティを保った方が良い」と話しており、私はこれがシャフトの真髄だと考えております。

アフリカンアメリカンの方々の苦しい労働環境がブルースを産んだように、常に環境に寄り添う形で発展するのが芸術様式。
シャフトというスケ管ガバガバの苦しい環境が産んだ「節約」的な思想を、芸術にまで押し上げたのが尾石・大沼などの天才演出家たち。


そしてまさにこのカットはアニメ・実写・文字・色づかいともにシャフトの美意識を象徴するような普遍的美しさに溢れています。10年以上経った今でも、その美意識はオタクの心を打つものです。

あと、色々調べていくと放送当時は「シャフトやりすぎ!見てて疲れるよ!」的な声も多かったらしく、めちゃくちゃ驚きました。

まぁ確かに1・2話はやり過ぎなところもあるか…当たり前ですけど、この尖り方で万人ウケする訳ないですからね。

『まどか☆マギカ』とかも日常パートの尖りを抑えてイヌカレーの仕事に集約させることであれだけのヒット作になったとも言える訳だし…


3月『ひだまりスケッチ』

物語シリーズをかなりのペースで見ていったり、『ふたりはプリキュア』『Yes!プリキュア5』『Yes!プリキュア5GoGo!』を見たりと休暇中なのでやりたい放題。

特に夢中になったのがこの『ひだまりスケッチ』でした。大沼心もその手腕をブンブン振り回してた頃のシャフト作品で、やはり前衛的な演出は健在!

背景やちょっとしたモノが実写素材で処理されていたり、『×365』の1話が絵コンテ尾石で特に傑作だったりと盛りだくさんの作品です。

「シャフトっぽい演出を身体全体で感じたい!けど化物語みたいにヘビーな雰囲気のストーリーはちょっと…」という方に自信を持ってお勧めできる作品。

特にゆのちゃんが発熱してしまう1期第5話「こころとからだ」は最初から最後までフルスロットルなシャフトが味わえる最高の24分。
ポスターアートのコラージュとか、あんまりにも攻めすぎてないか!?
これがきららアニメの先駆者だと言うんだから、『ぼっち・ざ・ろっく!』の攻めっぷりも頷けるというものですね。


4月『邪神ちゃんドロップキック』

この頃は大学が始まったりでゴタゴタしていたので、気軽に見れる作品を中心に見ていた様子。(割と年がら年中そうだろ!と言われるとぐうの音もでないのだけれど)

三度の飯より萌えとギャグが好きな自分にとって、ぶっ飛んだギャグと可愛いキャラクターが画面・現代の倫理観狭しと暴れ回る本作は理想のひとつなのかもしれない…とマジで思います。

ゆりねちゃんがメルパンの大森日雅さんなのはめちゃくちゃビビった!パンパカパンな萌えvoiceだけじゃなく、低音演技もいけるんだ…凄すぎる

ディープな神保町あるあるからオリンピックの風刺までなんでもござれな邪神ちゃん。
それでいてメデューサとハミングする歌はちゃんと讃美歌106番だったりして、そういう気遣い力と教養のある魔貴族っぷりが泣かせます。

あとこれは神保町の『Bondy』に聖地巡礼した時の写真。なんでエルヴィスなんだろ…?


5月『ハクメイとミコチ』

1・2月以外のんびり系のアニメが来てる時点で分かってきたでしょうが、私はこういう軟派なオタクなんです。進撃の巨人とかいまだに貯めちゃってるんだから!

『ハクメイとミコチ』、note仲間の牧ナタに教えてもらって見始めたのですがこれがビックリするくらい面白い。なんで埋もれてしまってるんだろうか?

「こびと」であるハクメイとミコチの二人が、ゆったりスローライフしたりちょっぴり冒険したり…という日常ファンタジーなのですが、良さを語ると止まらない。

『彼方のアストラ』『地縛少年花子くん』で面白い演出と安定したクオリティでオタクを喜ばせてくれた安藤雅臣監督の作品というのもあって期待はしてたんですが、やはりクオリティが格段に高い!

