#22 現代の結婚と婚礼を考える
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中矢 英俊・近藤 剛(編)(2017).現代の結婚と婚礼を考える──学際的アプローチ── ミネルヴァ書房
本書紹介 from ミネルヴァ書房
昨今、社会状況と価値観の急激な変貌によって、伝統的な冠婚葬祭の意味が見失われつつある。本書では結婚をめぐる歴史的な理解と今日的な特質を明らかにし、これからの結婚の理解と婚礼スタイルの多様な可能性を展望する。
[ここがポイント]
◎ ホスピタリティ・ビジネス論、イベント・プロデュース論、デザイン・ビジネス論、マーケティング論など学際的にアプローチ。
◎ 多角的に結婚観の変貌と婚礼のスタイルを浮かびあがらせる。
*目次*
序 章 現代の結婚観と婚礼の多様性(近藤 剛)
1 本書の趣旨
2 本書の概要
第Ⅰ部 歴史にみる結婚と婚礼
第1章 結婚観を考える視座(近藤 剛)
1 結婚の起源
2 混乱する現代の結婚観
3 日本人の結婚観の移り変わり
4 結婚という思想──昭和の保守論壇から
5 結婚観で問われていること
第2章 結婚という神秘(近藤 剛)
1 アリストファネスの神話
2 サクラメントとしての結婚
3 救済論としての結婚
4 結婚における原初的なるもの
5 結婚の本質
第3章 古事記における結婚の風景(白砂伸夫)
1 結婚と歴史
2 古事記における結婚の儀式
3 国生み神話における結婚
4 天の御柱
5 柱を回ることの意味
第4章 源氏物語における結婚の風景(白砂伸夫)
1 源氏物語とは
2 平安時代の結婚
3 源氏物語における結婚
4 三日夜の餅
第Ⅱ部 調査による結婚とブライダル
第5章 若者のブライダル観はどのように形成されるのか(辻 幸恵)
1 ブライダル観と経営資源との関係について
2 「ハレ」の場に関する「ヒト」と「モノ」との関係について
3 フォーマルシーンに対する「カネ」と「情報」について
4 女子大学生たちに対するフォーマルシーンにおける価格戦略
5 女子大学生たちに対するフォーマルシーンにおける情報戦略
6 今後の課題
第6章 結婚と結婚式に対する若者の意識とニーズとは何か(辻 幸恵)
1 若者の結婚に対する意識とその背景について
2 女子大学生たちの結婚観について
3 女子大学生たちのイメージする結婚式について
4 女子大学生たちと女性就労者たちとの結婚への意識比較
5 結婚式に対する女性のニーズとブライダル戦略との関係について
6 今後の課題
第7章 ブライダル市場の現状(中矢英俊)
1 未婚者の意識
2 多岐にわたるブライダル業界
3 セレモニー形態の多様化
4 業界にとっての課題
第8章 ブライダル業界における課題解決と顧客満足度向上(中矢英俊)
1 業界慣習によるビジネスモデルの課題の改善
2 消費者視点による満足度向上
3 ブライダルにおける地域マーケティングの重要性
4 変化に向けた将来展望
第Ⅲ部 観光化する結婚とブライダル
第9章 龍馬ハネムーンロードと観光地づくり(桑田政美)
1 日本最初の新婚旅行──坂本龍馬とおりょう
2 昭和の新婚旅行のメッカ・宮崎
3 1970年代における終生結婚観の変容と宮崎ブームの終焉
4 地方創生と南九州新婚旅行ゴールデンルート復活への課題
第10章 観光化された結婚の風習(桑田政美)
1 日本の珍しい結婚の風習
2 結婚プロセスの商業化
3 結婚の風習の観光化事例
4 結婚の風習を利用した新たなツーリズム
あとがき(中矢英俊)
本書感想
学際的アプローチって何なのでしょう?
あるテーマに対して違う視点・手法で切り込むことでしょうか?違う視点・手法で切り込みながらもそれらを統合してあるテーマを立体的に浮かび上がらせることでしょうか?それともまた何か別のことでしょうか?
哲学,環境共生学,マーケティング論,ホスピタリティ・マネジメント,経営学の先生方がそれぞれの視点から結婚・婚礼をテーマに興味のある事柄を論じているのが本書です。
「現代の結婚と婚礼を考える」という主題から,多様化した現在の結婚と婚礼のかたちを改めて問い直しているのかなと思いました(後から知りましたが,神戸国際大学経済文化研究所叢書のほとんどは「〜を考える」というタイトル)。予想は外れて,懐古主義的な発想,風習・風俗の記述(もちろん記述は重要です),(経済文化研究所のプロジェクトだからかもしれないけれど)マーケティング/ビジネス形態への提案といった内容のように感じました。すなわち,過去あるいは現在の結婚・婚礼の再調査+現代の結婚・婚礼のかたちに基づくマーケティング的提案が行われており,結婚あるいは婚礼の「問い直し」は特になかった印象を受けました。唯一,第1-2章が「結婚の本質とは何か」を問い直しているように思いました。
正直,第5-6章は「ありえない」と思うほどの内容でした。第5章はタイトルと章内容に齟齬があるし,両章ともただの情報の羅列(調査報告)で,執筆時間がなかったのかな?と思うほどでした。第3-4章も「現代の結婚と婚礼を考える」上で何が伝えたいのかをうまく読み取ることができませんでした(古事記と源氏物語における結婚の記述風景を長々と紹介・解説されただけという感想)。第7-10章は「結婚産業」をまとめて読める書籍を他に知らない私にとっては勉強になりました。
ページ数から見る著者の力点
本書は序章を含めると11章から構成されています。各章のページ数は以下の通りでした。
第4章31p→第3章28→第5章26pの順でページ数が多かったです。第3-4章は古文の原文が載っていたり,その情報は必要なのか?という記述があったりします。第5章は調査報告でした。以上の理由からページ数が多くなったのかなと思いました。
本書を読み通すのは少しつらかったのですが,その理由の一端が垣間見えた気がしました。
思考のための備忘録
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