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日記:ぼくはこんなことを考えている 12月編

オタクの副業として大学生をやっているとはいえ、学生は学生。この時期はキツイので、すでに書いた文章を上げる楽なフォーマットを。
藤吉なかのが何かしら思いついた時にたま〜につけているちょびっとした日記(先月分)を、添削・校正・加筆してのっけていきます。


3日
山田尚子監督の新作制作発表があった。

とりあえずやはりSARU制作で、山田尚子×吉田玲子×牛尾憲輔の黄金トリオ。


『CLANNAD AFTERSTORY』での演出、『けいおん!』から『たまこラブストーリー』で萌えと青春のマリアージュをアニメらしく描いた堀口悠紀子とのキャリア最初期……

『聲の形』『リズと青い鳥』で日常芝居を丹念に描く作家性をさらに強め、西谷太志の繊細なキャラクターデザインと共に「山田尚子」というブランドを成立させたキャリア初期……

そしてサイエンスSARUを始めとした様々なスタジオで活動し、一躍国民的アニメ作家となった黄金期………

後世のアニメ評論家にはそんなかんじで評されるのだろうか。とにかく山田尚子監督にはぺったんべったんに売れてほしいし、後世のアニメ史を語る本でもしっかり尺を取って語られてほしい。

宮崎駿や押井守のように後世の作風に影響を与えないとそこまでの存在にはなれないと言われるが、cloverの『着せ恋』『ぼざろ』を手がけた梅原Pもムック本で山田尚子作品への憧れを語っていたように、すでに多くの追随者を産んでいる監督だと思う。もう20年も経てばさらにそうなるんじゃないかな

女性に年齢の話は失礼かもしれないけれど、山田監督はまだ38歳…というのが末恐ろしい。個人的には監督という仕事は、30代後半から40代くらいに作る作品が1番良いような気がしている(キューブリックや黒澤明など)ので、これからもっと恐ろしい作品が顕現するのではないかと不安になる程。
将来どんな形であれ、いつか一緒に仕事がしたい人間ランキングのNo.1。



4日
超絶話題作『RRR』を見た。『スタァライト』や『THE FIRST SLAMDUNK』など映画館でしか味わえない迫力を与える「体験型映画」が最近トレンドになりやすいと感じるけど、まさにそれ。

音響もシナリオもとにかく最高。しっかり重いテーマがありながら、見終わった瞬間は超爽やか!って点は『七人の侍』にも通じるところ。その爽やかさがず〜っとなのが『RRR』で、後々考え込んじゃうのが『七人の侍』だな。

個人的に1番好きなシーンは、火矢を射ったところにちょうどよくTNTが死ぬほど詰まってるお城ですかね。あそこだけ完全にコロコロコミックのノリだったよ


7日
バイト先で同僚に「そのハイネックいいですね!めっちゃ似合う〜」と言って頂いたんだけど、あんまり唐突だったもんで「あっ…w さっす…w」としか言えない。逆になんて返すのが正解なのか…

「でしょ〜!!これ○○で買ったやつでして、お安くて!なんと○○円〜っ!」ってのは通販番組のノリみたいになっちゃうし、あんまり過剰に謙遜すると会話が意図を超えて長引きそう。
何よりすれ違いざまにする会話のフック程度の話題なんだから、謙遜合戦になるのはお相手に迷惑!さらに謙遜合戦になってしまえば相手の服を褒める必要があるわけで。相手の服褒めるのは自分に服の知識なさすぎて無理だし、割と詰んでる気もする。

人間は常に日常に、このような解決不可能な問題を抱えながら生きているんだなぁ…と逃げの諦観。コミュニケーション自体は苦手ではないはずなんだけど…『ケンガンオメガ』のガオランvsメデルのジャブの差し合いみたいな、相手の状態を伺う為の会話ってテンパってしまう。


9日
空き教室で昼ごはんを食べながら『しあわせアフロ田中』を再読していると、プロジェクターを持ったりプリント持ったりしてる講師らしき女性がわらわらとやってくる。
どうやら人権週間的なイベントで、短い啓蒙の講義的なものをしてくれるようで。

「みんなちがって、みんないい」と金子みすゞの詩を引用した上で、「女性の個性を尊重する社会形成を目指そう・気軽な性行為から身を守ろう!」という内容の講義は30分くらいで終わった。『しあわせアフロ田中』読みながら聴く話の温度感じゃあなかったな…

手っ取り早く彼女作って行為をしたい!!と最悪な動機で毛根に鞭打って髪染める大沢にキレる田中を見つめる視覚と、女性の人権を訴える聴覚の情報があまりに乖離していて逆に面白い。

でもこの回、かなり考えさせられるんだよな


詩は苦手な癖に「詩とは言葉の発露であれ」という信条を持っているせいで、かねこみすゞの詩が持つキャッチーさを受け入れることができないんだよな、どうでもいいけど。
なんかこう、書店で「人生を変える革命家の名言集」とかを買ってそうなその辺のご年配が好きそう……これも偏見すぎるか?