シリーズ構成には天が与えた文筆の才能を持つ吉田玲子大先生を据え、美術統括に『スーパーカブ』でも素晴らしい仕事ぶりでオタクに感動をくれた「草薙」が。

「東洋風メイドインアビス」とでも形容したくなるような圧倒的な世界観、脇を固める悠木碧さんの最高の演技!
コンジュあまりにもキャラとして良すぎますからね、悠木碧史上かなり最高に近い当たり役だと思います。(競合は立花響・びわ辺り)

個人的には美容師ジャダさんが新谷真弓さんだったのがマジで最高ッッ!!!!
あの軽薄ながらどこかほっとけない愛嬌ある声と演技力…そこまでメインキャラではないのが悲しいんですが、主役2人の華やかな世界観にいぶし銀の魅力も加わったようで嬉しかった。

オタクはみんな、ハルハラ・ハル子さん好きでしょ?言わなくてもわかってるからさ…


あと、この頃リアタイしてたアニメも面白い作品ばかり!特にどのアニメも複数のアピールポイントを持つこのアニメ飽和の時代に「萌え」一本槍で殴り込みをかけた『くノ一ツバキの胸の内』や…


平日朝から女児の脱衣シーンを逃げずにほぼ毎回放送していくおはスタの獣、『おにぱん!』

これらはそれぞれclover works・wit studio 制作アニメとのことで萌えと楽曲の良さ、もはや一周回って尖りすら感じさせる穏便さがある傑作でした。この辺りのアニメは忘れられがちなので、みんな見てくれ!!


6月『犬王』

ここにきて劇場アニメーションがランクイン!天才・湯浅政明監督の新作で、個人的に好きな役者の森山未來さんが出演なさるということで何を置いても見る!とすぐに鑑賞しました。

いや〜………今年音響面No.1アニメかぁ!?

まさに映画館で観るべき映画といった作品。『スタァライト』の古川知宏監督が劇場で見ない劇場版スタァライトのことを「(面白さの)3割」とトークショーで評していましたが、まさにその類の作品です。

音楽担当が大友良英、もう"本気"(ガチ)!
『ボヘミアン・ラプソディ』があれだけヒットしたなら、『犬王』も大ヒット間違いなしやで!と思ったのですが、そこは湯浅監督作品。あまり興行収入には恵まれなかったのかなぁ…

猿楽の一座に生まれた犬王と、盲目の琵琶法師の少年・友魚。この2人の友情が織りなす芸事による革命を描く王道のバディものでありながら、舞台となった室町時代にはあるはずのないロックンロールで人々が熱狂する様はまさに極上のフィクション

犬王の舞や橋上での演奏シーンなど作画的な見どころも随所にありますし、身分が決して高くない友魚の歯並びがちょっと考えられないくらい汚いのもリアルで良い。
キャラデザ・松本大洋があまりにも強く、あの独特のキャラクターを動かしまくるサイエンスSARUのアニメ力も必見。

松本大洋の傑作漫画『花男』は絶対に読んでくださいね。


あとこの月には『探偵オペラミルキィホームズ』にも夢中に。非オタだった頃に年末一挙放送を死ぬほどやってたな〜くらいの印象しか無かったけど、三森すずこさんやっぱめちゃくちゃ萌え!!!ブシロードの演技派としての矜持を見せつけられますね。

確実に当時のアニオタ世代にブッ刺さるパロディを必然性ゼロのまま唐突にぶっ込んできたりするストロングスタイルはレジェンドギャグアニメ『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』すら想起させるフリーダムさ。


作画が神!という類のアニメではないのですが、それでいてこういうキメのカットには必ずオタクを魅了する美しさを仕込んでくれます。こういうギャップに、オタクは弱いのよね〜っ!

などと言いましたが、自分は2期以降視聴できていないんです。配信無くなっちゃって…
ぶっとび系萌えギャグアニメが大好きなので、2期以降もdアニメに戻って来て欲しい。リクエストめっちゃ連投しておきますね。


おわり…に…?

ここで気づきました、半年分書いただけなのに文字数がだいぶヤバいことになってしまっている。

あんまり大量のオタク語りをいっぺんに浴びせられてはキツいものもあるでしょうから、ここで一旦筆を置きたいと思います。正直この時点で既に自分の記事では最長くらい書いてるんですよね、ヤベ〜………

では、おそらく数日後に公開されるであろう「下半期編」も読んでくださるととても嬉しいです。

長い文章ですが、オタクのワクワクが半年分詰まった記事を最後まで読んでくれた貴方さまには感謝感謝…!

追記:アニメ感想・下半期編もあります!よかったらこちらからぜひ。


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