女性の権利や個性を尊重することには1000%同意だし、もちろん不当な扱いを受ける女性や合意なしの性行為に苦しむ方がいたらそれは悲しいことだと思っている。

それを前提として、「個性の尊重」と「安易な性行為の回避」って普通に矛盾しないだろうか。若い女性の中にも性行為をめちゃくちゃ楽しんで、一種のエンタメとして気軽にガンガンやりまくってる人も一定数いるだろう。
「個性を守る=安易に性行為させない」という図式はぜんぜん成立してないどころか、そういった行為を楽しんでいる人の個性を否定する流れを助長するという結果を招く。

性行為をエンタメとして刹那的に楽しんでいる人たちに対しては倫理的に「こら!」と怒りの指摘が入るのかもしれないけど、私としては少なくとも本人が幸せを感じているならそれは倫理的に推奨される他の何よりも素晴らしいことな気がする。
肉体の快感を求めるって点では流行りのサウナみたいなもんと言えなくも……ないし。
とりあえず色々モヤモヤが残る講演だった。『しあわせアフロ田中』は何周しても面白い。


15日
め〜ちゃくちゃ前、5年とか前に「100分de名著」の中原中也特集があった。それを何故か今日思い出した。
評論家枠は太宰治の娘というのがあまりにアツすぎて期待していたんだけど、興醒めの出来だったことを覚えている。

その太宰の娘が、いかにも冴えない解釈や「良いですね〜」くらいのことしか言わない。
テンポの悪い喋り方もその退屈さに拍車をかけていて、そこらへんの中也好きなおばさんを縁側から連れてきたのかと思うくらいの酷さ。
作品の朗読は森山未來さんで最高なのに、スタジオでのトークパートがあまりにも…な出来。そんな時に現れたのが歌人の穂村弘さんだ。

ジョジョ好きなのも好印象でした

太宰の娘の醜態を見かねたスタッフさんが呼んだのか?は不明だが、番組後半(おそらくこの番組は2本録りなので2度目の収録機会にあたる回)の3・4回目は穂村さんが評論家枠に加わった。

それがとにかく素晴らしかった。知的で物腰柔らかく、とにかく心を打つ言葉を選ぶのが上手い方という印象。佇まいが古くからの知人に似ていて、穂村さんは本当にモテるだろうな〜としみじみ感じたのを覚えている。この体験を通じてその知人に「モテそう」という新たな印象が芽生えたりして、意外と自分にとって大きな事件だった。


16日
今日はエッセイ爆読(ばくどく)の日にすると決めていた。noteを今月あたりから書き始めて、改めて自分がエッセイ好きすぎる人間ということに気づいたからというのもあるし、アニメばかり見て音楽ばかり聴く日が続いていたから少し気分を変えようという気まぐれでもある。

つい先日思い出した穂村弘さんの素敵さが頭から離れず件の「100分de名著」見返したりしていたので(やはり太宰の娘は酷い)、穂村弘さんの『もしもし、運命の人ですか』をまず読んだ。

今まで出会っていなかったのが嘘のように身体にするすると流れ込んでくるタイプのエッセイ。恋愛を欲する男らしさと、男らしくなれない自分を卑下する女々しさ、でもそんな自分がこの世で1番好きなんだという巨大なエゴのぶつかり合い。

この近代人らしい三すくみが面白い。こういう言語化しづらいものをひょひょいと言葉にしてしまう軽業師みたいなエッセイを読まされると、なんとも嬉しい。

やっぱり穂村弘さんはめちゃくちゃおモテになるんだろうと思う。だって同性の自分から見ても魅力的な人間すぎるし、自分の魅力を分かった上で全ての行動を選んでいる感じがある。
庵野秀明のドキュメンタリーでモヨコ夫人が「自分のこと可愛いと思ってる」と庵野のことを評していて衝撃だったけど、それに近い。

でも共感の一方で、女性を根源的に欲する感覚みたいなものが穂村さんにはあるんだと思うと少し水を開けられた気持ちになる。
そうか、恋愛とかする感じの人なんだな〜……という勝手なガッカリ感。恋愛とかしない人であってほしいところもあった。


『君がいない夜のごはん』これも最高。
穂村さんの軽妙でユーモアに溢れつつ、日常の四隅をくすぐるような文章の魅力が遺憾なく発揮されている名エッセイ。穂村さん、菓子パン食べまくってることを殊更に強調したりするところ…あざといですよ!


19日
昨日はM1があった。男性ブランコの「音符はこび」ネタが特に出色の出来で、以前から応援していた真空ジェシカは去年よりは少しパワーダウンといった感じ。

ガクや川北っていかにもネットのよくあるノリを嫌悪していそうなお笑い強者なのに、ネットで使い古されたH×Hミーム(「俺でなきゃ見逃しちゃうね」)をネタに入れてしまったのは何故なんだろう?
もちろんネタ全体は最高の出来なんだけど、創意工夫で積み上がってきたネタの最中に既存のミームが現れると、急に冷や水を浴びせられてしまった感じも少しあったかもしれない。

オリジナリティあふれるオモロ超人たちの珠玉のネタがぶつかり合うM1の舞台で、私を含めたネットの「面白くなれない」人たちが節操なく消費しがちな擦れ切れたH×Hのミームはひどく空虚に聴こえた。そりゃ悪手じゃろ…


25日
家族でお寿司を食べた。クリスマスだからと言って特別何かあるわけじゃなく昨日もバイトなんだけど、やっぱり心がときめく感じはあるよな〜と。

大滝詠一『クリスマス音頭』なんかはその「訳もわからぬハイテンション」を的確に言語化していて、作詞家・大滝詠一の才能を再確認させられる名曲。「何故か知らねどクリスマス」「唐揚げ食って飲んで騒ごう」なんて、あまりに最高じゃないか!

強いていうなら高いレコード買ったくらいか。Buddha brandのLP、低音がバシバシ効いていて思ったよりも最高だった。でも低音が聴きすぎて謎の低周波が出ているのか?今のところ100%聞いてる途中で眠くなってしまう。Nippsのバースで眠くなる要素とか、ひとつもないはずなんだけどな


27日
アマプラにきてたとのことで、『うぬぼれ刑事』を久しぶりに見た。

ギャグ脚本家・クドカンの作品としては最高傑作なんじゃないだろうか、とにかく手を叩いて笑ってしまうセリフとシチュエーションのオンパレード。男前すぎる長瀬、若すぎる生田斗真が逆にオモロかったりして。

『タイガー&ドラゴン』とか『俺の家の話』とかあの辺りも面白いんだけど、しんみりな要素も割とあるし…『いだてん』は規格外すぎて一旦排除するとして、やっぱり『うぬぼれ刑事』のコメディとしての能力強すぎる。本当に本当に、めちゃくちゃ笑った。


29日
そろそろかな、と来期アニメのPVを全部観る。当たり前だがPVを全部観てみると、アニメイトタイムズがまとめてくれている文字情報だけでは見えてこない様々な要素に気づける。

よしんば本なら文字でのあらすじだけでかなりしっかりとチェックできそうなものなんだけど、アニメは絵と音の芸術。「ムム、これはどうかな?」と思っていたアニメもPV如何ですぐ観たくなってしまうから不思議だ。
最近だと特に『オッドタクシー』なんかは特にPVでかなり印象が変わった作品のひとつ。ありゃPVから傑作の匂いがしてた稀有なアニメかも。

前期もまず『どぅー・いっと・ゆあせるふ!』の作画の凄まじさにはPVで気付かされたところが大きいから、PV観るのは大事!


31日
1月は忙しくなりそうなので、noteの記事を少しストックしておいた。毎週土曜or日曜に更新したいという目標はありつつも、おためごかしのクオリティ低い記事をあげることはしたくないという小癪なプライドがあるので頭を捻って頑張る。

年末の締めは、部屋で1人で『けいおん!』「冬の日」を見た。

山田尚子・北之原孝将のセンスと堀口悠紀子の作画が交わって、"いつも"のノリを半分だけ崩すような名作。『CLANNAD』の「もうひとつの世界 智代編」と並んで、00年代京アニにおける単話の完成度では頭ひとつ抜けた圧倒的クオリティ。

いつか徹底的にこだわった記事を書きたいし、人生の中で最も見返しているアニメなんじゃないだろうか。でも逆にこういう思い入れのあるアニメは記事を書きたくない気持ちもある。

dアニメストアにおけるこの話のサムネ、唯ちゃんの「失望した!」シーンをチョイスしてるんだけど、コレすごくセンスの良いサムネ選びだと思う。
本編におけるいつもの放課後ティータイムとは一線を画す雰囲気を察させない為に序盤のコミカルパートをあえて選ぶカモフラージュだとしたら、dアニメの運営は一流だ



…意外としっかり文字数がありました。
テキパキまとめたアニメの論考や感想じゃなく、こうやって自分の思考を垂れ流すのは初めてなんで緊張感がある。

最後まで読んでくれた方、ありがとうございます。もしテキパキまとめた論考の方も読みたいよ〜と思ってくれたらぜひこれを読んでいただけると嬉しい。


大槻ケンヂのエッセイ、面白いからみんな読もうね



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